みなさんこんにちは!ふたご群にウィルタネン彗星と大盛り上がりの天文界隈ですが、編集部も2018年12月14/15日の晩に、この両狙いで山のような機材を抱えて「大遠征」に行ってきました!いろいろたくさん撮ったので前編・後編の2回にわけて(*)撮影記をお送りします!
撮影のねらい
ウィルタネン彗星46P
日本各地で祭り状態のウィルタネン彗星。今回の一番の目標はこれ。この日は12日の近日点通過と16日の地球最接近の間、しかもすばるとヒアデス星団と接近し、一晩中見ることができます。このチャンスを逃す手はありません。 今回は中望遠で分子雲の中の彗星を、FSQ106EDと400mmF2.8で短めの露出で延々撮ってタイムラプスに。そして標準・広角レンズで沈み際の星景を狙います。ただし月没は46P南中の後。お天気・月明かりの実質的な影響などの要素を様々加味して、最終的には現場判断です。
ふたご座流星群
↑これは2017年に撮影したもの。今回は肝心の時間帯に撮影できなかったためあまり冴えず、こっちの動画の方が見応えがあります^^;;;
こちらはライフワーク化しつつある、動画での流星撮影。緑の短痕を引いて流れる流星は神秘的で美しいものです。今年も輻射点付近を、α7Sと中望遠105mmF1.4Artで、ひたすら動画で撮影する計画。これまでは固定撮影でしたが、今回は赤道儀SWAT310に搭載。
ナローバンドで南の星雲
ホームグラウンドの小石原では、南側に林があって低空を狙うことができません。後にも書きますが、今回はお天気の関係で晴れる可能性の高い「熊本県H公園」を撮影地に選びました。この場所は南側の視界が地平線まで開けています。折角なので、夜明け前の数時間はナローバンドで「ガム星雲」を狙ってみようと考えました。 流星群と彗星の状況、電源事情によっては作戦変更の可能性もありますが、一応その準備をして臨みました。
撮影記
撮影地の選択
今回の撮影行は「13日から16日の間の晴れた日」と考えていました。しかし、このとき九州地方の天気は予報が後にずれる傾向で、13/14は今一つっぽく見送り(実は晴れたらしい^^;;)。14/15もいまひとつ微妙な状況だったのですが、上の図のように南の方は晴れそうとの予報。そこで今回はホームグランドの小石原よりも遠出して、くじゅう山のふもとにある「H公園」に出撃することにしました。
結果的にこの選択は大成功。当夜はくじゅう山から由布岳にかけてずっと雲が立ちこめていたようですが、ちょうど雲の切れ目にあたり、ほとんど一晩好天に恵まれました!ラッキー!!
セットアップ
自宅を16時ごろ出て、都市高速から九州道、大分道から日田で降り、下道を走ってH公園に着いたのはまだ明るい17時過ぎ。天気は快晴です!早速設置にかかります。
機材展開中の風景をリコーのTHETA Sで撮影してタイムラプスにしてみました^^
2018/12/14 H公園 – Spherical Image – RICOH THETA
こちらは360°動画。こんな感じの視界の開けた良い場所です^^この時点では先客は1名。後で話をすると福岡より来られた方でした。朝までの間、何台か車が出入りしましたが、ふたご群極大の夜の週末にしては少ない人出でした。
トラブルその1.赤道儀のケーブルを引きちぎる
しかし・・・設置中に思わぬトラブルが。赤道儀(SXP)の電源ケーブルに足を引っかけてしまい、プラグの根元からちぎれてしまいました・・・SXPのプラグは、ポータブル電源で一番使用されている12V用のジャックとは微妙に形状が違っていて予備を準備していませんでした。しかも赤道儀側に残ったプラグはペンチがないと抜けそうにない・・・ぬかった。
打ちひしがれること数分・・・あきらめました。今夜はSXPと主砲のFSQ106EDは、手動の眼視専用だと・・・(アイピース一式を持ってきていてよかった・・) ポータブル電源を保温するために、釣り用のクーラーボックスに電源を入れていたのですが、クーラーボックス一つに赤道儀2つ。この体制が根本的に間違っていました。次回からは、電源の保温は設置機材毎に考えなければならないようです。これ、宿題。また、予備工具・電池・ケーブル一式をまとめた箱を準備しようと決心しました(*)。
(*)とはいっても・・だんだん散逸してバラバラになっちゃうんですよねえ・・
月明かりの下で
(*)夜半頃にやってきた母娘2人連れの方にも声を掛けて見てもらいました。「今地球に近づいている彗星、見てみます?」「(母)えっ、いいんですか?ぜひぜひ!」「はい、これですよ。ボーッとしていますけど。」「(母)(・・??・・)」「大きいでしょ?」「(母)ああ、このボーッとしているやつですか!」「はいそうです」「(母)・・ボーッとしていますね・・」「はい・・ボーッと光ってるんじゃねえよ!」「(娘)あ、チコちゃんだ!(クスクス)」「(ヤッタ、ウケた!)」
気を取り直して機材設置を完了。半月前の月が明るく空を照らしています。月夜もいいよねえ・・とりあえず月没までは気楽な体制。まずは眼視でウィルタネン彗星を見物。手動導入ですが、わかりやすい位置であっさり導入できました。でかいねえ。。 でも、尾は見えず、ただ「ボーッと」しているだけ^^ まあ「ボーッと」眺める(*)にはちょうどいい気楽さです^^
最強の眼視システム、FSQ106ED(*)。手動導入、粗動のみなので低倍率オンリーです。
(*)しかし今回死角を発見。ドロチューブの繰り出し量の関係で、一部のアイピース・正立ミラーの組み合わせではピントが出ないことが判明・・
当初電源をケチッて月が沈むまでは本格的に撮影をしない予定でしたが、この鏡筒が控えに回ったので、月没前からウィルタネンを撮り続けることに。AP赤道儀と428に6Dを付けて、ひたすらシャッターを切りまくります。
ライブビューのモニターでも大きく見えるウィルタネンですが、月明かりのせいかそもそも淡いせいか、尾は確認できません。でも何となく、連写中に彗星の周りのスジが微妙に違うような違わないような。まあ細かいことは後にして、ひたすら撮るべし、撮るべし。 流星は輻射点がまだ低いせいかほとんど流れてくれないのですが、これもだめもとで動画撮影。
最近絶賛マイブーム中の玉ボケ星景。ぼかしてもウィルタネン彗星がしっかり写ってくれました。玉ボケ星景はソフトフィルターを使用しなくても星の色の違いがよくわかって、特に機材・人物のポートレイトが楽しい^^ もう少し引いて、カッチョイイAP赤道儀の全景を入れたかったのですが。次回は安定性を犠牲にしても三脚は長めに設置して、カメラとのクリアランスを確保しようと思いました^^
早い時間帯の流星の成果はこれ1個^^;;月明かりがあるので露出時間は1コマ8秒。30分でも240コマ。この画像の中から流星を探し出すのは・・・大変でした^^;;;
月没と月焼け
この夜の月没は23時半ごろ。月が西に傾くにつれ、星空の輝きが増してきました。でもちょっと雲が増えてきたかな〜
月没前の全天写真。月焼けで雲が赤く染まってきました。オリオンの左下に流星が一つ。
月が傾くにつれ、赤みを増してきました。これは彗星どころではない?!カメラを月に向けます。改造機なのでまっかっか^^
ノーマル機に換装。月が低空の雲の上に沈んでいきます。ちょっとピンぼけ・・残念^^;;
月はほとんど沈んで地球照のみ。いやー、これはなかなかの良月没でした!
流星祭り
月が沈んだ頃からますます雲が多くなってきました。えーーこのまま曇ってしまったらどうしよう・・・そんな不安の中に明るい流星が。約-1等。円周魚眼はこういうときにいいよね。明るい流星は絶対に逃しません。短いけど^^;;
しかし雲の襲来は幸いにも一時的でした。ほどなくしてすっかり晴れ上がりました。ふたご座がまだ低い時間帯は数えるほどしか流れなかった流星も、夜半を境に「ビシビシ」と流れるようになってきました。
上の画像は15mmの対角魚眼レンズで撮りっぱなしにした画像から、流星だけを切り貼りして1つにしたもの。30分で10個ほど写っています。F4というあまり明るくないレンズですが、数だけは写りました^^;;; 流星撮影は最初は1つ写るだけで嬉しいのですが、暗くて弱々しい流星も多くて、そのうちだんだんまだ見ぬ大物を求めるようになり、暗い流星は「またシミ級かよw」みたいな感じになってきます。今回はマイナス2等越えの大物はほとんどなく、ちょっと残念。まあお気楽な記念写真ということで。。
その一方、肉眼では降るような流星を楽しめました。撮影しながらなのでいつも空を見上げているわけではないのですが、それでも見上げるたびに1個は流れる印象。こんなに流れるのはこの5年では初めてでした。近くで流星をずっと眺めていらした母娘連れの方は「15分で30個流れました!」と仰っていました。1時間120個、これは大出現です。やっぱり流星は肩に力を入れず、のんびりまったり眺めるのが一番!
実は流星の動画がまだ半分もチェックできていません。動画から流星が写ったところだけを編集するのはめっちゃ時間かかるんですよね・・・大物が入ってないことはほぼわかっているので(笑)ぼちぼち処理したら追記していきます。
ウィルタネン彗星の長い尾と分子雲
しかし、貧乏性の編集子は、息つく暇もなく撮影に奔走^^月没の後は、明るい105mmレンズで分子雲とウィルタネン彗星を狙います。
今回の遠征の最大のリザルト。すばる・ヒアデス星団とウィルタネン彗星、分子雲入り!当初はモザイクしてこの上にあるカリフォルニア星雲も入れるつもりでしたが、前日にSNSで長い尾を引いたウィルタネンの姿が上がっていて、彗星1本に作戦変更。
このタイミングでは太陽・地球・彗星がちょうど一直線上にならぶため、彗星の尾は本体のちょうど向こう側になり、尾は見えないのではないかといわれていたのですが、なぜか長い尾が出ていたのです。その理由の解明は専門家の研究を待つしかありませんが、軌道面に扇形に広がった尾を、ちょうど扇子の根元から見るような形になり、細く長い尾が出たのではないか、と言われています。
トラブルその2.α7Sシャッターユニット死亡
ここで大トラブルが。428に「高感度番長」α7Sを装着し、15秒露出で撮影を開始し50コマほど撮ったとき、シャッターから変な音が。いつもなら軽く「カシャッ、カッシャッ」と鳴るのが、「カッシャッ、カッ・・ジー・・」そして沈黙・・・
カメラのモニタには「カメラエラーです。電源を入れ直してください」のメッセージ。電源を入れ直しても、「カッ・・ジー・・」でまたカメラエラー。どうやらシャッターユニットが死亡してしまった模様・・・(*)
(*)帰宅後調べてみると、シャッター膜が断裂していました。現在修理依頼中ですが、どうやら改造機の宿命で修理する場合はセンサーユニットを含めた交換になり、中古品が買えるくらいの金額になりそう・・・激痛です–;;
上の画像は最後の1コマ。15秒露出でもテールが写っています。これは今回EOSでは達成できなかった偉業。30秒以下の露出では右にでるものがないα7S、この後いい仕事をするはずだったのに・・・無念です。
ひたすら撮影、ウィルタネン
ショックから復帰するのにまたまた時間を要しましたが^^;; 気を取り直して、カメラを5D3に換装して撮影継続。ひたすらウィルタネンです。
5D3でも、総露出1分にすればなんとなくテールがわかりますね。10時の方向です。これは流星が飛び込んだカットです(*)。
(*) 加算平均したのでわかりにくいですが、流星の北東側に流星痕もかすかに写っていました。
こちらは15秒310コマを彗星基準で加算平均し、思い切り強調してみました。10時方向のテールは明瞭になり、4字方向にアンチテールも見えています。軌道面をほんの少し下から見上げているのでしょうか。アンチテールが一直線よりも少し右下に曲がっているようにも見えます。
カノープスと南の星雲
1時を回り、南の空低くにカノープスが見えてきました。九州では視界さえ開けていればカノープスは楽勝。条件が良ければ十分一等星の風格があります。透明度もよく、南に低い青雲を狙うには絶好のチャンス。6DにAstro Duoナローバンドフィルターを装着して、まずはおおいぬ座に向けます。
かなりマニアックな対象なのですが、おおいぬ座のミルクポット星雲から、とも座の NGC2467にかけて。NGC2467は今回初めて撮りましたが、OIIIの成分がかなり多いようで、眼視でもよく見える星雲だそうです。
この晩の最後の対象、ガム星雲。非常に広く大きく広がった超新星残骸で、この画像はそのほんの一部。OIII成分が強く、はくちょう座の網状星雲のようなこまかなフィラメント構造が確認できます。九州とはいえ、南に低くてなかなか難物です。右下ほどコントラストが低く眠くなってしまっているのは、低空の大気の吸収のため。これは南半球でいつか存分に撮ってみたい対象ですね。
ガム星雲を撮影中。実はこのとき、すでに写野右下は地平線にかかっていたのでした・・・最後の6コマ24分間分は没orz.
赤道儀はSWAT310。この赤道儀に「シンプルフォークユニット」を装着したシステムは中望遠星野写真最強。全天全く死角がなく、子午線反転も不要。目盛環だけでモザイク撮影も容易、電池も食わずそこそこコンパクト。追尾誤差にはまったく不安なしです。
ガム星雲の最後の1コマ。4分露出でこの写りはSTC AstroDuoフィルターの威力。それにしても飛行機が多い・・・
まぶしい金星
5時を過ぎ、機材を順次撤収しながら、三脚だけで記念撮影。できれば夜明けの薄明の赤色を見てから撤収したいのですが、いつもそこまで体力がもたず、逃げるように帰還してしまいます・・
東の空に異常に明るい星が昇ってきました。まあ金星でしかあり得ないのですが、びっくりするほどの明るさ。光害クラスです^^;; 金星の周りにはこれまた光害くらいに明るい黄道光が。スピカにからす座、アークツールス、星空ははや春の気配です。
北の空には北斗七星が高く。夕方にはこの位置にカシオペヤがあったのに、一晩で半回転しました。こんな形で地球が回っているのを実感するのも、夜通し星を眺める醍醐味ですね^^
この後、6時前に現地を出て福岡に帰還。途中のコンビニで見上げた高い高い金星がきれいでした。次回は帰り道でも記念写真を撮れる準備をしておこうと思いました^^
まとめ
いかがでしたか?
この連載を始めた最大の理由は、天文趣味・天体写真という「楽しい楽しい遊びのプロセス」を、もっと多くの人に知ってもらいたいということでした。遠征の計画、遠征までの往来の道のり、撮影の中で起きる様々なできごとや仲間との出会い、帰宅してから待っている苦しくも楽しい画像処理。そんなひとつひとつを、リアルに伝えられるようにこれからもがんばります!
今回、α7Sが生きていたら、撮影地で出会った人たちをもっと撮れたのにと思うと残念至極。天体そのものの撮影だけに専念するとカメラが足りなくなるんですよね・・「いつでもどこでも、チャンスがあれば撮る!」体制をもっと常時とっておきたいと痛感しました!やはりこのへんで改造機をもう一台追加して、α7Sは撮影スナップに専念できる体制をとりたいなあと思う今日この頃です。
それでは、皆様のご武運をお祈り申し上げます。また次回お会いしましょう!
機材協力:スポンサー様よりご協力いただいた以下の機材を使用しています。
https://reflexions.jp/tenref/orig/2018/12/20/7365/https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/12/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-7-1024x538.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/12/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-7-150x150.jpg編集部実践・天体写真撮影記天文現象みなさんこんにちは!ふたご群にウィルタネン彗星と大盛り上がりの天文界隈ですが、編集部も2018年12月14/15日の晩に、この両狙いで山のような機材を抱えて「大遠征」に行ってきました!いろいろたくさん撮ったので前編・後編の2回にわけて(*)撮影記をお送りします!
撮影のねらい
ウィルタネン彗星46P
日本各地で祭り状態のウィルタネン彗星。今回の一番の目標はこれ。この日は12日の近日点通過と16日の地球最接近の間、しかもすばるとヒアデス星団と接近し、一晩中見ることができます。このチャンスを逃す手はありません。 今回は中望遠で分子雲の中の彗星を、FSQ106EDと400mmF2.8で短めの露出で延々撮ってタイムラプスに。そして標準・広角レンズで沈み際の星景を狙います。ただし月没は46P南中の後。お天気・月明かりの実質的な影響などの要素を様々加味して、最終的には現場判断です。
ふたご座流星群
https://youtu.be/lb6y9j8fnaA
↑これは2017年に撮影したもの。今回は肝心の時間帯に撮影できなかったためあまり冴えず、こっちの動画の方が見応えがあります^^;;;
こちらはライフワーク化しつつある、動画での流星撮影。緑の短痕を引いて流れる流星は神秘的で美しいものです。今年も輻射点付近を、α7Sと中望遠105mmF1.4Artで、ひたすら動画で撮影する計画。これまでは固定撮影でしたが、今回は赤道儀SWAT310に搭載。
ナローバンドで南の星雲
ホームグラウンドの小石原では、南側に林があって低空を狙うことができません。後にも書きますが、今回はお天気の関係で晴れる可能性の高い「熊本県H公園」を撮影地に選びました。この場所は南側の視界が地平線まで開けています。折角なので、夜明け前の数時間はナローバンドで「ガム星雲」を狙ってみようと考えました。 流星群と彗星の状況、電源事情によっては作戦変更の可能性もありますが、一応その準備をして臨みました。
撮影記
撮影地の選択
今回の撮影行は「13日から16日の間の晴れた日」と考えていました。しかし、このとき九州地方の天気は予報が後にずれる傾向で、13/14は今一つっぽく見送り(実は晴れたらしい^^;;)。14/15もいまひとつ微妙な状況だったのですが、上の図のように南の方は晴れそうとの予報。そこで今回はホームグランドの小石原よりも遠出して、くじゅう山のふもとにある「H公園」に出撃することにしました。
結果的にこの選択は大成功。当夜はくじゅう山から由布岳にかけてずっと雲が立ちこめていたようですが、ちょうど雲の切れ目にあたり、ほとんど一晩好天に恵まれました!ラッキー!!
セットアップ
自宅を16時ごろ出て、都市高速から九州道、大分道から日田で降り、下道を走ってH公園に着いたのはまだ明るい17時過ぎ。天気は快晴です!早速設置にかかります。
機材展開中の風景をリコーのTHETA Sで撮影してタイムラプスにしてみました^^
2018/12/14 H公園 - Spherical Image - RICOH THETA
こちらは360°動画。こんな感じの視界の開けた良い場所です^^この時点では先客は1名。後で話をすると福岡より来られた方でした。朝までの間、何台か車が出入りしましたが、ふたご群極大の夜の週末にしては少ない人出でした。
トラブルその1.赤道儀のケーブルを引きちぎる
しかし・・・設置中に思わぬトラブルが。赤道儀(SXP)の電源ケーブルに足を引っかけてしまい、プラグの根元からちぎれてしまいました・・・SXPのプラグは、ポータブル電源で一番使用されている12V用のジャックとは微妙に形状が違っていて予備を準備していませんでした。しかも赤道儀側に残ったプラグはペンチがないと抜けそうにない・・・ぬかった。
打ちひしがれること数分・・・あきらめました。今夜はSXPと主砲のFSQ106EDは、手動の眼視専用だと・・・(アイピース一式を持ってきていてよかった・・) ポータブル電源を保温するために、釣り用のクーラーボックスに電源を入れていたのですが、クーラーボックス一つに赤道儀2つ。この体制が根本的に間違っていました。次回からは、電源の保温は設置機材毎に考えなければならないようです。これ、宿題。また、予備工具・電池・ケーブル一式をまとめた箱を準備しようと決心しました(*)。
(*)とはいっても・・だんだん散逸してバラバラになっちゃうんですよねえ・・
月明かりの下で
(*)夜半頃にやってきた母娘2人連れの方にも声を掛けて見てもらいました。「今地球に近づいている彗星、見てみます?」「(母)えっ、いいんですか?ぜひぜひ!」「はい、これですよ。ボーッとしていますけど。」「(母)(・・??・・)」「大きいでしょ?」「(母)ああ、このボーッとしているやつですか!」「はいそうです」「(母)・・ボーッとしていますね・・」「はい・・ボーッと光ってるんじゃねえよ!」「(娘)あ、チコちゃんだ!(クスクス)」「(ヤッタ、ウケた!)」
気を取り直して機材設置を完了。半月前の月が明るく空を照らしています。月夜もいいよねえ・・とりあえず月没までは気楽な体制。まずは眼視でウィルタネン彗星を見物。手動導入ですが、わかりやすい位置であっさり導入できました。でかいねえ。。 でも、尾は見えず、ただ「ボーッと」しているだけ^^ まあ「ボーッと」眺める(*)にはちょうどいい気楽さです^^
最強の眼視システム、FSQ106ED(*)。手動導入、粗動のみなので低倍率オンリーです。
(*)しかし今回死角を発見。ドロチューブの繰り出し量の関係で、一部のアイピース・正立ミラーの組み合わせではピントが出ないことが判明・・
当初電源をケチッて月が沈むまでは本格的に撮影をしない予定でしたが、この鏡筒が控えに回ったので、月没前からウィルタネンを撮り続けることに。AP赤道儀と428に6Dを付けて、ひたすらシャッターを切りまくります。
ライブビューのモニターでも大きく見えるウィルタネンですが、月明かりのせいかそもそも淡いせいか、尾は確認できません。でも何となく、連写中に彗星の周りのスジが微妙に違うような違わないような。まあ細かいことは後にして、ひたすら撮るべし、撮るべし。 流星は輻射点がまだ低いせいかほとんど流れてくれないのですが、これもだめもとで動画撮影。
最近絶賛マイブーム中の玉ボケ星景。ぼかしてもウィルタネン彗星がしっかり写ってくれました。玉ボケ星景はソフトフィルターを使用しなくても星の色の違いがよくわかって、特に機材・人物のポートレイトが楽しい^^ もう少し引いて、カッチョイイAP赤道儀の全景を入れたかったのですが。次回は安定性を犠牲にしても三脚は長めに設置して、カメラとのクリアランスを確保しようと思いました^^
早い時間帯の流星の成果はこれ1個^^;;月明かりがあるので露出時間は1コマ8秒。30分でも240コマ。この画像の中から流星を探し出すのは・・・大変でした^^;;;
月没と月焼け
この夜の月没は23時半ごろ。月が西に傾くにつれ、星空の輝きが増してきました。でもちょっと雲が増えてきたかな〜
月没前の全天写真。月焼けで雲が赤く染まってきました。オリオンの左下に流星が一つ。
月が傾くにつれ、赤みを増してきました。これは彗星どころではない?!カメラを月に向けます。改造機なのでまっかっか^^
ノーマル機に換装。月が低空の雲の上に沈んでいきます。ちょっとピンぼけ・・残念^^;;
月はほとんど沈んで地球照のみ。いやー、これはなかなかの良月没でした!
流星祭り
月が沈んだ頃からますます雲が多くなってきました。えーーこのまま曇ってしまったらどうしよう・・・そんな不安の中に明るい流星が。約-1等。円周魚眼はこういうときにいいよね。明るい流星は絶対に逃しません。短いけど^^;;
しかし雲の襲来は幸いにも一時的でした。ほどなくしてすっかり晴れ上がりました。ふたご座がまだ低い時間帯は数えるほどしか流れなかった流星も、夜半を境に「ビシビシ」と流れるようになってきました。
上の画像は15mmの対角魚眼レンズで撮りっぱなしにした画像から、流星だけを切り貼りして1つにしたもの。30分で10個ほど写っています。F4というあまり明るくないレンズですが、数だけは写りました^^;;; 流星撮影は最初は1つ写るだけで嬉しいのですが、暗くて弱々しい流星も多くて、そのうちだんだんまだ見ぬ大物を求めるようになり、暗い流星は「またシミ級かよw」みたいな感じになってきます。今回はマイナス2等越えの大物はほとんどなく、ちょっと残念。まあお気楽な記念写真ということで。。
その一方、肉眼では降るような流星を楽しめました。撮影しながらなのでいつも空を見上げているわけではないのですが、それでも見上げるたびに1個は流れる印象。こんなに流れるのはこの5年では初めてでした。近くで流星をずっと眺めていらした母娘連れの方は「15分で30個流れました!」と仰っていました。1時間120個、これは大出現です。やっぱり流星は肩に力を入れず、のんびりまったり眺めるのが一番!
実は流星の動画がまだ半分もチェックできていません。動画から流星が写ったところだけを編集するのはめっちゃ時間かかるんですよね・・・大物が入ってないことはほぼわかっているので(笑)ぼちぼち処理したら追記していきます。
ウィルタネン彗星の長い尾と分子雲
しかし、貧乏性の編集子は、息つく暇もなく撮影に奔走^^月没の後は、明るい105mmレンズで分子雲とウィルタネン彗星を狙います。
今回の遠征の最大のリザルト。すばる・ヒアデス星団とウィルタネン彗星、分子雲入り!当初はモザイクしてこの上にあるカリフォルニア星雲も入れるつもりでしたが、前日にSNSで長い尾を引いたウィルタネンの姿が上がっていて、彗星1本に作戦変更。
このタイミングでは太陽・地球・彗星がちょうど一直線上にならぶため、彗星の尾は本体のちょうど向こう側になり、尾は見えないのではないかといわれていたのですが、なぜか長い尾が出ていたのです。その理由の解明は専門家の研究を待つしかありませんが、軌道面に扇形に広がった尾を、ちょうど扇子の根元から見るような形になり、細く長い尾が出たのではないか、と言われています。
トラブルその2.α7Sシャッターユニット死亡
ここで大トラブルが。428に「高感度番長」α7Sを装着し、15秒露出で撮影を開始し50コマほど撮ったとき、シャッターから変な音が。いつもなら軽く「カシャッ、カッシャッ」と鳴るのが、「カッシャッ、カッ・・ジー・・」そして沈黙・・・
カメラのモニタには「カメラエラーです。電源を入れ直してください」のメッセージ。電源を入れ直しても、「カッ・・ジー・・」でまたカメラエラー。どうやらシャッターユニットが死亡してしまった模様・・・(*)
(*)帰宅後調べてみると、シャッター膜が断裂していました。現在修理依頼中ですが、どうやら改造機の宿命で修理する場合はセンサーユニットを含めた交換になり、中古品が買えるくらいの金額になりそう・・・激痛です--;;
上の画像は最後の1コマ。15秒露出でもテールが写っています。これは今回EOSでは達成できなかった偉業。30秒以下の露出では右にでるものがないα7S、この後いい仕事をするはずだったのに・・・無念です。
ひたすら撮影、ウィルタネン
ショックから復帰するのにまたまた時間を要しましたが^^;; 気を取り直して、カメラを5D3に換装して撮影継続。ひたすらウィルタネンです。
5D3でも、総露出1分にすればなんとなくテールがわかりますね。10時の方向です。これは流星が飛び込んだカットです(*)。
(*) 加算平均したのでわかりにくいですが、流星の北東側に流星痕もかすかに写っていました。
こちらは15秒310コマを彗星基準で加算平均し、思い切り強調してみました。10時方向のテールは明瞭になり、4字方向にアンチテールも見えています。軌道面をほんの少し下から見上げているのでしょうか。アンチテールが一直線よりも少し右下に曲がっているようにも見えます。
カノープスと南の星雲
1時を回り、南の空低くにカノープスが見えてきました。九州では視界さえ開けていればカノープスは楽勝。条件が良ければ十分一等星の風格があります。透明度もよく、南に低い青雲を狙うには絶好のチャンス。6DにAstro Duoナローバンドフィルターを装着して、まずはおおいぬ座に向けます。
かなりマニアックな対象なのですが、おおいぬ座のミルクポット星雲から、とも座の NGC2467にかけて。NGC2467は今回初めて撮りましたが、OIIIの成分がかなり多いようで、眼視でもよく見える星雲だそうです。
この晩の最後の対象、ガム星雲。非常に広く大きく広がった超新星残骸で、この画像はそのほんの一部。OIII成分が強く、はくちょう座の網状星雲のようなこまかなフィラメント構造が確認できます。九州とはいえ、南に低くてなかなか難物です。右下ほどコントラストが低く眠くなってしまっているのは、低空の大気の吸収のため。これは南半球でいつか存分に撮ってみたい対象ですね。
ガム星雲を撮影中。実はこのとき、すでに写野右下は地平線にかかっていたのでした・・・最後の6コマ24分間分は没orz.
赤道儀はSWAT310。この赤道儀に「シンプルフォークユニット」を装着したシステムは中望遠星野写真最強。全天全く死角がなく、子午線反転も不要。目盛環だけでモザイク撮影も容易、電池も食わずそこそこコンパクト。追尾誤差にはまったく不安なしです。
ガム星雲の最後の1コマ。4分露出でこの写りはSTC AstroDuoフィルターの威力。それにしても飛行機が多い・・・
まぶしい金星
5時を過ぎ、機材を順次撤収しながら、三脚だけで記念撮影。できれば夜明けの薄明の赤色を見てから撤収したいのですが、いつもそこまで体力がもたず、逃げるように帰還してしまいます・・
東の空に異常に明るい星が昇ってきました。まあ金星でしかあり得ないのですが、びっくりするほどの明るさ。光害クラスです^^;; 金星の周りにはこれまた光害くらいに明るい黄道光が。スピカにからす座、アークツールス、星空ははや春の気配です。
北の空には北斗七星が高く。夕方にはこの位置にカシオペヤがあったのに、一晩で半回転しました。こんな形で地球が回っているのを実感するのも、夜通し星を眺める醍醐味ですね^^
この後、6時前に現地を出て福岡に帰還。途中のコンビニで見上げた高い高い金星がきれいでした。次回は帰り道でも記念写真を撮れる準備をしておこうと思いました^^
まとめ
いかがでしたか?
この連載を始めた最大の理由は、天文趣味・天体写真という「楽しい楽しい遊びのプロセス」を、もっと多くの人に知ってもらいたいということでした。遠征の計画、遠征までの往来の道のり、撮影の中で起きる様々なできごとや仲間との出会い、帰宅してから待っている苦しくも楽しい画像処理。そんなひとつひとつを、リアルに伝えられるようにこれからもがんばります!
今回、α7Sが生きていたら、撮影地で出会った人たちをもっと撮れたのにと思うと残念至極。天体そのものの撮影だけに専念するとカメラが足りなくなるんですよね・・「いつでもどこでも、チャンスがあれば撮る!」体制をもっと常時とっておきたいと痛感しました!やはりこのへんで改造機をもう一台追加して、α7Sは撮影スナップに専念できる体制をとりたいなあと思う今日この頃です。
それでは、皆様のご武運をお祈り申し上げます。また次回お会いしましょう!
機材協力:スポンサー様よりご協力いただいた以下の機材を使用しています。
(株)ビクセン
星見屋.com
ユニテック(株)
(株)よしみカメラ編集部山口
千宗kojiro7inukai@gmail.comAdministrator天文リフレクションズ編集長です。天リフOriginal
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