新連載です!

天体写真の画像処理。深くてしんどい沼ですよね〜みんな悩んで大きくなったり、心が折れて落ち込んだり^^ 凡人である編集子も日々悩みながら苦しんでいるのですが、その悩みと解決のTIPSを少しでも共有しようという目的で「できるだけシンプルな事例に絞り込んで」「作例と手順を明快に」解説した記事を連載することにしました!

名付けて「画像処理ワンポイント」。毎回テーマはたった一つ!第1回のテーマは「明るさの最小値で星を小さくする」です。

追記)本連載で使用しているPhotoshopは、執筆時点のCreative Cloudの最新バージョンになります。使用している機能は、それ以前のバージョンでは実装されていない可能性があります・・・ご了承くださいm(_ _)m



Before作例

EOS5D3 SIGMA150mmF2.8解放 2min*36 ISO3200 スカイメモRSノータッチガイド 2016.11.1 五ヶ瀬ハイランドスキー場にて

こちらがBefore作例です。編集子が「天リフ」の構想を温め、フルタイムの天文ファンとして日々撮影に観望にいそしんでいた2016年頃の作例。個人ブログにアップしたものです。条件の良い空でよく写っているのですが、今振り返って見てみると微妙に残念なところがあります。

なんといっても「微光星がうるさすぎる」こと。中心部が完全に飽和しているところを見ると、トーンカーブとレベル補正でガシガシ強調したためでしょう。それに合わせて微光星も強調され、径が大きくなってしまったのです。

「星マスク」を使用するなど、強調のプロセスで「こうならないようにする」ことも可能だと思うのですが、単純に安直に、このうるさい微光星を押さえ込む方法が、今回ご紹介する「明るさの最小値」です。

After画像

こちらがAfter画像。元画像にPhotoshop CCのフィルター「明るさの最小値」をかけました。違いはそれだけです。うるさかった微光星が小さく暗くなり、星雲の淡い周辺部がよく見えるようになっただけでなく、星の色がよくわかるようになりました。これはなかなか使えますね!

Before/Afterを並べてみました。「明るさの最小値」を適用すると、星が小さくなり、全体的な背景輝度も下がります(トーンカーブが左側に寄る)。目的によっては、さらに強調をかけることも可能になります。

「明るさの最小値」を使うコツ

パラメータは「真円率」「0.2px」で

「明るさの最小値」は、Photoshop CCの「フィルター/その他」メニューにあります。なんだよ、「その他」って。こんなの教えてくれなきゃ見つけられないよ。その通りです。普通は気がつきませんね。



「明るさの最小値」はいくつかパラメータを設定できるのですが、天体で使用する場合はこれしかありません。「保持」を「真円率」にする。「半径」を最小の0.2pixelにする。それだけです。

少しずつ何度も行う

ただし、この設定の場合、ほんのわずかしか効果がかかりません。何度も繰り返すことで、星が少しづつ小さくなってきます(*)。頃合いをみながら適当なところになるまでやってみましょう。上記の作例では6回かけています。

(*)「半径」を大きくすると効果が大きくなるのですが、最小半径の処理を繰り返すよりも粗く汚くなってしまいます。

元画像から、「明るさの最小値」を上記の設定で1回〜10回までかけた画像をアニメーションにしてみました。これを見ると「明るさの最小値」の正体が直感的にわかります。明るさの最小値とは、明暗のエッジの明るい方を削る処理なのです。

明るさの最小値の副作用

「明るさの最小値」は、いわゆるダメージ系の処理です。何かの効果があることの引き換えに、何かを失います。星が小さくなるのはよいのですが、明るい部分が削られディテールを失います。また、逆に暗点が拡大してしまうのがわかります。元画像に暗点ノイズが多いと「明るさの最小値」によってそれが増幅されて汚くなってしまいます。

さらに、この作例の場合「星の色がよくわかるようになる」理由は、実は小さい色ハロが拡大していたにすぎません。色ハロの大きなレンズの場合は、収拾不可能なほどに収差が強調されてしまう可能性もあります。ダメージ系の処理は常に万能ではありません。慎重に効果を見ながら、控えめに行うのが大事です。

まとめ

ほかにもいろいろ書きたいことはあるのですが、あんまり書くと「ワンポイント」でなくなってしまうので止めておきます^^(*)

(*)ちなみにステライメージの「スターシャープ」は原理的には明るさの最小値のようなものです(違ってたらすいません)。また、PixInsightにも(名前はわかりませんが)同様の機能があるはずです。

「明るさの最小値」は、使い方によっては劇的な効果がありますが、その分副作用も大きく、下手にやると眼も当てられない結果になります。一番ライトな使い方は、仕上がり画像に「明るさの最小値」をサクッと(0.2pxで2回くらい)適用すると、副作用もあまり目立たずワンランク締まった画像になります。「最後に味の素を振る」みたいなものですね!

それでは、皆様のご武運をお祈り申し上げます。次回またお会いしましょう!

  https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/11/before_after_t-1024x538.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/11/before_after_t-150x150.jpg編集部画像処理ワンポイント画像処理新連載です! 天体写真の画像処理。深くてしんどい沼ですよね〜みんな悩んで大きくなったり、心が折れて落ち込んだり^^ 凡人である編集子も日々悩みながら苦しんでいるのですが、その悩みと解決のTIPSを少しでも共有しようという目的で「できるだけシンプルな事例に絞り込んで」「作例と手順を明快に」解説した記事を連載することにしました! 名付けて「画像処理ワンポイント」。毎回テーマはたった一つ!第1回のテーマは「明るさの最小値で星を小さくする」です。 追記)本連載で使用しているPhotoshopは、執筆時点のCreative Cloudの最新バージョンになります。使用している機能は、それ以前のバージョンでは実装されていない可能性があります・・・ご了承くださいm(_ _)m Before作例 こちらがBefore作例です。編集子が「天リフ」の構想を温め、フルタイムの天文ファンとして日々撮影に観望にいそしんでいた2016年頃の作例。個人ブログにアップしたものです。条件の良い空でよく写っているのですが、今振り返って見てみると微妙に残念なところがあります。 なんといっても「微光星がうるさすぎる」こと。中心部が完全に飽和しているところを見ると、トーンカーブとレベル補正でガシガシ強調したためでしょう。それに合わせて微光星も強調され、径が大きくなってしまったのです。 「星マスク」を使用するなど、強調のプロセスで「こうならないようにする」ことも可能だと思うのですが、単純に安直に、このうるさい微光星を押さえ込む方法が、今回ご紹介する「明るさの最小値」です。 After画像 こちらがAfter画像。元画像にPhotoshop CCのフィルター「明るさの最小値」をかけました。違いはそれだけです。うるさかった微光星が小さく暗くなり、星雲の淡い周辺部がよく見えるようになっただけでなく、星の色がよくわかるようになりました。これはなかなか使えますね! Before/Afterを並べてみました。「明るさの最小値」を適用すると、星が小さくなり、全体的な背景輝度も下がります(トーンカーブが左側に寄る)。目的によっては、さらに強調をかけることも可能になります。 「明るさの最小値」を使うコツ パラメータは「真円率」「0.2px」で 「明るさの最小値」は、Photoshop CCの「フィルター/その他」メニューにあります。なんだよ、「その他」って。こんなの教えてくれなきゃ見つけられないよ。その通りです。普通は気がつきませんね。 「明るさの最小値」はいくつかパラメータを設定できるのですが、天体で使用する場合はこれしかありません。「保持」を「真円率」にする。「半径」を最小の0.2pixelにする。それだけです。 少しずつ何度も行う ただし、この設定の場合、ほんのわずかしか効果がかかりません。何度も繰り返すことで、星が少しづつ小さくなってきます(*)。頃合いをみながら適当なところになるまでやってみましょう。上記の作例では6回かけています。 (*)「半径」を大きくすると効果が大きくなるのですが、最小半径の処理を繰り返すよりも粗く汚くなってしまいます。 元画像から、「明るさの最小値」を上記の設定で1回〜10回までかけた画像をアニメーションにしてみました。これを見ると「明るさの最小値」の正体が直感的にわかります。明るさの最小値とは、明暗のエッジの明るい方を削る処理なのです。 明るさの最小値の副作用 「明るさの最小値」は、いわゆるダメージ系の処理です。何かの効果があることの引き換えに、何かを失います。星が小さくなるのはよいのですが、明るい部分が削られディテールを失います。また、逆に暗点が拡大してしまうのがわかります。元画像に暗点ノイズが多いと「明るさの最小値」によってそれが増幅されて汚くなってしまいます。 さらに、この作例の場合「星の色がよくわかるようになる」理由は、実は小さい色ハロが拡大していたにすぎません。色ハロの大きなレンズの場合は、収拾不可能なほどに収差が強調されてしまう可能性もあります。ダメージ系の処理は常に万能ではありません。慎重に効果を見ながら、控えめに行うのが大事です。 まとめ ほかにもいろいろ書きたいことはあるのですが、あんまり書くと「ワンポイント」でなくなってしまうので止めておきます^^(*) (*)ちなみにステライメージの「スターシャープ」は原理的には明るさの最小値のようなものです(違ってたらすいません)。また、PixInsightにも(名前はわかりませんが)同様の機能があるはずです。 「明るさの最小値」は、使い方によっては劇的な効果がありますが、その分副作用も大きく、下手にやると眼も当てられない結果になります。一番ライトな使い方は、仕上がり画像に「明るさの最小値」をサクッと(0.2pxで2回くらい)適用すると、副作用もあまり目立たずワンランク締まった画像になります。「最後に味の素を振る」みたいなものですね! それでは、皆様のご武運をお祈り申し上げます。次回またお会いしましょう!  編集部発信のオリジナルコンテンツ