サイトロンジャパン Presents!
新連載、Sky Watcher(スカイウォッチャー)の新製品「EQM-35赤道儀」。10万円を切る低価格で自動導入と耐荷重10kgを実現。赤緯軸を取り外しできるシステム赤道儀です。天文趣味にはお金がかかる・・できるだけコスパのいい機材を選びたい。そんな方に最適な製品がEQM-35シリーズ。今回はそのファーストインプレッションをお届けします。

 



EQM-35とはどんな製品か

Sky Watcher(スカイウォッチャー)EQM-35赤道儀(以下、EQM-35と表記)とはどんな製品なのでしょうか?

EQM-35の概要

3.4kgのバランスウェイトはもう1個付属します。ウェイト軸はΦ20mm、ビクセンGP・SXシリーズ赤道儀のウェイトと互換性があります。2インチスリーブのLET28mmの接眼レンズ(写真の中)、天頂ミラーが付属します。左の25mmPLと右のバローレンズは編集部所有のものです。

EQM-35の外観。今回お借りした製品は「EQM-35Pro(ステンレス三脚仕様)」というもので、赤緯赤経の2軸パルスモーター駆動、自動導入対応の製品です。

シュミット・Sky Watcher EQM-35Pro赤道儀(ステンレス三脚仕様)
http://www.syumitto.jp/SHOP/SW1240020377.html

EQM-35 シリーズは、組み合わせによって自動導入赤道儀としも 簡易型星野撮影用マウントとし ても使用可能なシステム赤道儀です。
既存の EQ3に比べて赤経軸のギア歯数を130 枚から180 枚 に増やすことで追尾精度が大幅改善されています(赤緯軸ギアは65枚)。搭載可能質量は約 10kgです 。

販売価格は執筆時(2018/5/13)で税込92,880円。耐荷重10kgの自動導入対応機が10万円を切る価格。これがEQM-35の大きな魅力の一つ。

ラインナップには2軸モーターと自動導入が含まれない下位モデルもあり、こちらだと税込40,824円という安さ。別途アップグレードキットを追加すればEQM-35Pro相当にすることも可能。

大型ウォームホイールを採用

直径92.5mmのホイールは、ビクセンSXシリーズ(歯数180枚、直径72mm)よりもさらに大型です。

EQM-35赤道儀では、赤経軸のウォームホイールが歯数180枚、直径92.5mmと大幅に大型化されています。ウォームホイルは追尾精度の要となるパーツですが、それを大型化することで、同じ工作精度であれば直径が大きくなった分だけ「ピリオディックエラー(周期的な追尾誤差)」を小さくすることができ、より高い追尾精度が期待できます。

1軸モード

左:赤緯体を取り外したところ。右:標準の赤緯体と別売の「L型微動雲台(税込 7,344円)とカウンターウェイト(税込 4,860円)」

EQM-35の大きな特長の一つは、赤緯体を分割できるシステム赤道儀であること。オプションのL型微動雲台を装着するなどして、1軸駆動のポータブル赤道儀としても使用することができます。

シュミット・SkyWatcher赤道儀・EQMシリーズ
http://www.syumitto.jp/SHOP/944260/1094725/list.html

オプションの「L型微動雲台」の詳細。粗動クランプの造りは良くできていて、あまり力を入れなくても簡単に緩めて動かすことができました。微動の動作も特にガタはなくスムーズでした。

中:EF300mmF2.8L ISを搭載。ほんの少しウェイト不足ですが東側を重くしてちょうどくらいでしょう。右:70-200mmF4Lを搭載。写真のウェイト位置でバランスがとれています。

この構成でカメラの望遠レンズを搭載したところ。赤緯軸についている全周微動装置は構図合わせに威力を発揮しそう。
この構成以外にも、ビクセン規格のアリガタが装着できるためカメラの2台搭載して星野撮影など、さまざまな使い方が可能です。

大口径のウォームギアによる精度向上がどのくらいなのか、ノータッチガイドでどこまでの精度が出るのかが楽しみです。

三脚

開き止めには2インチ・1.25インチのアイピースを差し込むことのできる穴が空いています。これは便利。

EQM-35赤道儀だけでなく、EQ3、EQ5の美点の一つが三脚。捩れ剛性の高いステンレスの太いパイプをスチールの開き止め板で締め上げトラス構造で強度を保つ仕組みです。

重量は実測で5.8kg、ビクセンのSXシリーズ用の三脚SG-HAL130(実測5.3kg)よりも若干重くなっています。

EQ35-Mの三脚台座の穴は、GPシリーズと互換の60mm径です。

ビクセンSG-HAL130との比較。三脚台座はSG-HAL130の方が大きく安定しているように見えるのですが、前述の締め上げ機構の効果が大きいのか、強くねじってみると強度的には勝っているように感じられました。

赤道儀本体

赤道儀本体の重量は赤緯体ありの状態で実測5.3kg、赤緯軸を外して1軸にした場合3.2kg。赤緯軸はビクセン規格のアリミゾになっています。

赤道儀本体は従来製品のEQ3赤道儀をベースにしていますが、同一なのは極軸支持体まわりだけで、赤経軸・赤緯軸とも大きくモディファイされています。赤緯軸を装着した状態での実測重量は5.8kg(*)。

(*)カタログ値では4.38kgとなっています。これはウェイト軸を含まない重量なのでしょうか。です。(5/15追記。確認がとれました)

公称搭載可能重量は10kgでEQ3(5.5kg)だけでなくEQ5(9.1kg)も上回りますが、これは付属のバランスウェイトの違いもあり、この数字通りの「強度差」があるとは考えない方がよいでしょう。

実際に鏡筒を載せてみた印象では、赤道儀の安定度は非常に高く、重量2.5kgのBKED80鏡筒を載せた場合ではビクセンのSXPに負けていない印象でした。
限界に近い重量機材を搭載した場合は差が出てくると思いますが、少なくとも軽量機材を使う上では遜色のない強度といえるでしょう。

左は赤緯体を外したところ。ここにM5のネジ4本でビクセン規格アリミゾを装着します。赤緯体はM6ネジ4本、異なるネジ穴を使うことに注意が必要です。

SynScanコントローラ

左がEQM-35用のコントローラ。ケーブルで赤経体に接続します。右が共通のハンドコントローラ。カールコードで接続でき、太くて硬いシリアルケーブル接続のSB10よりも使いやすく感じました。

自動導入のコントローラはSky Watcher製品共通の「SynScan」です。表示画面が2行しかないので、例えばグラフィック表示が可能なビクセンの「スターブックテン」と比較すると星図を表示することができない・メニュー選択の見通しが悪いなど操作性には劣ります(*)。

(*)ステラナビゲータなどを使用してPCから制御することはもちろん可能です。筆者が撮影地で見かけたEQユーザーはこの構成の方が多い印象でした。

シュミット・Sky Watcher Wi-fiアダプター
http://www.syumitto.jp/SHOP/SW3040020168.html

Sky-Watcher GOTO マウントのハンドコントロールポートに接続することで、専用アプリ「SynScan」または「SynScan Pro」(Android/iOS 対応)から遠隔操作が可能になります。

しかし、EQM-35と同時に発売された「WiFiアダプター(税込5,940円)」を使用することで、なんとスマートフォン・タブレットから遠隔操作が可能になります(この場合従来品のコントローラでは制御できずスマホ専用になります)。また、この製品はEQM-35だけでなく、全てのSynScan対応のSky Watcher GOTOマウント(経緯台含む)で使用できるそうです。

こちらもお借りできる予定なので、詳細なレビューを予定しています。

EQ赤道儀との付き合い方

ネットを検索すると、EQ3/EQ5を含め中国製の赤道儀については、さまざまな情報がネガティブなものも含めて出てきます。ここでは、気になったことをいくつかご紹介します。

目盛環

赤緯の指標はエンボスで本体と同色塗装のため実用性は乏しいでしょう。赤経にはバーニアが付いているのですが・・・極軸望遠鏡のキャップもかなりはめ込みがユルく、落としてなくさないように注意が必要そう。

自動導入赤道儀では目盛環は不要なのですが、赤緯・赤経の目盛環が付いています。指標はあまり見やすいものではなく、赤経の目盛環はかなりユルユルで微妙です。

注意点としては、赤経目盛環の止めネジを締めないこと。赤経軸の回転がスムーズでなくなることがあります(*)

5/16追記)目盛環の「0時」の位置に、止めネジが貫通する穴が空いています。この位置で締めておけば問題ないようです。

極軸望遠鏡



極軸望遠鏡が内蔵されていますが、若干の調整(センター出し)を自分で行う必要があります。やり方は取説に書いてあるのですが、小さなネジ3本を細かく調整する必要があり、若干ハードルを感じるところです。

今回試用した個体では、センターのズレは2分角程度で誤差の範囲といえる程度でした。念のため調整しましたが、この程度ならそのまま使っても問題ないと思いますが、センターの確認はしておいたほうが良いでしょう。

極軸望遠鏡の調整と設置の詳細は別途まとめたいと思います。結論からいって、日付・時刻・経度をそれぞれ設定しなくてはならない旧ビクセン式よりも、SynScanコントローラが表示した通り設定するだけのEQの方が単純明快で合わせやすいと感じました。「Polar Scope Align」などのスマホアプリを使用すればより直感的に合わせることができます。

左:SynScanの起動時に北極星の位置がコントローラに表示されます。右:スマホアプリ「PS Align」の画面。GPSから取得した位置・時刻情報をもとに北極星の位置を自動で表示してくれます。

駆動部のギア

左:赤経軸、右:赤緯軸。赤経軸のギアはほぼ隠れているので問題ありませんが、赤緯軸は一部ギアが露出しています。運搬時にぶつけて歯を傷つけないように注意が必要です。

他の赤道儀でも普通にあることですが、一部駆動部のギアが露出していることに注意が必要です。追尾上一番重要な赤経側は隠れているので、あまり神経質になる必要はないですが。

信頼できるショップで購入する

これが一番重要かもしれません。中国製の工業製品の品質の向上はめざましいですが、やはり「検品」の精度においては、まだ日本製品との差があるのが現状です。

購入して何か問題を感じたときに、それが本来の仕様なのか、個体差の範疇なのか、検品チェックを漏れた不良なのかを切り分けなければなりません。不良の場合は当然修理・交換になります。

その際に重要なのが販売店のサポート力。できれば近くにある実店舗で、ネットで購入する場合は十分な商品知識と販売実績を持ったショップで購入するのが吉でしょう。

他の製品との比較(重量と価格)

乱暴な比較になるのを承知で、いくつかの他社製品とSky Watcherの他製品を、「価格」と「本体+三脚の重量」でグラフにしてみました。

これでみると、Sky WatcherのEQ3、EQ5、EQM-35はほとんど同じ「10万円以下」「重量12kg以下」のポジションにあることがわかります。自動導入対応で価格10万を切る製品ではオンリーワンのセグメントといえるでしょう。

逆に、EQ3、EQ5、EQM-35のどれを選ぶかが問題です。ネットでの評価ではEQ5>EQ3という声が多いので、予算がクリティカルでなければEQ5かEQM-35のいずれかの選択となるでしょう。

大型ウォームホイルによる精度向上が期待通りであれば、システム赤道儀としての拡張性も考えてEQM-35に軍配があがるように思います。

開封動画

今回サイトロンジャパンさんからお借りした機材一式の開封動画です。音が悪くてすみません・・しかも電池切れで最後が少し切れてしまいましたが、ご笑覧ください。

まとめ

今後レビュー予定の機材構成。左はSky Watcherの2枚玉アポクロマートBKED80鏡筒。右は編集部所有のセレストロンC8シュミットカセグレン。

いかがでしたか?

耐荷重10kgの自動導入対応赤道儀が10万円を切る価格。大事なことなので二度書きました^^
Sky Watcherの赤道儀の魅力は、まずはこの手頃な価格です。さらに、EQ3・EQ5といった従来品と比較して値ごろ感を失わずに、ウォームホイールの大型化やシステム赤道儀化などの機能アップを実現したEQM-35は、機材選びの選択肢を大きく広げてくれるはずです。

この連載では、次回以降ディープスカイや惑星の撮影、自動導入などの使い勝手、追尾精度などを詳細にレビューしていく予定です。お楽しみに!

フォトギャラリー

EQM-35の各部の、より詳細の画像をまとめました。

三脚先端にはゴムキャップがついています。部屋の床を傷つけない嬉しい配慮。

三脚を縮めた状態。左がEQM-35、中央がビクセンSG-HAL130、右がK-ASTECのPTP-C2。

同じく三脚を伸ばした状態。撮影メインならここまで伸ばすことは少ないでしょうが、十分な長さ。

赤道儀の極軸支持体。水平・垂直微動付き、動作はスムーズです。赤経軸と極軸支持体は一体となっています。ここの造りはEQ3と同等。

SXP赤道儀と並べてみました。値段も重量もコンセプトも全く異なる2つですが、それぞれの特性をよく理解して自分の予算と用途にあった機材を選びたいもの。

SWAT310赤道儀と並べてみました。重量もコンセプトも全く異なる2つですが、以下同文。


・本記事は株式会社サイトロンジャパン様にご協力いただき、天文リフレクションズ編集部が独自の判断で作成したものです。文責は全て天文リフレクションズ編集部にあります。記事に関するご質問・お問い合わせなどは天文リフレクションズ編集部宛にお願いいたします。

・製品の販売価格は執筆時(2018/5/13)のものです。

・文中の社名、商品名は各社の商標または登録商標です。 https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/05/7229baf97072c692e19eeccc1fc5d8d4-1024x538.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/05/7229baf97072c692e19eeccc1fc5d8d4-150x150.jpg編集部レビューマウントマウント  サイトロンジャパン Presents! 新連載、Sky Watcher(スカイウォッチャー)の新製品「EQM-35赤道儀」。10万円を切る低価格で自動導入と耐荷重10kgを実現。赤緯軸を取り外しできるシステム赤道儀です。天文趣味にはお金がかかる・・できるだけコスパのいい機材を選びたい。そんな方に最適な製品がEQM-35シリーズ。今回はそのファーストインプレッションをお届けします。   EQM-35とはどんな製品か Sky Watcher(スカイウォッチャー)EQM-35赤道儀(以下、EQM-35と表記)とはどんな製品なのでしょうか? EQM-35の概要 EQM-35の外観。今回お借りした製品は「EQM-35Pro(ステンレス三脚仕様)」というもので、赤緯赤経の2軸パルスモーター駆動、自動導入対応の製品です。 シュミット・Sky Watcher EQM-35Pro赤道儀(ステンレス三脚仕様) http://www.syumitto.jp/SHOP/SW1240020377.html EQM-35 シリーズは、組み合わせによって自動導入赤道儀としも 簡易型星野撮影用マウントとし ても使用可能なシステム赤道儀です。 既存の EQ3に比べて赤経軸のギア歯数を130 枚から180 枚 に増やすことで追尾精度が大幅改善されています(赤緯軸ギアは65枚)。搭載可能質量は約 10kgです 。 販売価格は執筆時(2018/5/13)で税込92,880円。耐荷重10kgの自動導入対応機が10万円を切る価格。これがEQM-35の大きな魅力の一つ。 ラインナップには2軸モーターと自動導入が含まれない下位モデルもあり、こちらだと税込40,824円という安さ。別途アップグレードキットを追加すればEQM-35Pro相当にすることも可能。 大型ウォームホイールを採用 EQM-35赤道儀では、赤経軸のウォームホイールが歯数180枚、直径92.5mmと大幅に大型化されています。ウォームホイルは追尾精度の要となるパーツですが、それを大型化することで、同じ工作精度であれば直径が大きくなった分だけ「ピリオディックエラー(周期的な追尾誤差)」を小さくすることができ、より高い追尾精度が期待できます。 1軸モード EQM-35の大きな特長の一つは、赤緯体を分割できるシステム赤道儀であること。オプションのL型微動雲台を装着するなどして、1軸駆動のポータブル赤道儀としても使用することができます。 シュミット・SkyWatcher赤道儀・EQMシリーズ http://www.syumitto.jp/SHOP/944260/1094725/list.html オプションの「L型微動雲台」の詳細。粗動クランプの造りは良くできていて、あまり力を入れなくても簡単に緩めて動かすことができました。微動の動作も特にガタはなくスムーズでした。 この構成でカメラの望遠レンズを搭載したところ。赤緯軸についている全周微動装置は構図合わせに威力を発揮しそう。 この構成以外にも、ビクセン規格のアリガタが装着できるためカメラの2台搭載して星野撮影など、さまざまな使い方が可能です。 大口径のウォームギアによる精度向上がどのくらいなのか、ノータッチガイドでどこまでの精度が出るのかが楽しみです。 三脚 EQM-35赤道儀だけでなく、EQ3、EQ5の美点の一つが三脚。捩れ剛性の高いステンレスの太いパイプをスチールの開き止め板で締め上げトラス構造で強度を保つ仕組みです。 重量は実測で5.8kg、ビクセンのSXシリーズ用の三脚SG-HAL130(実測5.3kg)よりも若干重くなっています。 ビクセンSG-HAL130との比較。三脚台座はSG-HAL130の方が大きく安定しているように見えるのですが、前述の締め上げ機構の効果が大きいのか、強くねじってみると強度的には勝っているように感じられました。 赤道儀本体 赤道儀本体は従来製品のEQ3赤道儀をベースにしていますが、同一なのは極軸支持体まわりだけで、赤経軸・赤緯軸とも大きくモディファイされています。赤緯軸を装着した状態での実測重量は5.8kg(*)。 (*)カタログ値では4.38kgとなっています。これはウェイト軸を含まない重量なのでしょうか。です。(5/15追記。確認がとれました) 公称搭載可能重量は10kgでEQ3(5.5kg)だけでなくEQ5(9.1kg)も上回りますが、これは付属のバランスウェイトの違いもあり、この数字通りの「強度差」があるとは考えない方がよいでしょう。 実際に鏡筒を載せてみた印象では、赤道儀の安定度は非常に高く、重量2.5kgのBKED80鏡筒を載せた場合ではビクセンのSXPに負けていない印象でした。 限界に近い重量機材を搭載した場合は差が出てくると思いますが、少なくとも軽量機材を使う上では遜色のない強度といえるでしょう。 左は赤緯体を外したところ。ここにM5のネジ4本でビクセン規格アリミゾを装着します。赤緯体はM6ネジ4本、異なるネジ穴を使うことに注意が必要です。 SynScanコントローラ 自動導入のコントローラはSky Watcher製品共通の「SynScan」です。表示画面が2行しかないので、例えばグラフィック表示が可能なビクセンの「スターブックテン」と比較すると星図を表示することができない・メニュー選択の見通しが悪いなど操作性には劣ります(*)。 (*)ステラナビゲータなどを使用してPCから制御することはもちろん可能です。筆者が撮影地で見かけたEQユーザーはこの構成の方が多い印象でした。 シュミット・Sky Watcher Wi-fiアダプター http://www.syumitto.jp/SHOP/SW3040020168.html Sky-Watcher GOTO マウントのハンドコントロールポートに接続することで、専用アプリ「SynScan」または「SynScan Pro」(Android/iOS 対応)から遠隔操作が可能になります。 しかし、EQM-35と同時に発売された「WiFiアダプター(税込5,940円)」を使用することで、なんとスマートフォン・タブレットから遠隔操作が可能になります(この場合従来品のコントローラでは制御できずスマホ専用になります)。また、この製品はEQM-35だけでなく、全てのSynScan対応のSky Watcher GOTOマウント(経緯台含む)で使用できるそうです。 こちらもお借りできる予定なので、詳細なレビューを予定しています。 EQ赤道儀との付き合い方 ネットを検索すると、EQ3/EQ5を含め中国製の赤道儀については、さまざまな情報がネガティブなものも含めて出てきます。ここでは、気になったことをいくつかご紹介します。 目盛環 自動導入赤道儀では目盛環は不要なのですが、赤緯・赤経の目盛環が付いています。指標はあまり見やすいものではなく、赤経の目盛環はかなりユルユルで微妙です。 注意点としては、赤経目盛環の止めネジを締めないこと。赤経軸の回転がスムーズでなくなることがあります(*)。 5/16追記)目盛環の「0時」の位置に、止めネジが貫通する穴が空いています。この位置で締めておけば問題ないようです。 極軸望遠鏡 極軸望遠鏡が内蔵されていますが、若干の調整(センター出し)を自分で行う必要があります。やり方は取説に書いてあるのですが、小さなネジ3本を細かく調整する必要があり、若干ハードルを感じるところです。 今回試用した個体では、センターのズレは2分角程度で誤差の範囲といえる程度でした。念のため調整しましたが、この程度ならそのまま使っても問題ないと思いますが、センターの確認はしておいたほうが良いでしょう。 極軸望遠鏡の調整と設置の詳細は別途まとめたいと思います。結論からいって、日付・時刻・経度をそれぞれ設定しなくてはならない旧ビクセン式よりも、SynScanコントローラが表示した通り設定するだけのEQの方が単純明快で合わせやすいと感じました。「Polar Scope Align」などのスマホアプリを使用すればより直感的に合わせることができます。 駆動部のギア 他の赤道儀でも普通にあることですが、一部駆動部のギアが露出していることに注意が必要です。追尾上一番重要な赤経側は隠れているので、あまり神経質になる必要はないですが。 信頼できるショップで購入する これが一番重要かもしれません。中国製の工業製品の品質の向上はめざましいですが、やはり「検品」の精度においては、まだ日本製品との差があるのが現状です。 購入して何か問題を感じたときに、それが本来の仕様なのか、個体差の範疇なのか、検品チェックを漏れた不良なのかを切り分けなければなりません。不良の場合は当然修理・交換になります。 その際に重要なのが販売店のサポート力。できれば近くにある実店舗で、ネットで購入する場合は十分な商品知識と販売実績を持ったショップで購入するのが吉でしょう。 他の製品との比較(重量と価格) 乱暴な比較になるのを承知で、いくつかの他社製品とSky Watcherの他製品を、「価格」と「本体+三脚の重量」でグラフにしてみました。 これでみると、Sky WatcherのEQ3、EQ5、EQM-35はほとんど同じ「10万円以下」「重量12kg以下」のポジションにあることがわかります。自動導入対応で価格10万を切る製品ではオンリーワンのセグメントといえるでしょう。 逆に、EQ3、EQ5、EQM-35のどれを選ぶかが問題です。ネットでの評価ではEQ5>EQ3という声が多いので、予算がクリティカルでなければEQ5かEQM-35のいずれかの選択となるでしょう。 大型ウォームホイルによる精度向上が期待通りであれば、システム赤道儀としての拡張性も考えてEQM-35に軍配があがるように思います。 開封動画 https://youtu.be/RrnqEbje1L0 今回サイトロンジャパンさんからお借りした機材一式の開封動画です。音が悪くてすみません・・しかも電池切れで最後が少し切れてしまいましたが、ご笑覧ください。 まとめ いかがでしたか? 耐荷重10kgの自動導入対応赤道儀が10万円を切る価格。大事なことなので二度書きました^^ Sky Watcherの赤道儀の魅力は、まずはこの手頃な価格です。さらに、EQ3・EQ5といった従来品と比較して値ごろ感を失わずに、ウォームホイールの大型化やシステム赤道儀化などの機能アップを実現したEQM-35は、機材選びの選択肢を大きく広げてくれるはずです。 この連載では、次回以降ディープスカイや惑星の撮影、自動導入などの使い勝手、追尾精度などを詳細にレビューしていく予定です。お楽しみに! フォトギャラリー EQM-35の各部の、より詳細の画像をまとめました。 三脚先端にはゴムキャップがついています。部屋の床を傷つけない嬉しい配慮。 三脚を縮めた状態。左がEQM-35、中央がビクセンSG-HAL130、右がK-ASTECのPTP-C2。 同じく三脚を伸ばした状態。撮影メインならここまで伸ばすことは少ないでしょうが、十分な長さ。 赤道儀の極軸支持体。水平・垂直微動付き、動作はスムーズです。赤経軸と極軸支持体は一体となっています。ここの造りはEQ3と同等。 SXP赤道儀と並べてみました。値段も重量もコンセプトも全く異なる2つですが、それぞれの特性をよく理解して自分の予算と用途にあった機材を選びたいもの。 SWAT310赤道儀と並べてみました。重量もコンセプトも全く異なる2つですが、以下同文。 ・本記事は株式会社サイトロンジャパン様にご協力いただき、天文リフレクションズ編集部が独自の判断で作成したものです。文責は全て天文リフレクションズ編集部にあります。記事に関するご質問・お問い合わせなどは天文リフレクションズ編集部宛にお願いいたします。 ・製品の販売価格は執筆時(2018/5/13)のものです。 ・文中の社名、商品名は各社の商標または登録商標です。編集部発信のオリジナルコンテンツ