星景写真の可能性(2)LLL:低照度景観照明

Low Level Landscape Lighting(以下、LLLと表記します)という言葉をお聞きになったことはあるでしょうか。一言でいって、とても弱い光で近距離・中距離の景色を照らすことによって星と風景を撮影する手法です。

lowlevellighting.org

(訳・文字色:編集部)
Low Level Landscape Lighting (LLLL:低照度景観照明)、または略称 Low Level Lighting (LLL:低照度照明)とは、星景写真における地上風景のライティング技術です。
LLLは、Light Painting(ライトペインティング)と比較して、より均一でコントロールしやすく、照明自体が光害の源になりにくい特徴があります。
LLLでは、主として三脚やライトスタンドに設置された低照度のLEDライトパネルが使用されます。

(原文)Low Level Landscape Lighting (LLLL), or the abbreviated name Low Level Lighting (LLL), is a method of lighting the landscape for Landscape Astrophotography that is more uniform and controllable and has less light pollution than light painting. It uses constant dim light, typically from from LED light panels mounted on tripods or light stands.

出典元であるlowlevellighting.orgは英文ですが、Google翻訳レベルでもだいたいの内容は理解できるので、興味のある方は原文をご覧になってください。

lowlevellighting.orgでは、「LLL以前の技術であるLight Paintingとの違いを明確にするために2016年に星景写真家のグループから提案された」とありますが、Light Paintingについて若干補足します。下の絵が直感的ですね。要するに光の塗り絵です。

lowlevellighting.orgAdvantages of LLL over Light Painting
(訳・文字色:編集部)
非均質の照明方法であるLight Paintingは、撮影の度に結果が異なってくるという重大な制限があります。このため「本来あるべき姿」を得るためには何度も試行しなくてはならないかもしれません。逆に写真家は(「本来あるべき姿」から離れて)照明の仕方を自分のスタイルにしたいと思うかもしれません。また、より照度の高い照明を使用するため眼の暗順応を妨げるという問題があります。LLLでは、通常ごく弱い一定の照明を撮影現場に常時点灯することになります。LLLのメリットには、1枚の写真の中でも、複数枚の撮影シーケンスの中でも、常に一定条件の照明とすることができることがあります。Light Paintingのように、「どのくらい光を当てればいいのか」と撮影のたびに考える必要はなくなります。また、一度現場に照明を設置すれば、それを複数の撮影者で共有することができ、撮影者それぞれが毎回Light Paintingしなくてもよくなります。LLLでは、暗順応するまで見えないくらいの弱い光を使うため、ほんのわずかしか光害源にならないことも大きなメリットです。照明をしていてもあなたは夜空の驚異を楽しむことができるのです。
LLLでは、hと同じレベルの明るさになるように照明するということを覚えていてください。(原文)
Light Painting has significant limitations in lighting landscape at night including variation in light from photo to photo, non-uniform illumination, and significant limitation of your night vision or dark adaptation. It may also require multiple attempts to “get it right”, and each photographer may want to do their on style of light painting. LLL uses constant faint lighting throughout the exposure. Once it is set up it is left on. Advantages of LLL include consistent lighting from photo to photo, much more uniform lighting within a photo, and much better preservation of your night vision. It does not need to be adjusted from photo to photo, and there is no guessing of how long to shine a light on a subject as in light painting. A single lighting setup will serve multiple photographers and eliminates the need for numerous individual episodes of individual light painting. A major advantage is that it creates little or no visible light pollution. You cannot even see the light until your eyes become dark adapted, and then you can barely see it. You can still enjoy the wonders of the night sky. Remember, LLL attempts to match starlight in intensity.

LLLのLighnt Paintingに対する優位性の説明。

この説明に100%同意する人は少ないでしょう。「A single lighting setup will serve multiple photographers」って現実的なんですかね?俺はここにライト置きたいとか、てめえのライティングは糞だとか、何より「俺はそんなライトいらんのじゃ」ってケンカにならないんでしょうか??

 



lowlevellighting.org
Comparison Light Intensity between Natural Light and LLL
(自然光とLLLとの光強度の比較 )

(訳、表:編集部作成)
Low Level Lightningでは、約0.008ルクスの明るさで対象物を照らします。これは、星明かりだけよりも少し明るいが、30度の高さの半月よりは暗い灯りです。

太陽の光度角(°) 明るさ(ルクス) 相当する時間帯
90 129,000 正午
0 759 日没
-4 29.9 ブルーアワーの始め
-6 3.41 ブルーアワーの終わり
-12 0.00806 天文薄明始まり
(航海薄明終わり)
-18 0.000645 天文薄明終わり

天文薄明終了後の地上の対象物の明るさ

条件  明るさ
(ルクス)
 星の光+大気光を1とした場合の比
 星の光のみ  0.0002  0.1
 星の光+大気光  0.002  1.0
 半月(高度30°)  0.00958  4.79
 半月(高度45°)  0.01602  8.01
 半月(高度90°=天頂)  0.0267  13.35
 満月(高度30°)  0.09583  47.92
 満月(高度45°)  0.1602  80.1
 満月(高度90°=天頂)  0.267  122.50

(原文)The measurement of light falling on the earth from the overhead Sun (90º) is 129,000 Lux. At sunset this drops to 759 Lux. During the “Blue Hour” (-4.0 to -6.0º) the landscape is receiving between 29.9 and 3.41 Lux (the start of the Nautical Twilight). At the start of the Astronomical Twilight (-12.0º) the illumination from the Sun on the earth’s landscape drops to 0.00806 Lux. At the start of the Astronomical Dusk (-18.0º), illumination from the sun drops to 0.000645 Lux!
What does all this mean in comparison to the intensity of Low Level Landscape Lighting?

Low Level Lighting adds about 0.008 lux surface illumination. This is slightly more than starlight alone and less than a quarter moon at 30 degrees elevation.

LLLで使用する照明がどのくらいの明るさになるかの資料。

LLLでは、高度30°の半月より少し暗い程度の明るさになるように地上を照らす、とあります。
これは星明かり+大気光の場合の約5倍

「高度30度の半月」は直視すると眩しいほどの明るさですが、それに照らされた地上は意外にも暗く、暗夜と比べて2EV強しか違いません。編集部で過去に撮影した画像を調べてみたのですが、確かにそれくらいの違いのようです。

それでも、対象物から照明を見えれば「高度30°の半月」分の光量があるわけですから、それなりの明るさには見えるはずです。

半月は約-10等級。ざっくりいって最大光輝の金星100個分です。LEDが10×10並んだライトパネルの1個のLEDが金星ほどに見える状態ですから、そんなレベルの灯りを現場で灯したら非難囂々ですね・・
(先日編集子が遠征のとき、隣で撮影されている方の機材のLEDが木星くらい明るくてけっこう気になったのでお願いして消していただいたくらいなのですが・・)

「暗順応するまで気がつかないほど暗い」というのは、光源ではなくて、照らされた対象のことを言っているのでしょう。

lowlevellighting.org
Comparison of LLL to Natural Lighting by Starlight
(自然の星明かりとLLLとの比較 )

訳、要約・編集部)
1)1枚撮り。空は適正露出だが地上は露出不足。

2)地上が適正露出になるように4倍露光した画像をPSのレイヤー等でブレンドしたもの。多くの人に受け入れやすい”自然”な方法だが、星明かりは全方向から回り込むため、曇天の風景写真のようにフラットになってしまう。

3)LLL使用の1枚撮り。ライトを工夫して配置することでディテールの質感がよりよく出ている。この方法では空と風景を同時に撮影することが可能。

原文)
1) A single 25 sec exposure @ f/2.8, ISO 6400. This is properly exposed for the sky, but the foreground is underexposed.

2) A 100 sec exposure (4X the sky exposure) the to increase foreground detail, blended (via Photoshop layers) with the previous exposure of the sky. This is the “natural” method preferred by many, but because starlight comes from overhead and all around, it is like photographing with an overcast day (very flat, with little character).

3) A single exposure @ f/2.8, 25 sec, ISO 6400, with LLL lighting strategically placed. Additional detail and texture in the landscape are demonstrated. This method can properly expose the sky and landscape at the same time.

星明かりだけでも4倍露出してレイヤー合成すれば地上も適正露出で撮れるが、星明かりの風景は曇天の風景のように眠い、LLLだともっと気の利いたライティングができるよ、という主張です。

Into The Night Photography

LLLの先駆者、 のブログから。
「with LLL lighting strategically placed」の例。

Into The Night Photography

岩山に空いた大きな穴に、細いロープでランタンを垂らしています。ここまでやるかねー。
これは見事な変態っぷりです。


いかがでしょうか。
おそらく、今回ご紹介した内容は日本では多くの人に受け入れられないものと思います。紹介したページには「星明かりのレベルで照らすんだよ」としつこく書かれていますが、「つい明るすぎる照射をしてしまう」ことが頻発することでしょう。星明かりのレベルであっても光源はそんなにも暗くないですし。

星と大気光しかないような砂漠ならともかく、ただでさえ光害にあふれた日本では、「光害なみ、またはそれ以上」の強い灯りで照らさないとそもそも意味がありません。

今回、編集部では「世界では(たぶん日本でも)こういう考え方で作品を創っている」人もいるという意味でご紹介しました。この手法を否定するものでも、肯定するものでもありませんが、「日本ではあまりやらないほうがよいのでは」と思ってしまいます。

でも、誰もいない真っ暗なフィールドでなら、この手法を試してみたくなる誘惑にもかられますね^^;
創作は本来自由なもの。人に迷惑をかけない範囲なら(これはこれで難しい問題なのですが)・・・

一般論としていうと、「異端」の闖入は逆に「正統」をより強固にします。LLLのような「ライティング重視」の考え方は、月明かりや薄明さらには光害のような「自然光」を生かした撮影手法をより洗練する可能性もあります。

というわけで、結論は保留していますが、実践はくれぐれも他の撮影者の迷惑にならないように、自己責任でお願いします。
また、LLLをやっている撮影者を見かけたら、石を投げる前にまず話しかけましょう^^;


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