【誌上CP+2020・短期集中連載(2)】ビクセン編・ポラリエUからセレストロンまで、出展予定(だった)商品総まくり
みなさんこんにちは!
CP+2020中止残念企画、第二弾はビクセン編。国内最大の天体望遠鏡メーカー、ビクセン。毎年興味深い新商品が「参考出品」されるのが恒例ですが、今年はどうだったのでしょうか!?昨年末にはセレストロン社との販売総代理店契約締結のニュースもあり、その動向も大いに気になるところでした。2月26日に東所沢のビクセン本社を訪問し、いろいろなお話を伺ってきました。以下、そのレポートです!
CP+2020出展予定(だった)商品の数々
ポラリエU
発売中のポラリエU。前モデルより軽量化して搭載重量はアップ。タイムラプスの「モーション・ストップ・モーション」機能も搭載。筆者は「軽量」ポータブル赤道儀のほぼ完成形ではないかと感じています。
ポラリエUでは、架頭部に35mm間隔の2点止めでパーツが装着できるようになり、さらに柔軟性が増しました。極軸望遠鏡もステーで横付けする形になり、オートガイド端子も追加。全方位的に性能が向上した隙のない「ゼット」な仕様(*)になったといえるでしょう。
(*)「ゼット(Z)な仕様」は天リフの?造語です。次のバージョンが不要なくらい完成度が高まったという意味です。
本体だけを手に取ると、スカスカな感じがするほど軽くて、不安すら?感じるポラリエUなのですが、運用形態にしてカメラや鏡筒を載せると、実はとても剛性が高くて安定していることがわかります。この感覚は、ぜひ製品を実際に触れて、多くの人に感じて欲しかったところ。天文ショップや星祭りでぜひ体験してみてください!
3/5に「APフォトガイダー・望遠撮影キット」が発表されました。この製品は、従来パーツの組み合わせが必要だったポラリエを使用した望遠レンズによる撮影を、オールインワンで可能にするセット商品です。上の画像のカメラ・カメラレンズ以外の全てが含まれています。希望小売価格は税別196,000円、発売日は未定です。
ポラリエUのアプリがバージョンアップし、ファームウェアもアップデートしてます。
星景天体写真モードが追加され、ポラリエUとカメラをケーブルで繋ぐと、ポラリエUとカメラを同時に操作出来る様になります。ケーブルレリーズが無くてもスマホからカメラ操作が出来る様になりました。#ビクセン pic.twitter.com/rCwEHNwLpz— ビクセン 新妻和重 (@22kazu) March 3, 2020
ポラリエUの専用アプリがバージョンアップされ「星景・天体写真モード」が追加されました。このモードでは待機状態でも恒星時追尾されるため(「タイムラプスモード」では待機中は停止)、多数枚コンポジットの天体撮影のシャッター制御をポラリエに任せることができるようになります。
カメラとの接続ケーブルは間もなく各種発売されるとのこと。これは便利に使えそうです。
極軸微動雲台DX
予定では既に発売されているはずなのですが、コロナの影響で発売延期になっている「極軸微動雲台DX」。こちらもポタ赤用の極軸微動装置として「ゼット」な期待の製品。希望小売価格は税別25,000円です。
この製品の安定度は、昨年のCP+2019での参考出展で体感された方も多いことでしょう。発売される最終製品では、三脚に装着する底部が交換式になり、上の画像のカメラネジ仕様(1/4、3/8)のものと、45ΦのAP三脚やSX三脚に装着可能な「天体三脚用アダプタープレート」の両方が付属します。
架台側は標準はアルカスイス互換の「クイックリリースプレートホルダー」。35mm間隔M8仕様なので、他のアリガタなどのパーツに換装することも可能。L型のアルカスイス互換のアングルプレートも付属し、従来品の「星空雲台ポラリエ」にはこれを使用します。
R200SS専用ケース
R200SS鏡筒用のキャリングケース。ニュートン反射のR200SSは接眼部が飛び出しているため、なかなかスマートに収納できるケースがこれまでなかったのですが、「接眼部を上に向けてソフトケースに収納」「余った空間には小物を格納できるようにする」というコンセプトの製品。
収納状態では、バッグの上部側の幅が狭くなり、肩にかけやすい形状に。
ポケットにはファインダーやフリップミラー、ガイド鏡など、やや大きめのものも収納できそう。これはなかなか使いやすそうですね。なお、VC200Lも収納が可能だそうです。
天体観測用ライトSG-L02
ビクセンの「暗い・赤い」天体観測用ライトのニューバージョン。ビクセンの天体観測用ライトは従来製品(SG-L01)から、眼に優しい・星景写真撮影にも優しい、「赤と電球色」でしたが、この製品ではそれがさらに使いやすくなりました。
従来は「点灯時赤スタート」だったのですが、これが「電球色スタート」も可能に。赤メインだけでなく「電球色メイン」でも運用できます。明るさも「3〜42ルーメン」とより暗い範囲に広がり、電源もリチウムポリマー充電池で重量はたった29g(ストラップ含まず、本体のみ)。これは天文ファン待望の製品です。
本体をストラップから外せば、クリップでポケットや帽子に取り付けることも可能。ストラップも長短2種類。2本を繋げば首からぶら下げるのにも違和感なし(*)。
(*)個人の感想ですが、ヘッドランプ式の製品を首からぶら下げるのは、メガネがじゃまで脱着が億劫になるため、筆者はあまり好みませんでした。長いベルトならそれも解消されそう。
赤色ランプは激安品がたくさん出回っていますが、この製品はお値段なりの価値のしっかりある、天文ファンにとってほぼ全てのニーズを満たした「ゼットな」アイテムになるのではないでしょうか。
3/5に正式に発表されました。発売日未定となっていますが、「コロナ次第」の「間もなく」だそうです。希望小売価格は税別5,500円、据え置きです。
レンズヒーター360・後継製品
現在生産終了となっている「レンズヒーター360」の後継製品。前製品から発熱体がカーボンに変更され発熱量がアップ。USBのケーブルはカールコードになり、さらに使いやすく。
前製品同様、非常に柔らかい着脱が可能な「マイルドファスナー」素材を使用しているため、取り外しの際に「バリバリッ」と力をかける必要がなく、ピントリングを誤って回転させてしまうリスクも小さくなります。これ、ほんとに使いやすそうなんですよね・・強力なマジックテープだと簡単にビッチリひっついてしまって、ちょっとイライラすることもあるので。
前製品は希望小売価格税別1万円となかなかのお値段だったのですが、それは新バージョンでも変わらないでしょう。しかし、お値段なりの使いやすさを備えた製品です。
目幅49mm〜の双眼鏡・アトレックライトII BR8×30WP/BR6×30WP
参考出品。最小目幅「49mm」と、眼幅の小さな子供でも使用でき、500gと軽量の口径30mmポロ式双眼鏡です。全面マルチコート、窒素充填による防水仕様、外側のレンズに撥油コートなどのアウトドア仕様。倍率は6倍と8倍。
倍率6倍は見かけ視野45.5°、8倍は55.3°と控えめな広さですが、その分覗きやすく眼位置にも寛容。瞳径5mmの6倍タイプは星見にも好適。「子供でも使える」というコンセプトをキレイに実現した製品だと感じました。価格はポロ式ということもあって、スペックの割には手頃な価格になるようです。
EDガラス使用の高級小型ダハ双眼鏡・hoop H8×25WP
口径25mm8倍のコンパクトなダハ式双眼鏡。EDレンズ使用(*)。位相差コート、ビクセン最高レベルの低反射率の「フラットマルチコーティング」、プリズムの反射率を高める高反射コート、窒素充填の防水仕様など、このクラスではかなり高級仕様の双眼鏡です。シルバーと円を基調にした、斬新でシンプルなデザイン。
口径25mmの8倍は、星空を楽しむには若干高倍率寄りですが、スポーツ観戦やコンサートなどでは、コンパクトさとシャレたテイストが生きるでしょう^^ 「小型の高級ダハ」というマーケットを開拓できるか注目です。
3/5に正式に発表されました。希望小売価格は税別29,000円、発売日は未定となっています。
スマホで導入サポート・小型経緯台
セレストロン社との総代理店契約の締結にともなって、入門向けのラインナップも強化される形に。この製品は海外では既に販売中の製品ですが、スマホを使用することで導入を「支援」するコンセプト。架台は手動で動かすのですが、スマホのカメラで望遠鏡の向きを判断し導入支援を行うしくみ。
小型の自動導入経緯台
低価格の自動導入経緯台、「ASTRO Fi」シリーズ。スマホとWiFi接続し自動導入が可能になります。こちらも海外では販売中の製品です。入門者向けに量販店ルートにも出てくる製品となるのでしょうか。
面白いのは、鏡筒のキャップがスマホ撮影アダプターを兼ねていること。ゴムバンドでスマホを貼り付けて、反対側のリングを接眼レンズにはめ込むようになっています。
架台のアームはセレストロンらしく?大きめですが、よりスマートな流線型に^^ 赤く点灯したWiFiマークはスマホとの接続状態のインジケーターになっていて、正常に接続すると点灯状態になります。
三脚のプレートも現代的。アイピースを差し込む穴に加えて、ゴムシートを貼り付けた「スマホ置き」になっています。アメリカ人もなかなかやりますねえ^^
C90とモバイルポルタ
こちらは既存製品の組み合わせですが、モバイルポルタにセレストロンC90を搭載したところ。重量機材を載せてしまうと若干ブレが気になるモバイルポルタですが、短くて軽い鏡筒なら持ち前のコンパクトさが大いに生きてきます。
セレストロン・ツイストロック式天頂ミラー
セレストロン製、脱着しやすい「ツイストロック式」の2インチ天頂ミラー。半回転も回さずにしっかり装着が可能。安定した装着・素早い脱着の点で「ツイストロック式」に勝るものはありません。こういう細かな使い勝手を追求した製品がもっと増えてほしいものですね。
セレストロン顕微鏡
セレストロンブランドの顕微鏡。デジタル専用で液晶モニターで観察します。どのような形で市場に投入されるかは未定だそうですが、セレストロンは天体望遠鏡だけではないとの認識を新たにしました。
見ることができなかった製品
フィルター変換リング
参考出品、ビクセンの「カメラアダプタ変換リング」。直焦ワイドアダプタ内に52mmフィルターが装着可能に。 pic.twitter.com/uzlefQwIBV
— 天リフ編集部 (@tenmonReflexion) February 28, 2019
昨年のCP+2019で参考出品された、直焦ワイドアダプター内に52mm径のフィルターを装着可能にするリングですが、こちらについては今回は発表の予定はなかったようです。開発中止との話もありませんでしたので時間の問題で進捗中なのかと推測しますが、新しい情報が入った時点で追記したいと思います。
エクスプローラー・サイエンティフィック製品
エクスプローラー・サイエンティフィック社製「AR102 Air-Spaced Doublet Refractor」鏡筒を2020年3月5日(木)に発売
https://www.vixen.co.jp/post/200305a-2/
昨年末に発表されたエクスプローラー・サイエンティフィック(ES)社との総代理店契約締結ですが、3月5日にAR102鏡筒が発売になりました。価格はオープン価格ですが、ビクセンオンラインストアでは税込75,900円となっています。
他の2本の鏡筒については上記リリースでは「発売時期と価格は未定」となっています。ES社のHPによると、ED102とED80はHOYAの硝材「FCD-100」を3枚玉の真ん中に1枚使用したアポクロマート。FCD-100は蛍石と類似の特性を持ち、オハラでいえばFPL-53に相当します。こちらも正式発表が楽しみですね!
セレストロン製品の今後
昨年12月に米国セレストロン社との総代理店契約の締結を発表したビクセン。コロナの影響もあってか、セレストロン製品の販売の詳細は記事作成時点では未発表です。CP+2020が開催されていたら、会場でも多くの質問がビクセン社に寄せられていたことでしょう。そこで天リフ編集部が読者を代表して?気になることを成相営業部長にぶつけてみました。
取扱商品ラインナップは?
以前と比べて取り扱い製品のラインナップはどうなるのか?日本の天文アマチュア的には、大口径のシュミカセはセレストロン社の製品が圧倒的に多く、気になるところです。
基本的には「(無理に)全部は扱わない」が「重要な製品は従来通り提供される」とのこと。たとえばシュミカセでいえば大型のC14やRASA14、Edge1400などを含めて、取り扱うことを検討中だそうです。
その取捨選択の基本になるのが「ユーザーの選択肢を増やす」という考え方だそうです。「基本的に両者の強みはかぶらないので、ビクセン製品とセレストロン製品のそれぞれの良さを合わせて、ユーザーのニーズに広く応えていきたい」とのことでした。
ユーザーの目線で見ると「VC200LとEdge800」「AP赤道儀とAVX赤道儀」「R200SSとC8N」など、ガチでかぶりそうな商品もあるのですが、望遠鏡ショップの店頭ではこれまでも両方並んで売られていたわけですから、それぞれの良さと使い分けが今後は「(販売店からだけでなく)ビクセンからも提案される」という理解でよいのでしょう。
成相さんのお話の中からは「リスタート(Re:Start)」という言葉がたびたび聞かれました。セレストロン社のHPを見ればわかるように、日本でのセレストロンの「売れ筋」商品は全ラインナップのごく一部。「セレストロン製品の価値を改めて日本のユーザーに知ってもらう」「20年前までセレストロンを扱ってきたビクセンという企業が、改めてセレストロン社の製品を取り扱う」。そんな意味での「リスタート」の意気込みを感じないわけにはいられませんでした。
サポート体制・検品体制
筆者も実はC8ユーザーなのですが、今後の製品のサポート体制はどうなるのでしょうか。
「これまで販売された製品は、販売時の販売元が引き続きサポートを継続する形になります」「ビクセンが販売した商品は、当然ですがビクセンがサポートします」とのことです。つまり、サイトロンジャパン社扱いで販売された製品は今後もサイトロンジャパンが保守や修理のサービスを行い、ビクセンは自社で販売した製品のみを対象とするとのことです(*)。
(*)ビクセン扱いを示すシールが保証書に貼付されるそうです。細かい話ですが、現在ショップの店頭にあるサイトロンジャパン扱いの製品と、新たに入荷するビクセン扱いの製品は、サポート先が別になることになります。
このあたりの関係はセレストロン本社を含めて擦り合っているとのことなので、大きな混乱はないものと推測します。天体望遠鏡は現代では珍しい、ライフサイクルの長い商品。ユーザーとしては、どんな形であれ安心して使い続けられる体制が、今後も維持されることを望むばかりです。
サポートだけでなく、検品体制もビクセン側で持つことになり、セレストロン社から入荷した製品はビクセン社でチェックされた後にデリバーされる形になるそうです。
気になる価格は
セレストロンの販売対象商品の詳細は本記事作成時点では未発表なのですが、価格はどうなるのでしょうか。「現時点ではまだ何とも申し上げられないのですが」と成相さん。「正式発表をお待ち下さい」うむむ。そうですよね、正式発表前ですから・・・近日中には発表されるでしょうから、それを楽しみに待ちたいと思います。
セレストロン製品、間もなく再始動!!ビクセンの技とセレストロンの最新テクノロジーが融合し、どんな天体観測が誕生するのか??こうご期待。#ビクセン #celestron #天体望遠鏡 pic.twitter.com/ki3z6Z4svt
— 株式会社ビクセン【公式】 (@vixen_japan) March 6, 2020
ビクセン公式Twitterの3/6のツイートから。正式発表は間もなくでしょうか。
輸入商品の内外価格差はこれまでもさまざまな形で存在し、議論の対象になってきたことです。筆者は単純な「輸入代理店は利益をボッている」という意見には与しません。輸入代理店は、自社でのサポートや保守体制を維持し、商品の情報を国内ユーザーに発信し、円滑な物流を担保する役割を担っています。ネットの時代、商品の海外価格は簡単に調べることができますし、商品によっては直接海外から購入・個人輸入することも可能です。その上で、販売代理店が設定した価格と提供するサービスの内容が妥当なのかどうかは、個々のユーザーの判断の総体として市場が判断することだと思います。
今後の動向を注視したいと思います。
まとめ
いかがでしたか?
CP+2020で見ることができなかった新たなビクセンの動向を、本記事で少しでもお伝えできていれば幸いです。今回はビクセンオリジナルの天体望遠鏡や赤道儀の参考出展がなかったことは残念でしたが、ユーザーのニーズと市場の動向に答える商品開発が着実に進んでいると感じました!
また、セレストロン商品の「リスタート」がどんな形に進んでいくかもおおいに注視したいと思います。コロナ関連でいろいろなことのスピードが落ちてしまっているのは残念ですが、それにめげず天文界を大いに盛り上げてほしいものですね!
- 本記事は株式会社ビクセン様に取材協力いただき、天文リフレクション編集部が独自の費用と責任で企画・制作したものです。文責は全て天文リフレクションズ編集部にあります。
- 本記事で紹介した商品はCP+2020で出展予定だったものですが、参考出品の製品も含まれます。公式に発表済みでない商品は、発売の有無・発売時期については未決定であることをお断りします。
- セレストロン社製品の販売の有無・開始時期・価格は3月5日現在、未定です。
- 公式に発表済みでない商品の画像・仕様は最終商品と異なる場合があります。
- 記事に関するご質問・お問い合わせなどは天文リフレクションズ編集部宛にお願いいたします。
- 本記事は極力客観的に実視をもとに作成していますが、本記事によって発生した読者様の事象についてはその一切について責任を負いかねますことをご了承ください。
- 文中の商品名・会社名は各社の商標および登録商標です。
- 記事中の価格・仕様は執筆時(2020年3月)のものです。
- 特に注記のない画像は編集部で撮影したものです。
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