天体写真とパソコン
オートガイダー、自動導入、CMOSカメラの制御・・・天体撮影ではパソコンを使用した撮影が一般的ですが、撮影地にパソコンを持ち込むのは色々と面倒。
ユーザーがこのことについてどう思っているのか、アンケートをしてみました。
ディープスカイの天体写真を撮影されている・今後したいと思っている方にお聞きします。天体撮影でのパソコン使用についてどうお考えですか?
— 天リフ編集部 (@tenmonReflexion) September 25, 2018
その結果、パソコン当然派・仕方なく使う派・使いたくない&使わない派で、きれいに3つに分かれました。
実はここでの「パソコン」というものが既にあいまいになっています。
いや、ちょっとまえまではいましたよw
SS-one autoguide はラズパイで立派にパソコンといえるものですが、彼は「パソコンを使わないシステム」として売ってる。そこに矛盾はあるようで、無い。
つまるところ、「ぱそこんの何が嫌なのか」を分析して解決してしまえば、元がパソコンでもPCレスでは。— HUQ (@HUQDOG) September 25, 2018
例えば、ASI AIRでも使用されている「ラズパイ(*)」はアーキテクチャはパソコンです。この指摘にあるように「PCレス」を求める人はPCの「何をレス」にしたいのかを明確にする必要がありそうです。
(*)ラズベリーパイ:PCの機能を1ボードにしてしまったアプライアンス機器用のパソコン
目次
パソコンの何がイヤか
「パソコンの何がイヤか」以下、編集子の経験上の私見です。ここでいう「パソコン」はノートPCを指します。
「台」が必要
パソコンを現場で使用する場合、適度な高さのある安定した台に置かなくてはなりません。地べたはもってのほか(操作が極めてやりにくい)。ちゃぶ台でも低すぎます。
編集子は観望用の高さ可変のイスを使用していますが、この荷物が増えるだけでもけっこうな負担。しかも人間の座る場所がないw
電源不足
最近のパソコンでは満充電すれば8時間くらい持つことにはなっていますが、冬期は夜も長く低温でバッテリー効率も落ちるため、追加の電源がどうしても必要。USB-Cならいいのですが、編集子のMacはACアダプタ経由になってしまい効率が良くありません。
ケーブルが這う
上の画像、いかにも雑なケーブル配置ですが、冬場はケーブルが固くなっていろいろと残念。まあこれは「パソコン」のせいではありませんが、有線接続は極小化したいものです。
モニターが明るすぎる
「世の中のパソコンは画面が明るすぎて星が見えなーーいっ!!(渡辺謙風)」Macの場合ご丁寧に背面も光るのがこれまた難点。
「世の中のパソコンは文字が小さすぎて見えなーーいっ!!(渡辺謙風)」というのもありますが、これは加齢のせいでパソコンとは関係ありませんね–;;
トラックパッド、マウスが使いにくい
寒い季節、夜露の降りたトラックパッドの操作性は最悪です。マウスを持ち込むと今度はマウスの台が必要になります。パソコンのUIはフィールドで使うことはほぼ想定されていません。
赤道儀の数だけパソコンが必要?
これ、編集子の場合は今後切実な問題に。赤道儀を複数展開する場合、パソコンがそれぞれに必要(なんですかね?やったことないのですが、ケーブル引っ張ってくればPHD2を2つ立ち上げて別々に制御できる?でも混乱しそう・・・)。
追記9/26)複数PHD起動は可能だそうです。でもケーブルが・・・
Windows Update
編集子の場合、フィールドでPCはネットワーク接続しないので問題ないのですが、ネットワークにつなぐとあの「Windows Update様」がお走りになります。想像しただけで寒気がします。
ちなみに編集子はマカーなので、Windowsを使うことに既に抵抗があるのですが、それは別の問題ということで。
解決方法は?
スターブックテン
協栄産業・ビクセン STAR BOOK TEN コントローラー(単体)
http://www.kyoei-tokyo.jp/shopdetail/000000005679/
よい製品があります。ビクセンの「スターブックテン」です。編集子は4年以上使っていますが、自動導入・オートガイド(*)までの用途であれば、ほぼ(というか大いに)満足しています。モニターはぎりぎりまで暗くできるし、キー操作は厚手の手袋をしていても無問題。太くて冬場には鉄棒のようになるシリアルケーブルは冴えませんが、ほぼ「イヤ」な点はないといえます。
(*)500mmくらいまでは無問題ですが、アナログカメラの解像度の関係で、1000mmオーバーになると短いガイド鏡では厳しくなってくるという情報もあります。外部のガイドカメラを使用する場合はこの問題はありません。
ただ、問題は拡張性がないこと。ビクセンの赤道儀専用なのは仕方ないとしても、オートガイドはアナログカメラのみの対応で、しかもこの拡張機能は生産終了。単体使用ではディザガイドもできません(*)。
(*)仕方ないので15分間隔でガイドエリアをほんの少しずらして手動ディザしています。
ステラショットのような撮影シーケンスの自動化もできないし、Plate solvingももちろんありません。
スターブックテンが無線対応して、機能拡張がもっと容易になればいいのですが・・
専用アプライアンス
SS-one AutoGuder Pro
http://ss-one.net/ssonedrive.html
「SS-one AutoGuiderPro」「ASI AIR」のような、天体撮影に必要な機能をオールインワンで統合した専用ハードウェア(中身は実はPCアーキテクチャですが)には、大いに期待しています。パソコンの「イヤ」な点はほぼ解決されることでしょう。
まだ使ったことがないので、これ以上のことは何も言えないのですが、いずれ使ってみたいと考えています。
このとき、「操作系」をスマホ・タブレットのような汎用のものを使用するのか、専用のものを使用するのか、どちらがいいのかはわかりません。汎用品を使用する方がコスト的にも基盤部分のアップデート・拡張に強いのは事実ですが、「良くできた専用デバイス」が成立する可能性も十分にある気がします。こればかりは、製品を使い込んでみないとわからないだろうと思っています。
ただし、自動導入のUIとしてSky Safariが広く使用されているように、クローズドな一体型システムであっても、他のメジャー製品との相互接続ができることは重要な要件かもしれませんね。(なんだかパソコン黎明期の話みたいですが)
まとまらないまとめ
編集子の経験不足・勉強不足な領域で、まとまらなくてすみません。
とにかく、2/3のユーザーが「パソコンを使った望遠鏡の操作」に不便・疑問を感じていることは事実。この課題を世の中のプロダクトがどうやって解決しようとしているかの動きをわかりやすく読者にお伝えすることは天リフの使命です。
しばらくの間、この課題にじっくり取り組む予定です。
https://reflexions.jp/tenref/orig/2018/09/26/6523/天体写真とパソコンhttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/09/IMG_0089-1024x683-1024x762.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/09/IMG_0089-1024x683-150x150.jpg天体写真オートガイダー、自動導入、CMOSカメラの制御・・・天体撮影ではパソコンを使用した撮影が一般的ですが、撮影地にパソコンを持ち込むのは色々と面倒。 ユーザーがこのことについてどう思っているのか、アンケートをしてみました。 https://twitter.com/tenmonReflexion/status/1044377938672533504 その結果、パソコン当然派・仕方なく使う派・使いたくない&使わない派で、きれいに3つに分かれました。 実はここでの「パソコン」というものが既にあいまいになっています。 https://twitter.com/HUQDOG/status/1044381905557184512 例えば、ASI AIRでも使用されている「ラズパイ(*)」はアーキテクチャはパソコンです。この指摘にあるように「PCレス」を求める人はPCの「何をレス」にしたいのかを明確にする必要がありそうです。 (*)ラズベリーパイ:PCの機能を1ボードにしてしまったアプライアンス機器用のパソコン パソコンの何がイヤか 「パソコンの何がイヤか」以下、編集子の経験上の私見です。ここでいう「パソコン」はノートPCを指します。 「台」が必要 パソコンを現場で使用する場合、適度な高さのある安定した台に置かなくてはなりません。地べたはもってのほか(操作が極めてやりにくい)。ちゃぶ台でも低すぎます。 編集子は観望用の高さ可変のイスを使用していますが、この荷物が増えるだけでもけっこうな負担。しかも人間の座る場所がないw 電源不足 最近のパソコンでは満充電すれば8時間くらい持つことにはなっていますが、冬期は夜も長く低温でバッテリー効率も落ちるため、追加の電源がどうしても必要。USB-Cならいいのですが、編集子のMacはACアダプタ経由になってしまい効率が良くありません。 ケーブルが這う 上の画像、いかにも雑なケーブル配置ですが、冬場はケーブルが固くなっていろいろと残念。まあこれは「パソコン」のせいではありませんが、有線接続は極小化したいものです。 モニターが明るすぎる 「世の中のパソコンは画面が明るすぎて星が見えなーーいっ!!(渡辺謙風)」Macの場合ご丁寧に背面も光るのがこれまた難点。 「世の中のパソコンは文字が小さすぎて見えなーーいっ!!(渡辺謙風)」というのもありますが、これは加齢のせいでパソコンとは関係ありませんね--;; トラックパッド、マウスが使いにくい 寒い季節、夜露の降りたトラックパッドの操作性は最悪です。マウスを持ち込むと今度はマウスの台が必要になります。パソコンのUIはフィールドで使うことはほぼ想定されていません。 赤道儀の数だけパソコンが必要? これ、編集子の場合は今後切実な問題に。赤道儀を複数展開する場合、パソコンがそれぞれに必要(なんですかね?やったことないのですが、ケーブル引っ張ってくればPHD2を2つ立ち上げて別々に制御できる?でも混乱しそう・・・)。 追記9/26)複数PHD起動は可能だそうです。でもケーブルが・・・ Windows Update 編集子の場合、フィールドでPCはネットワーク接続しないので問題ないのですが、ネットワークにつなぐとあの「Windows Update様」がお走りになります。想像しただけで寒気がします。 ちなみに編集子はマカーなので、Windowsを使うことに既に抵抗があるのですが、それは別の問題ということで。 解決方法は? スターブックテン 協栄産業・ビクセン STAR BOOK TEN コントローラー(単体) http://www.kyoei-tokyo.jp/shopdetail/000000005679/ よい製品があります。ビクセンの「スターブックテン」です。編集子は4年以上使っていますが、自動導入・オートガイド(*)までの用途であれば、ほぼ(というか大いに)満足しています。モニターはぎりぎりまで暗くできるし、キー操作は厚手の手袋をしていても無問題。太くて冬場には鉄棒のようになるシリアルケーブルは冴えませんが、ほぼ「イヤ」な点はないといえます。 (*)500mmくらいまでは無問題ですが、アナログカメラの解像度の関係で、1000mmオーバーになると短いガイド鏡では厳しくなってくるという情報もあります。外部のガイドカメラを使用する場合はこの問題はありません。 ただ、問題は拡張性がないこと。ビクセンの赤道儀専用なのは仕方ないとしても、オートガイドはアナログカメラのみの対応で、しかもこの拡張機能は生産終了。単体使用ではディザガイドもできません(*)。 (*)仕方ないので15分間隔でガイドエリアをほんの少しずらして手動ディザしています。 ステラショットのような撮影シーケンスの自動化もできないし、Plate solvingももちろんありません。 スターブックテンが無線対応して、機能拡張がもっと容易になればいいのですが・・ 専用アプライアンス SS-one AutoGuder Pro http://ss-one.net/ssonedrive.html 「SS-one AutoGuiderPro」「ASI AIR」のような、天体撮影に必要な機能をオールインワンで統合した専用ハードウェア(中身は実はPCアーキテクチャですが)には、大いに期待しています。パソコンの「イヤ」な点はほぼ解決されることでしょう。 まだ使ったことがないので、これ以上のことは何も言えないのですが、いずれ使ってみたいと考えています。 このとき、「操作系」をスマホ・タブレットのような汎用のものを使用するのか、専用のものを使用するのか、どちらがいいのかはわかりません。汎用品を使用する方がコスト的にも基盤部分のアップデート・拡張に強いのは事実ですが、「良くできた専用デバイス」が成立する可能性も十分にある気がします。こればかりは、製品を使い込んでみないとわからないだろうと思っています。 ただし、自動導入のUIとしてSky Safariが広く使用されているように、クローズドな一体型システムであっても、他のメジャー製品との相互接続ができることは重要な要件かもしれませんね。(なんだかパソコン黎明期の話みたいですが) まとまらないまとめ 編集子の経験不足・勉強不足な領域で、まとまらなくてすみません。 とにかく、2/3のユーザーが「パソコンを使った望遠鏡の操作」に不便・疑問を感じていることは事実。この課題を世の中のプロダクトがどうやって解決しようとしているかの動きをわかりやすく読者にお伝えすることは天リフの使命です。 しばらくの間、この課題にじっくり取り組む予定です。 編集部山口 千宗kojiro7inukai@gmail.comAdministrator天文リフレクションズ編集長です。天リフOriginal
コメントを残す