みなさんこんにちは!

世間では「コロナ」一色の今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。カメラファンの一大イベントだった「CP+2020」も中止になってしまい、メーカー各社様も大きな露出機会を失うことになってしまいました。

そこで!不肖「天リフ」では、CP+2020で発表予定だった各社の製品を独自に取材し、読者のみなさんにお届けすることにしました。まず第一弾は「PENTAX(リコーイメージング株式会社)」編です!

クラウドファンディング「MAKUAKE」の衝撃

CP+2020の開催予定の2週間前。クラウドファウンディング「MAKUAKE」上で、あるプロジェクトが始まりました。

MAKUAKE・新コンセプト。感動をシェアできる双眼鏡 & 片手でカンタン操作の単眼鏡!
https://www.makuake.com/project/pentax3way/

結果的に「ほぼ一撃」で「応援購入」が予定数に達してしまったこのプロジェクト、PENTAXの「3way」の双眼鏡「VD4×20 WP 」と単眼鏡「VM6×21 WP 」です(*)。

(*)PENTAXの双眼鏡には、これまでU/A/S/Zの4つのシリーズがありました。この2製品は新しい「Vシリーズ」の製品になります。

この製品にPENTAXの並々ならぬ気合を感じた天リフ編集部。2月26日にリコーイメージング株式会社を訪問し、製品を見せていただくことができました!以下、そのインプレッションをレポートしたいと思います。

世界初の「分割式3way双眼鏡」PENTAX VD4×20 WP

こちらの動画はMAKUAKE上で公開された「VD4×20 WP 」の商品コンセプト紹介動画。MAKUAKE上では「メーカー希望小売価格40,700円(税込)」「支援価格:29,520円(税込)」と表記されています(*)。

(*)実際の販売価格がどう設定されるかは不明ですが、価格的には「高級品」カテゴリになります。

楽しい2分割のギミック

2つにわけて2人で楽しめる」ありそうでなかったこのギミック。早速ですがバキッとやってみました。でも、最初はこわごわ、どうしていいのか戸惑います。「こうやるんですよ。思い切りやってもらって大丈夫です」と「あの」TKOさん(*)が、見本を見せてくださいました。

(*)(株)リコー・カメラ事業部の看板デザイナー。商品企画担当で冒頭の動画のMC。

なるほど、バネの固定力より大きな力が必要なのか。外れてみるととっても簡単。2個の穴に、強力なバネで押された2個のボールがはまりこんで固定される仕組み、とてもシンプルな構造です。バネの圧着力が大きく接合面が高精度に加工されているせいか、がたつきもまったくありません。

取付けは逆に、このボールをガイド溝に合わせて押し込むだけ。付ける、外す。付ける、外す。何回か繰り返すとすっかり慣れて、一瞬でできるようになりました!(*)

(*)たぶん自分が人に見せるときは、得意げに「こうやるんだよー、簡単でしょ(満面の笑み)」ってやるんでしょうね^^

小さくてもよく見える・手抜きのない造り

光学系は反射率の低い「高級グレード」の全面マルチコート。内面反射防止処理も丁寧で全く手抜きのない造り。手前のまるい凹みは親指を置くポジションで、小さな双眼鏡をしっかりホールドできるようになっています。

「VD4×20 WP 」は文字通り口径20mmの倍率4倍。高級双眼鏡としては、最も口径も倍率も小さい部類になります。しかし、覗いてみると「おおーー!」と声を上げるほどのクリアでシャープな視界(*)。

(*)倍率4倍で実視界10°なので、見かけ視界は普通の広さです。良像範囲は70-80%程度でしょうか。

光路図。2枚の色消し対物レンズ、位相差コートを施したダハプリズム、3枚構成の接眼レンズのオーソドックスな設計ですが、全面に反射率の低いマルチコートが施されています。https://www.makuake.com/project/pentax3way/

その理由は明快。やるべきことをきちんとやっているから。商品サイトでも謳われている「全面マルチコート」や「位相差コート」もそうですが、目に見えない部分〜内部のつや消し黒塗装や遮光環、レンズの縁の黒染め(*)など〜にも、まったく手抜きが見られませんでした。

(*)レンズの縁(コバ)は通常すりガラス状なのですが、そのままにしてしまうと迷光の源になってしまうため、「墨」を塗って黒く塗装します。ここに手抜きがないかどうかは高級品のひとつのバロメーターといえるでしょう。

現代では「良く見える双眼鏡」を作るオーソドックスな定石は、ほぼ明らかになっています。しかし、その要件をきちんと満たしている製品は、市場にはごくわずかしかありません。小さい双眼鏡は「より安いもの」とみられてしまうがために、手抜きせずによい物を作っても商売上のメリットが少ないからです。

口径20mm4倍の必然性

高級感のある外装。緑のリングはPENTAXのカメラレンズと同様のワンポイント。

しかし、「本当に良く見える、低倍率の小さな双眼鏡を作りたい」という想いは、双眼鏡業界の「エッジな中の人」はみな抱いているのではないでしょうか。でも普通にやったら売れる製品にならない。ではどうすればいいか。その回答がこの「VD4×20 WP 」だといえるでしょう。

回答の一つ目が2分割のギミックによる「感動のシェア」、二つ目がクールなデザインと高級感ある外装。でもそれだけではありません。

https://www.makuake.com/project/pentax3way/

なんと。三つ目は驚きの二段直列接続。2つにバラして、縦に繋ぐと4×4の16倍の単眼鏡に変身。実際覗いてみると「えっ!」と驚くほど普通に良く見えます。さすがに口径20mmなので明るくはないのですが、シャープな像でしっかり、大きく見えます。

この使い方が現実的にイケるのも「倍率4倍」と低く抑えた結果でしょう。5倍にしてしまうと倍率25倍と大きくなりすぎ、より暗くなるだけでなく手持ちの限界を超えてしまいます。

低倍率の良さを取りつつも、「二段重ね」のアイデアでさらなる高倍率も手に入れた。倍率厨もこれなら不満はあるまい!この「隠し玉」の存在は、ユーザー体験だけでなく、営業的にもかなり大きいのではないでしょうか。

近くから遠くまで、全天候対応

「VD4×20 WP 」は、とても小さくどこにでも持ち歩けるサイズです。どこに行くにも、どんなときでも、持ち歩いてサッととりだして見てみる。そんな「構えない」使い方が一番向いているのではないでしょうか。

そんな時に重要な要素が2つあります。一つ目は「近くまでピントが合う」こと。小型で低倍率の双眼鏡はその点有利(*)。「VD4×20 WP 」は最短50cm(**)からピントが合うため、美術館や広い会議室でのプレゼンテーションなど、本格的な双眼鏡では大げさすぎるシチュエーションでも活用できそうです。

(*)中型以上の双眼鏡の場合、近くまでピントを合うように設計すると、ピントの繰り出し量が大きくなりメカ的に大きくなりすぎてしまいます。

(**)単眼鏡としての使用時。双眼鏡として使用する場合は1.5mとなります。これは、双眼の場合でもピントは合うのですが、「視差」のため近接時には視野の重なりが若干ずれてしまうためです。

もうひとつ、コンパクトならではのメリットがより生きるのが、全天候性。雨の日、海・川・滝など、びしょびしょになるような場所でも安心して使えます。「VD4×20 WP 」は「水深1mまでなら水に沈んでも大丈夫」という本格的な防水性能(*)を備えているため、たいていのアウトドアシーンなら大丈夫です。

(*)JIS保護等級7級相当。

星見用にも期待!?

実視野10°の広さの例。左はいて座の夏の天の川、右はオリオン座です。ステライメージ11で作成。

口径20mm4倍は、口径は小さいものの実視野10°、「瞳径5mm」と明るく、星見用にも十分期待できるスペック。今回は実視することはできませんでしたが、機会があればぜひ覗いてみたいものですね。今年の夏の各地の星祭りではたぶん展示されることでしょう。ぜひごらんになってみてくださいね!

「3way防水単眼鏡」PENTAX VM 6×21 WP

こちらの動画はMAKUAKE上で公開された「VM6×21 WP 」の商品コンセプト紹介動画。MAKUAKE上では「メーカー希望小売価格20,350円(税込)」「支援価格:15,120円(税込)」と表記されています(*)。

(*)本体(ケース・ストラップ付属)のみの価格。

実は実物を見るまでは、筆者はいまひとつこの製品のコンセプトを実感できていませんでした。しかし、実際に触ってみると・・これはホントに面白い。これまでの「単眼鏡」のイメージを粉砕する製品です。

コンパクト、ワンハンドの単眼鏡

写真では大きく見えますが^^;; 実物はとても小さくてカワイイ。重量は150gで345gの「VD4×20 WP 」の半分以下。(商品画像は試作品です。製品では「WR」は「WP」となります)

斬新その1.ピント合わせは「何かを回す」のではなく、シーソー型のレバーを指で押して行います。これは実に新鮮な新しい感覚です。初めて使ったときは行きすぎたり、思った位置でピタッと止められなくて戸惑いましたが、少し慣れると実に「カ・イ・カ・ン」。プッシュの強さと量の加減がのみこめてくると「スカッ」と一発でピントが合うようになります(*)。

(*)合焦機構のスムーズさが少しでも欠けていると、こうはいかないでしょう。意味のある、目的が明確なコストのかけ方をしていると感じました。

「どこを向いても一瞬でピントが合う、若々しい肉眼の感覚」というとちょっと言い過ぎですが・・道具を使いこなす楽しさを感じることができます。

光学性能は手抜きなし

対物側と接眼側に段差がありますが、ポロプリズム式ではなくダハプリズム式です。対物側にレンズが1枚追加されているのは「Nearモード」の切替のためもの。https://www.makuake.com/project/pentax3way/

「VD4×20 WP 」同様、光学性能は手抜きなしです。口径は21mm、倍率は6倍と、それぞれやや大きくなっています。実視界は8.2°で倍率6倍としては広め。最短合焦距離は「ノーマル」モードで1.5m、「Near」モードで70cmです。「ノーマル」と「Near」の切替えは、対物側のリングを回すことで行います。

 

接眼部。アイレリーフは17.8mm。メガネ着用でもまったく無理なく全視野を見ることができます。ごらんのようにコーティングは反射率の低いマルチコート。

斬新!マクロスタンド

透明なフードの根元にはLEDライトが2個ついていて、対象を明るく照らして拡大することができます。

斬新その2.「VM 6×21WP」をエッジの鋭い製品にしているのが、この「マクロスタンド」。クローズアップレンズを内蔵し、単眼鏡が18倍の顕微鏡に変身!

「諭吉チャレンジ」中。

さらに斬新その3.スマホアダプターを使えば「顕微鏡写真」も撮影が可能(*)。あんなものとか、こんなものをいろいろ拡大したり、これはいろいろ遊べそう。天文少年・科学少年の往年の夢がかなった瞬間^^ たんぼの水をすくってきて見てみたいですね!

(*)もちろん単眼鏡モードでもスマホアダプターは使用できます。スマホが望遠レンズになるだけでもかなり用途が広がりますね!

MAKUAKE申込者への本体以外のアクセサリの配布は、7月以降となるそうです。

左からスマホアダプター、VM 6×21WP本体、マクロスタンド。MAKUAKEでの応援購入価格は、三点セットの場合税込22,320円でした。これだけ遊べれば元はすぐにとれそうです^^

一般製品販売の予定は?

https://www.makuake.com/project/pentax3way/

繰り返しになりますが、今回ご紹介した2つの製品は、クラウドgファンディング「MAKUAKE(マクアケ)」による限定販売(応援購入)によるものです。

このようなクラウドファウンディングでは、今回の製品のようなチャレンジングな商品を、ユーザーの反応を探りながら製品化の道を探るような使われ方がされるようになってきています。

https://www.makuake.com/project/pentax3way/communication/detail/307288/

当初の予定数がわずか数時間で完売となり、クラウドファンディングは大成功。第一ステップはクリアです。現在「一般販売を前向きに検討している」フェーズだそうです。

光学製品は息の長い商品です。ビジネスとして持続的に成り立っていくためには、この後もさまざまなハードルをクリアしていかなくてはならないものと推測しますが、一般販売開始の朗報を心待ちにしたいと思います(*)。

(*)幸運にもMAKUAKEで入手できる方は、製品を周囲に見せびらかし、「買い逃した!」と残念な思いをしている方々は、ぜひ「こんな面白い製品が出るかも知れないよ!」というプロパガンダをよろしくお願いいたします^^ 筆者は業務用?も兼ねて単眼鏡を狙っております^^

まとめ・ユーザーの心に響く製品とは

左がビジネス推進部の渥美さん、右が商品企画・デザイナーのTKOさん。

いかがでしたか?

斬新なアイデアとギミックが凝縮された2つの製品。双眼鏡・単眼鏡という、もう「涸れた」はずだった光学製品が、PENTAXの手によって新たな世界を切り拓きました。それを実現した原動力は「こんなものが欲しかった」という「開発者の想い」と、それを高いレベルで実現する「光学製品を作る力」だと感じました。

高度成長期から21世紀初頭にかけて、世界をリードした日本の「物づくり」が大きな曲がり角を過ぎて、すでに長い時間が経過しています。世界の工場の役割はとうに大陸に移ってしまっています。

しかし、ユーザーの心に響く製品を生み出すのは、企画・開発・製造・販売までのすべてを含めた総合的な「プロデュース力」であることは今も昔も変わりません。企業規模が大きくて市場シェアが高いことも、もっといえば工場を国内に持つことも、必要条件でも十分条件でもないのです。

PENTAXというブランドが、リコーイメージングという企業が、熱いファンたちに強く支持されている理由をはっきり形としてあらためて示した。それがこの「Vシリーズ」の2つの製品ではないでしょうか。

とにかく、この製品は手に取ってみて面白い、覗いてみて楽しい、ぜひ自分の物にしていろんなことに使ってみたくなる。そんな心躍る製品でした!


  • 本記事はリコーイメージング株式会社様に取材協力いただき、天文リフレクション編集部が独自の費用と責任で企画・制作したものです。文責は全て天文リフレクションズ編集部にあります。
  • 本記事で使用したVシリーズ双眼鏡・単眼鏡はクラウドファンディングMAKUAKEで限定販売される製品です。一般販売される製品とは外観・仕様が異なる可能性があります。
  • 本記事の商品画像は試作品のものです
  • 記事に関するご質問・お問い合わせなどは天文リフレクションズ編集部宛にお願いいたします。
  • 本記事は極力客観的に実視をもとに作成していますが、本記事によって発生した読者様の事象についてはその一切について責任を負いかねますことをご了承ください。
  • 文中の商品名・会社名は各社の商標および登録商標です。
  • 機材の価格・仕様は執筆時(2020年3月)のものです。
  • 特に注記のない画像は編集部で撮影したものです。
http://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2020/03/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-1024x683.jpghttp://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2020/03/fc6927a4cd7fc6f068de9eb5d3ae4aff-150x150.jpg編集部新着双眼鏡CP+2020みなさんこんにちは! 世間では「コロナ」一色の今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。カメラファンの一大イベントだった「CP+2020」も中止になってしまい、メーカー各社様も大きな露出機会を失うことになってしまいました。 そこで!不肖「天リフ」では、CP+2020で発表予定だった各社の製品を独自に取材し、読者のみなさんにお届けすることにしました。まず第一弾は「PENTAX(リコーイメージング株式会社)」編です! クラウドファンディング「MAKUAKE」の衝撃 https://youtu.be/DZDyToZ5ovY CP+2020の開催予定の2週間前。クラウドファウンディング「MAKUAKE」上で、あるプロジェクトが始まりました。 MAKUAKE・新コンセプト。感動をシェアできる双眼鏡 & 片手でカンタン操作の単眼鏡! https://www.makuake.com/project/pentax3way/ 結果的に「ほぼ一撃」で「応援購入」が予定数に達してしまったこのプロジェクト、PENTAXの「3way」の双眼鏡「VD4×20 WP 」と単眼鏡「VM6×21 WP 」です(*)。 (*)PENTAXの双眼鏡には、これまでU/A/S/Zの4つのシリーズがありました。この2製品は新しい「Vシリーズ」の製品になります。 この製品にPENTAXの並々ならぬ気合を感じた天リフ編集部。2月26日にリコーイメージング株式会社を訪問し、製品を見せていただくことができました!以下、そのインプレッションをレポートしたいと思います。 世界初の「分割式3way双眼鏡」PENTAX VD4×20 WP https://youtu.be/FHdrvMJT5yY こちらの動画はMAKUAKE上で公開された「VD4×20 WP 」の商品コンセプト紹介動画。MAKUAKE上では「メーカー希望小売価格40,700円(税込)」「支援価格:29,520円(税込)」と表記されています(*)。 (*)実際の販売価格がどう設定されるかは不明ですが、価格的には「高級品」カテゴリになります。 楽しい2分割のギミック https://twitter.com/tenmonReflexion/status/1232813374964060160 「2つにわけて2人で楽しめる」ありそうでなかったこのギミック。早速ですがバキッとやってみました。でも、最初はこわごわ、どうしていいのか戸惑います。「こうやるんですよ。思い切りやってもらって大丈夫です」と「あの」TKOさん(*)が、見本を見せてくださいました。 (*)(株)リコー・カメラ事業部の看板デザイナー。商品企画担当で冒頭の動画のMC。 なるほど、バネの固定力より大きな力が必要なのか。外れてみるととっても簡単。2個の穴に、強力なバネで押された2個のボールがはまりこんで固定される仕組み、とてもシンプルな構造です。バネの圧着力が大きく接合面が高精度に加工されているせいか、がたつきもまったくありません。 取付けは逆に、このボールをガイド溝に合わせて押し込むだけ。付ける、外す。付ける、外す。何回か繰り返すとすっかり慣れて、一瞬でできるようになりました!(*) (*)たぶん自分が人に見せるときは、得意げに「こうやるんだよー、簡単でしょ(満面の笑み)」ってやるんでしょうね^^ 小さくてもよく見える・手抜きのない造り 「VD4×20 WP 」は文字通り口径20mmの倍率4倍。高級双眼鏡としては、最も口径も倍率も小さい部類になります。しかし、覗いてみると「おおーー!」と声を上げるほどのクリアでシャープな視界(*)。 (*)倍率4倍で実視界10°なので、見かけ視界は普通の広さです。良像範囲は70-80%程度でしょうか。 その理由は明快。やるべきことをきちんとやっているから。商品サイトでも謳われている「全面マルチコート」や「位相差コート」もそうですが、目に見えない部分〜内部のつや消し黒塗装や遮光環、レンズの縁の黒染め(*)など〜にも、まったく手抜きが見られませんでした。 (*)レンズの縁(コバ)は通常すりガラス状なのですが、そのままにしてしまうと迷光の源になってしまうため、「墨」を塗って黒く塗装します。ここに手抜きがないかどうかは高級品のひとつのバロメーターといえるでしょう。 現代では「良く見える双眼鏡」を作るオーソドックスな定石は、ほぼ明らかになっています。しかし、その要件をきちんと満たしている製品は、市場にはごくわずかしかありません。小さい双眼鏡は「より安いもの」とみられてしまうがために、手抜きせずによい物を作っても商売上のメリットが少ないからです。 口径20mm4倍の必然性 しかし、「本当に良く見える、低倍率の小さな双眼鏡を作りたい」という想いは、双眼鏡業界の「エッジな中の人」はみな抱いているのではないでしょうか。でも普通にやったら売れる製品にならない。ではどうすればいいか。その回答がこの「VD4×20 WP 」だといえるでしょう。 回答の一つ目が2分割のギミックによる「感動のシェア」、二つ目がクールなデザインと高級感ある外装。でもそれだけではありません。 なんと。三つ目は驚きの二段直列接続。2つにバラして、縦に繋ぐと4×4の16倍の単眼鏡に変身。実際覗いてみると「えっ!」と驚くほど普通に良く見えます。さすがに口径20mmなので明るくはないのですが、シャープな像でしっかり、大きく見えます。 この使い方が現実的にイケるのも「倍率4倍」と低く抑えた結果でしょう。5倍にしてしまうと倍率25倍と大きくなりすぎ、より暗くなるだけでなく手持ちの限界を超えてしまいます。 低倍率の良さを取りつつも、「二段重ね」のアイデアでさらなる高倍率も手に入れた。倍率厨もこれなら不満はあるまい!この「隠し玉」の存在は、ユーザー体験だけでなく、営業的にもかなり大きいのではないでしょうか。 近くから遠くまで、全天候対応 「VD4×20 WP 」は、とても小さくどこにでも持ち歩けるサイズです。どこに行くにも、どんなときでも、持ち歩いてサッととりだして見てみる。そんな「構えない」使い方が一番向いているのではないでしょうか。 そんな時に重要な要素が2つあります。一つ目は「近くまでピントが合う」こと。小型で低倍率の双眼鏡はその点有利(*)。「VD4×20 WP 」は最短50cm(**)からピントが合うため、美術館や広い会議室でのプレゼンテーションなど、本格的な双眼鏡では大げさすぎるシチュエーションでも活用できそうです。 (*)中型以上の双眼鏡の場合、近くまでピントを合うように設計すると、ピントの繰り出し量が大きくなりメカ的に大きくなりすぎてしまいます。 (**)単眼鏡としての使用時。双眼鏡として使用する場合は1.5mとなります。これは、双眼の場合でもピントは合うのですが、「視差」のため近接時には視野の重なりが若干ずれてしまうためです。 もうひとつ、コンパクトならではのメリットがより生きるのが、全天候性。雨の日、海・川・滝など、びしょびしょになるような場所でも安心して使えます。「VD4×20 WP 」は「水深1mまでなら水に沈んでも大丈夫」という本格的な防水性能(*)を備えているため、たいていのアウトドアシーンなら大丈夫です。 (*)JIS保護等級7級相当。 星見用にも期待!? 口径20mm4倍は、口径は小さいものの実視野10°、「瞳径5mm」と明るく、星見用にも十分期待できるスペック。今回は実視することはできませんでしたが、機会があればぜひ覗いてみたいものですね。今年の夏の各地の星祭りではたぶん展示されることでしょう。ぜひごらんになってみてくださいね! 「3way防水単眼鏡」PENTAX VM 6x21 WP https://youtu.be/9Tbw71xudIQ こちらの動画はMAKUAKE上で公開された「VM6×21 WP 」の商品コンセプト紹介動画。MAKUAKE上では「メーカー希望小売価格20,350円(税込)」「支援価格:15,120円(税込)」と表記されています(*)。 (*)本体(ケース・ストラップ付属)のみの価格。 実は実物を見るまでは、筆者はいまひとつこの製品のコンセプトを実感できていませんでした。しかし、実際に触ってみると・・これはホントに面白い。これまでの「単眼鏡」のイメージを粉砕する製品です。 コンパクト、ワンハンドの単眼鏡 斬新その1.ピント合わせは「何かを回す」のではなく、シーソー型のレバーを指で押して行います。これは実に新鮮な新しい感覚です。初めて使ったときは行きすぎたり、思った位置でピタッと止められなくて戸惑いましたが、少し慣れると実に「カ・イ・カ・ン」。プッシュの強さと量の加減がのみこめてくると「スカッ」と一発でピントが合うようになります(*)。 (*)合焦機構のスムーズさが少しでも欠けていると、こうはいかないでしょう。意味のある、目的が明確なコストのかけ方をしていると感じました。 「どこを向いても一瞬でピントが合う、若々しい肉眼の感覚」というとちょっと言い過ぎですが・・道具を使いこなす楽しさを感じることができます。 光学性能は手抜きなし 「VD4×20 WP 」同様、光学性能は手抜きなしです。口径は21mm、倍率は6倍と、それぞれやや大きくなっています。実視界は8.2°で倍率6倍としては広め。最短合焦距離は「ノーマル」モードで1.5m、「Near」モードで70cmです。「ノーマル」と「Near」の切替えは、対物側のリングを回すことで行います。   接眼部。アイレリーフは17.8mm。メガネ着用でもまったく無理なく全視野を見ることができます。ごらんのようにコーティングは反射率の低いマルチコート。 斬新!マクロスタンド 斬新その2.「VM 6×21WP」をエッジの鋭い製品にしているのが、この「マクロスタンド」。クローズアップレンズを内蔵し、単眼鏡が18倍の顕微鏡に変身! さらに斬新その3.スマホアダプターを使えば「顕微鏡写真」も撮影が可能(*)。あんなものとか、こんなものをいろいろ拡大したり、これはいろいろ遊べそう。天文少年・科学少年の往年の夢がかなった瞬間^^ たんぼの水をすくってきて見てみたいですね! (*)もちろん単眼鏡モードでもスマホアダプターは使用できます。スマホが望遠レンズになるだけでもかなり用途が広がりますね! 左からスマホアダプター、VM 6×21WP本体、マクロスタンド。MAKUAKEでの応援購入価格は、三点セットの場合税込22,320円でした。これだけ遊べれば元はすぐにとれそうです^^ 一般製品販売の予定は? 繰り返しになりますが、今回ご紹介した2つの製品は、クラウドgファンディング「MAKUAKE(マクアケ)」による限定販売(応援購入)によるものです。 このようなクラウドファウンディングでは、今回の製品のようなチャレンジングな商品を、ユーザーの反応を探りながら製品化の道を探るような使われ方がされるようになってきています。 当初の予定数がわずか数時間で完売となり、クラウドファンディングは大成功。第一ステップはクリアです。現在「一般販売を前向きに検討している」フェーズだそうです。 光学製品は息の長い商品です。ビジネスとして持続的に成り立っていくためには、この後もさまざまなハードルをクリアしていかなくてはならないものと推測しますが、一般販売開始の朗報を心待ちにしたいと思います(*)。 (*)幸運にもMAKUAKEで入手できる方は、製品を周囲に見せびらかし、「買い逃した!」と残念な思いをしている方々は、ぜひ「こんな面白い製品が出るかも知れないよ!」というプロパガンダをよろしくお願いいたします^^ 筆者は業務用?も兼ねて単眼鏡を狙っております^^ まとめ・ユーザーの心に響く製品とは いかがでしたか? 斬新なアイデアとギミックが凝縮された2つの製品。双眼鏡・単眼鏡という、もう「涸れた」はずだった光学製品が、PENTAXの手によって新たな世界を切り拓きました。それを実現した原動力は「こんなものが欲しかった」という「開発者の想い」と、それを高いレベルで実現する「光学製品を作る力」だと感じました。 高度成長期から21世紀初頭にかけて、世界をリードした日本の「物づくり」が大きな曲がり角を過ぎて、すでに長い時間が経過しています。世界の工場の役割はとうに大陸に移ってしまっています。 しかし、ユーザーの心に響く製品を生み出すのは、企画・開発・製造・販売までのすべてを含めた総合的な「プロデュース力」であることは今も昔も変わりません。企業規模が大きくて市場シェアが高いことも、もっといえば工場を国内に持つことも、必要条件でも十分条件でもないのです。 PENTAXというブランドが、リコーイメージングという企業が、熱いファンたちに強く支持されている理由をはっきり形としてあらためて示した。それがこの「Vシリーズ」の2つの製品ではないでしょうか。 とにかく、この製品は手に取ってみて面白い、覗いてみて楽しい、ぜひ自分の物にしていろんなことに使ってみたくなる。そんな心躍る製品でした! 本記事はリコーイメージング株式会社様に取材協力いただき、天文リフレクション編集部が独自の費用と責任で企画・制作したものです。文責は全て天文リフレクションズ編集部にあります。 本記事で使用したVシリーズ双眼鏡・単眼鏡はクラウドファンディングMAKUAKEで限定販売される製品です。一般販売される製品とは外観・仕様が異なる可能性があります。 本記事の商品画像は試作品のものです。 記事に関するご質問・お問い合わせなどは天文リフレクションズ編集部宛にお願いいたします。 本記事は極力客観的に実視をもとに作成していますが、本記事によって発生した読者様の事象についてはその一切について責任を負いかねますことをご了承ください。 文中の商品名・会社名は各社の商標および登録商標です。 機材の価格・仕様は執筆時(2020年3月)のものです。 特に注記のない画像は編集部で撮影したものです。編集部発信のオリジナルコンテンツ