【結果報告】目指せみんなで総露出100時間!2020ディープスカイ共同撮影プロジェクト
みなさんこんにちは!
今年もやりました!天リフで募集した「目指せ、みんなで100時間!!」プロジェクト。昨年を越える、全国から17作品、計65時間分の撮影画像が集まりました。編集部で位置合わせしてコンポジットした最終結果をご報告したいと思います。
結論を一言で言うと、今年も「大 正 義 露 出 時 間 !」です!!
※2021/3/22追記
初出時に元画像等のサーバーリンクが各所間違っておりました。現在は修正しています。ご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。
目次
最終リザルト
では早速ですが、最終リザルト画像を見ていきましょう。
135mmコース・オリオン座の下半身
まずは135mmコースのお題。8名の方の総露出39.5時間の画像のコンポジットです。1作品だけ「Commet-BPフィルター」を使用していますが、他はすべてブロードバンドです。
「魔女の横顔」をはじめ、さまざまな色の分子雲が画面いっぱいに。まだまだ強調できそうなくらいのノイズレベルです。この処理例は8枚の画像を単純に(同じ比率で)加算平均、オリオン大星雲だけは455mmで撮影した拡大画像を輝度マスクで重ねました。その結果にトーンカーブ・再度強調をかけ、Topaz DenoiseAIをかけて、明るさの最小値0.2pxを1回かけています。
等倍画像はこちらから。
https://reflexions.jp/test/min100h2021/135mm.jpg
ZIPファイル(400MB。でかいです。)
https://reflexions.jp/test/min100h2021/135mm.zip
400mmコース・魔女の横顔
次は400mmコース。800mmコースの応募は2名しかなかったため、400mmコースの画像とまとめてコンポジットしました。あしからずご了承下さい!m(_ _)m。
光学系の違いによる星像径の差が大きかったため、ディテールの描出という意味では135mmコースほどではありませんでしたが、それでも淡い魔女の横顔の姿がこんなにも明瞭に出てきました。筆者の画像処理が下手くそで申し訳ありません^^;;; ぜひ元画像をDLして、いろいろ処理してみてください!
等倍画像はこちらから。
https://reflexions.jp/test/min100h2021/400mm.jpg
ZIPファイル(460MB。でかいです。)
https://reflexions.jp/test/min100h2021/400mm.zip
処理概要
昨年の#みん100プロジェクトでは、画像の位置合わせをPSのパペットワープで行っていました。今年も最初はそれで始めたのですが・・・あまりの大変さに断念。
そこで、急遽PixInsightを導入し、StarAlignment機能を使用することにしました。
PIのStarAlignmentは非常に優秀で、単純な射影変換(Projective Transformation)だけでなく、星を検出してストレッチして変換(Thin Plate Splines)することも可能です。今回のような異なる光学系による画像をコンポジットするには最適なツールです。
筆者はPIは全く初めてだったのですが、TwitterのPI勢の助力もあり、なんとか処理を行うことができました。厚く御礼申し上げます^^
ちなみに、今回得られたStarAlignmentの知見を箇条書きにしておきます。
- 画像の拡大率や構図が大きく異なる場合は合わせられないことがあるが、あらかじめざっくり位置合わせをして下処理すると成功することもあった。
- Projective Transformationの方が成功率が高いが、特に短焦点の場合は周辺は合わないことが多い。
- Thin Plate Splinesの方が位置合わせ精度が高い。特にDistortion CorrectionをONにするとほぼ完璧に合う。(ただし歪みが大きい場合は位置合わせそのものに失敗することもある)
- 星像径が大きな画像やノイズの多い画像の場合は星像検出に失敗することがある(コンソールにメッセージが出る)。その場合はStarDetectionのパラメータ(Detection Scales、Noise Scalesなど)を調整するとうまくいく場合があった。
- いきなりThin Plate Splinesすると位置合わせに失敗する画像でも、Projective Transformationでだいたい合わせてからThin Plate Splinesすると成功する場合があった。
- Thin Plate Splinesが失敗する場合、StarMatchingのRANSAC Toleranceを大きくすると成功する場合があった。ただし全くあさっての結果になることもある。
- Thin Plate Splinesでも周辺が合わない場合、もう一度Thin Plate Splinesすると精度が上がる場合があった。
PixInsightすげえ。オンラインドキュメントを見ると実にさまざまな位置合わせアルゴリズムとパラメータが実装されているようです。今回は最終的に2つの画像でPIの位置合わせが全く成功せず、2つの画像では周辺がずれてパペットワープのお世話になりましたが、うまく使えば全部合わせられるのかもしれません。そのへんは今後、探求していきたいと思います。
そうなんです!
パペットワープはドライアイの進行を進めます、。— タカsi (@astrotakac) March 19, 2021
いずれにせよ、パペットワープでドライアイに苦しんでらっしゃる方は、230€でPIを導入すれば、StarAlignmentだけでも元が取れると力強く断言したいと思います^^
応募画像リスト
全応募画像と、位置合わせしてレイヤー化した*.psdファイルは以下からダウンロードできます。こちらのファイルはご自分でいろいろ処理してブログ等にアップしていただいて問題ありません。いろいろな方の画像を見るだけでも、天体写真画像処理の腕前が2dbほどアップすることでしょう^^ライセンス形態はクリエイティブ・コモンズの「CC BY-SA」とします(*)。 画像中にこの記事のURLと「#みん100プロジェクト」の文字を入れるようにお願いします。
(*)「作品を複製、頒布、展示、実演を行うにあたり、著作権者の表示を要求し、作品を改変・変形・加工してできた作品についても、元になった作品と同じライセンスを継承させた上で頒布を認める」
ZIPファイル
https://reflexions.jp/test/min100h2021/400mm.zip
ZIPファイル
https://reflexions.jp/test/min100h2021/135mm.zip
応募画像の詳細データ(簡易版)。フル版は以下の*.xlsファイルを参照ください。
今後の課題とアクション
リニア画像をコンポジットするのも面白いかも
PIの導入で面倒な位置合わせを相当に低減できることが判明した今、次回は「(かぶり補正まで行った)リニア画像を募集し編集部で位置合わせを行い、その先の画像処理を有志でいろいろやってみる」というコースも追加しようと思います。最終リザルトのjpegを単純加算平均するのとどのくらい結果が違うのかをぜひ見てみたいものですね。
星像径(FWHM)でレギュレーションを分ける?
個々のノイズの多寡は多くの画像をコンポジットすることでリニアに改善していきますが、星像径(秒角ベース)が大きく異なる場合はどうしても星像径の大きな画像に引きずられる傾向があるようです。
よりベターなリザルトを得るのであれば、元画像の星像径はバラツキが少ない方が良いでしょう。ただし、実際に応募のレギュレーションにするには運用上も難しそうなので、次々回以降の課題としたいと思います。
モザイク
今回の135mmコースの結果を見て、「オリオン座の全体を見てみたい!」と強く思いました^^
次回はモザイク前提のコース設定もやってみたいですね。少なくとも来年冬のお題には「オリオン座上半身」を入れてみようと思います。再来年はオリオン座右のエリダヌスバブルも・・・
まとめ
いかがでしたか?
「露出時間は長いほどよい」。今年も「大 正 義 露 出 時 間 !」をひしと感じる結果になりました。位置合わせも楽になったことですので、夏〜秋の課題設定と作品募集を近いうちに行いたいと思います。
昨年のまとめでも書きましたが、共同撮影の目指すところは「限られた時間の中でいかに満足度を最大にする」、一人でできないことを「協力」によって実現することです。今回のプロジェクトにご参加いただいた方々に心から御礼を申し上げます。ありがとうございました!!
次回もみんなでたっぷり露光して、ねちねち画像処理して楽しみましょう!
こちらは昨年のリザルトです。
https://reflexions.jp/tenref/orig/2021/03/21/12391/https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2021/03/eb272efa8a7f10a1238d9ba5c2f5a04c-1024x538.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2021/03/eb272efa8a7f10a1238d9ba5c2f5a04c-150x150.jpg天体写真みなさんこんにちは! 今年もやりました!天リフで募集した「目指せ、みんなで100時間!!」プロジェクト。昨年を越える、全国から17作品、計65時間分の撮影画像が集まりました。編集部で位置合わせしてコンポジットした最終結果をご報告したいと思います。 結論を一言で言うと、今年も「大 正 義 露 出 時 間 !」です!! ※2021/3/22追記 初出時に元画像等のサーバーリンクが各所間違っておりました。現在は修正しています。ご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。 https://reflexions.jp/tenref/orig/2020/11/23/12083/ 最終リザルト では早速ですが、最終リザルト画像を見ていきましょう。 135mmコース・オリオン座の下半身 まずは135mmコースのお題。8名の方の総露出39.5時間の画像のコンポジットです。1作品だけ「Commet-BPフィルター」を使用していますが、他はすべてブロードバンドです。 「魔女の横顔」をはじめ、さまざまな色の分子雲が画面いっぱいに。まだまだ強調できそうなくらいのノイズレベルです。この処理例は8枚の画像を単純に(同じ比率で)加算平均、オリオン大星雲だけは455mmで撮影した拡大画像を輝度マスクで重ねました。その結果にトーンカーブ・再度強調をかけ、Topaz DenoiseAIをかけて、明るさの最小値0.2pxを1回かけています。 等倍画像はこちらから。 https://reflexions.jp/test/min100h2021/135mm.jpg ZIPファイル(400MB。でかいです。) https://reflexions.jp/test/min100h2021/135mm.zip 400mmコース・魔女の横顔 次は400mmコース。800mmコースの応募は2名しかなかったため、400mmコースの画像とまとめてコンポジットしました。あしからずご了承下さい!m(_ _)m。 光学系の違いによる星像径の差が大きかったため、ディテールの描出という意味では135mmコースほどではありませんでしたが、それでも淡い魔女の横顔の姿がこんなにも明瞭に出てきました。筆者の画像処理が下手くそで申し訳ありません^^;;; ぜひ元画像をDLして、いろいろ処理してみてください! 等倍画像はこちらから。 https://reflexions.jp/test/min100h2021/400mm.jpg ZIPファイル(460MB。でかいです。) https://reflexions.jp/test/min100h2021/400mm.zip 処理概要 昨年の#みん100プロジェクトでは、画像の位置合わせをPSのパペットワープで行っていました。今年も最初はそれで始めたのですが・・・あまりの大変さに断念。 そこで、急遽PixInsightを導入し、StarAlignment機能を使用することにしました。 PIのStarAlignmentは非常に優秀で、単純な射影変換(Projective Transformation)だけでなく、星を検出してストレッチして変換(Thin Plate Splines)することも可能です。今回のような異なる光学系による画像をコンポジットするには最適なツールです。 筆者はPIは全く初めてだったのですが、TwitterのPI勢の助力もあり、なんとか処理を行うことができました。厚く御礼申し上げます^^ ちなみに、今回得られたStarAlignmentの知見を箇条書きにしておきます。 画像の拡大率や構図が大きく異なる場合は合わせられないことがあるが、あらかじめざっくり位置合わせをして下処理すると成功することもあった。 Projective Transformationの方が成功率が高いが、特に短焦点の場合は周辺は合わないことが多い。 Thin Plate Splinesの方が位置合わせ精度が高い。特にDistortion CorrectionをONにするとほぼ完璧に合う。(ただし歪みが大きい場合は位置合わせそのものに失敗することもある) 星像径が大きな画像やノイズの多い画像の場合は星像検出に失敗することがある(コンソールにメッセージが出る)。その場合はStarDetectionのパラメータ(Detection Scales、Noise Scalesなど)を調整するとうまくいく場合があった。 いきなりThin Plate Splinesすると位置合わせに失敗する画像でも、Projective Transformationでだいたい合わせてからThin Plate Splinesすると成功する場合があった。 Thin Plate Splinesが失敗する場合、StarMatchingのRANSAC Toleranceを大きくすると成功する場合があった。ただし全くあさっての結果になることもある。 Thin Plate Splinesでも周辺が合わない場合、もう一度Thin Plate Splinesすると精度が上がる場合があった。 PixInsightすげえ。オンラインドキュメントを見ると実にさまざまな位置合わせアルゴリズムとパラメータが実装されているようです。今回は最終的に2つの画像でPIの位置合わせが全く成功せず、2つの画像では周辺がずれてパペットワープのお世話になりましたが、うまく使えば全部合わせられるのかもしれません。そのへんは今後、探求していきたいと思います。 https://twitter.com/astrotakac/status/1372700524269641731 いずれにせよ、パペットワープでドライアイに苦しんでらっしゃる方は、230€でPIを導入すれば、StarAlignmentだけでも元が取れると力強く断言したいと思います^^ 応募画像リスト 全応募画像と、位置合わせしてレイヤー化した*.psdファイルは以下からダウンロードできます。こちらのファイルはご自分でいろいろ処理してブログ等にアップしていただいて問題ありません。いろいろな方の画像を見るだけでも、天体写真画像処理の腕前が2dbほどアップすることでしょう^^ライセンス形態はクリエイティブ・コモンズの「CC BY-SA」とします(*)。 画像中にこの記事のURLと「#みん100プロジェクト」の文字を入れるようにお願いします。 (*)「作品を複製、頒布、展示、実演を行うにあたり、著作権者の表示を要求し、作品を改変・変形・加工してできた作品についても、元になった作品と同じライセンスを継承させた上で頒布を認める」 ZIPファイル https://reflexions.jp/test/min100h2021/400mm.zip ZIPファイル https://reflexions.jp/test/min100h2021/135mm.zip 応募画像の詳細データ(簡易版)。フル版は以下の*.xlsファイルを参照ください。 応募画像リスト(xls形式) 今後の課題とアクション リニア画像をコンポジットするのも面白いかも PIの導入で面倒な位置合わせを相当に低減できることが判明した今、次回は「(かぶり補正まで行った)リニア画像を募集し編集部で位置合わせを行い、その先の画像処理を有志でいろいろやってみる」というコースも追加しようと思います。最終リザルトのjpegを単純加算平均するのとどのくらい結果が違うのかをぜひ見てみたいものですね。 星像径(FWHM)でレギュレーションを分ける? 個々のノイズの多寡は多くの画像をコンポジットすることでリニアに改善していきますが、星像径(秒角ベース)が大きく異なる場合はどうしても星像径の大きな画像に引きずられる傾向があるようです。 よりベターなリザルトを得るのであれば、元画像の星像径はバラツキが少ない方が良いでしょう。ただし、実際に応募のレギュレーションにするには運用上も難しそうなので、次々回以降の課題としたいと思います。 モザイク 今回の135mmコースの結果を見て、「オリオン座の全体を見てみたい!」と強く思いました^^ 次回はモザイク前提のコース設定もやってみたいですね。少なくとも来年冬のお題には「オリオン座上半身」を入れてみようと思います。再来年はオリオン座右のエリダヌスバブルも・・・ まとめ いかがでしたか? 「露出時間は長いほどよい」。今年も「大 正 義 露 出 時 間 !」をひしと感じる結果になりました。位置合わせも楽になったことですので、夏〜秋の課題設定と作品募集を近いうちに行いたいと思います。 昨年のまとめでも書きましたが、共同撮影の目指すところは「限られた時間の中でいかに満足度を最大にする」、一人でできないことを「協力」によって実現することです。今回のプロジェクトにご参加いただいた方々に心から御礼を申し上げます。ありがとうございました!! 次回もみんなでたっぷり露光して、ねちねち画像処理して楽しみましょう! こちらは昨年のリザルトです。 https://reflexions.jp/tenref/orig/2020/01/14/10005/ 編集部山口 千宗kojiro7inukai@gmail.comAdministrator天文リフレクションズ編集長です。天リフOriginal
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