みなさんこんにちは!久しぶりの(なんと4年ぶり^^;;)の「実践・天体写真撮影記」です。この4年で天体写真界隈も「スマート望遠鏡」に「リモート天文台」、そして高感度高性能のスマホを使った星空撮影など、「重厚」と「お手軽」の両極端で大きな進歩がありました。
しかし!トラッドな?「遠征撮影」は永遠に不滅です。いろいろな機材を組み合わせて撮影システムをセットアップし、お天気とにらめっこしながら「遠征」に出かける。そしてじっくり天体を撮影しリザルトを仕上げる。ディープスカイ天体写真の魅力が全て詰まったそんな「遠征撮影」に出かけてきました!
天文ショップ・グラビティ
最初にお断りしておきますが、今回の記事は、天文ショップ・グラビティさんの案件記事であります。とはいえ、他の天リフ案件記事同様、読者様のメリットを最重視する姿勢には変わりありません。
小海星フェス2025、天文ショップグラビティ(Gravity Astro)のブース(右)。左はSkyRover 106MA鏡筒と店長の劉さん。
実はグラビティは昨年の小海星フェスに出展されていて、店長である劉さんとはお会いしていました。フラットパネルやUSBボックス、反射望遠鏡用の接眼部やスパイダーなど、かなりマニアックな商品を取り扱われている印象でした。
その後、今回の案件のお話しをいただき、直接会話したのですが、自らディープスカイ天体写真にガチに取り組まれていることと、そんなユーザーに向けて「尖った」良い製品を提供していきたいと考えていると伺いました。
グラビティも劉さんも、まだまだ歴史の浅い「若い」存在ですが、今後きっと天文業界に大きな足跡を残されていくことでしょう。そのお手伝いができることは光栄の限りであります^^
グラビティの店長、劉さん。こちらの動画でもその若々しいお姿を拝見できます^^
今回の主砲・SkyRover86MA鏡筒
EDレンズ2枚使用の4枚玉フラットフィールド・フォトビジュアル
https://gravity-astro.com/products/skyrover-86ma
今回使用した鏡筒「Sky Rover86MA」は、口径86mm焦点距離612mm、4枚玉屈折鏡筒です。レンズ構成図は公開されていませんが(*)、EDレンズを2枚使用したフラットフィールド。F値が7と大きめのため、眼視観望でも使いやすく良好な性能を発揮してくれることでしょう。グラビティでの販売価格は税込188,000円です。
(*)類似スペック・コンセプト(ED2枚のフラットフィールド・フォトビジュアル・F値7)の鏡筒にはAskar 80PHQ(口径80mmF7.5、ED2枚使用の4枚玉)があります。
レデューサー使用でF値は5.6に
https://gravity-astro.com/products/skyrover-86-106-126-ma-reducer
今回の撮影では、専用のx0.8レデューサーを使用しました。この構成での焦点距離は490mm、F値は5.6となります。少し長めではありますが、アストログラフとして不満のない明るさといえるでしょう。鏡筒側の接続はM63と余裕の大きさ。グラビティでの販売価格は45,000円です。
「四隅まで点像」フラッグシップクオリティ
レデューサー構成の場合のスポット図。スポット図から読み取れる星像径は15μmくらいでしょうか。周辺の星像の崩れもフルサイズ四隅でもほぼゼロで、設計性能は昨今の高性能アストログラフの水準を満たしていると言えるでしょう。実写でどうだったかは記事の中で詳細をご紹介しています。
メインカメラ・ToupTek ATR2600C
https://gravity-astro.com/products/atr2600c
メインカメラはカラータイプの冷却CMOSカメラ、ToupTek ATR2600Cです。センサーにはAPS-Cサイズのソニー製IMX571を採用。筆者の私見ですが、ディープスカイ天体写真界隈ではこのセンサーを使用したカメラが、ひとつの「到達点(*)」といえるのではないでしょうか。
(*)^^;; フルサイズのIMX455採用のカメラはかなりお値段が張ります(65万円前後)。価格の値ごろ感的には4/3のIMX294、1インチスクウェアのIMX533、1/1.2インチのIMX585も人気です。
スペック的には、16bitADコンバーター搭載・低読み出しノイズ・2段TEC冷却・USBハブ(2口)搭載など、「赤い」例のメーカーの製品と互角です。そしてお値段はグラビティ販売価格で219,800円。コスパは高いといえるでしょう。
特筆すべきこととして、保護ガラスを「クリアタイプ(ARコート)型」と、「UV/IRカット型」から選べることがあります。簡単にいうと、赤外線撮影(*1)を行わず、ブロードバンドRGBをメインに撮影するのなら「UV/IRカット型」がオススメ(*2)。今回使用したのは「UV/IRカット型」です。
(*1)近年、光害地で銀河を撮影する場合に「IRパスフィルター(近赤外線のみを透過するフィルター)」をL画像に使用する手法が注目されていますが、どちらかというとカラーカメラよりもモノクロカメラに適した手法です。
(*2)クリア型でブロードバンド撮影する場合は、UV/IRカットフィルターの使用が推奨です。保護ガラスがUV/IRカット型なら、余計なフィルターを1枚使わずにすむことになります。逆に、デュアルナローバンドフィルターを使用して星雲を撮影する場合は、クリア型の方がゴースト発生の問題が少なくなる可能性がありますが、筆者は検証したことがなく何ともいえません(困ったことはないのですが)。
事前セットアップ
すべての機材を接続し動作確認中。ケーブルの長さを最適化するのも重要なポイントです。その割には雑ですが(^^;;;
当たり前の話ではありますが、「初物」の機材を使用する際には、本番撮影と同様に機材を組み上げて、事前のセットアップと動作チェックすることが必須(*)。現地でいきなりやってうまくいくほど天体写真は甘くありません^^;;;
(*)必要なドライバ類をPCにインストールすることはもちろん、すべてのケーブルを接続し、制御ソフトから各機材がちゃんと認識されて動作するか、ピントはちゃんと出るのか、ケーブルの長さは適切か、などなど。
APTを操作して撮影しているところ。APTは無料の範囲でも一通りの撮影ができる統合天体撮像ソフトウェアです。オートガイドにはPHD2を使用しています。
特に、今回は「APT(AstroPhotograpyTool)」を使った初の野外撮影なので、みっちりとチェックしました。電源が一晩もつかどうかも本当はチェックしたかったのですが、さすがにそこまではできませんでした(*)。
(*)遠征地の気温を再現することはできないので・・結局電源は一晩持ちませんでした・・
APTはWindowsでのみ動作するソフトウェアです。Mac派の筆者にとっては辛いところですが、こればかりは仕方ありません(*)。仕方ないのでIntelチップのMacBookPro(2015 mid)を引っ張り出してきました。バッテリが死にかけで、AC電源につないでおかないと5分で電源が切れてしまうという年代物です。
(*)APTだけでなく、N.I.N.A・SharpCap・ステラショットなど有名どころの天体撮像ソフトウェアはWindowsでしか動作しないものがほとんどです。
というわけで、なんとか準備は終了。あとは遠征に出かけるのみ!
いざ、遠征!
夕焼け空、これから始まる一夜に期待が膨らむ瞬間。この場所は福岡市内から車で2.5時間。最近のホームグラウンドです。
撮影地はいつものくじゅう高原の某所です。天気予報では途中少し曇りそうだったのですが、ボウズになるリスクはきわめて低い条件だったので、迷わずGo。結果的に天気予報の通りになったのですが、無事撮影することができました!
遠征の概要については、こちらにVLOG風動画でまとめています。ぜひご視聴ください^^
動画の中にも出てきますが「Microsoft Remote Desktop」が大活躍。上の画像は、車の中から撮像用のWindowsPCにリモートデスクトップ経由で接続して操作しているところ。Mac派なら常識かもしれませんが、WiFiのアクセスポイント(*)さえあれば、使い慣れたMac環境からWindowsを遠隔操作できます。
(*)今回はStarLink miniをWifiルーターとして使用しましたが、USBバスパワー程度の電力で動作する小型のWiFiルーターはアマゾンで5000円前後で入手できます。
リザルトと検証
その1.馬頭星雲
SkyRover 86MA鏡筒 0.8xレデューサー(焦点距離489mmF5.6) ToupTek ATR2600C 2分128枚、総露光256分 ToupTek GS-250 f/5+G3M2210Mでオートガイド GEMINIフラットパネル(φ240mm)でフラット撮像 ビクセンSXP赤道儀 熊本県産山村で撮影 PixInsightでWBPP、SPCC、MGC、NXT適用(BXTなし)、MASデフォルトパラメーターでストレッチ後、Photoshop Camera rawで調整。
一つ目のリザルト、馬頭星雲です。若干雲が流れましたが、PixInsightのWWBP任せでスタック。若干輝星がにじんでいるのはそのせいかもしれません。
等倍の四隅・中央切り出し。一辺の大きさは200μmです。ほぼスポット図通りの性能が出ているといってよいのではないでしょうか。APS-Cとはいえ、四隅と中央にほぼ差がなく、非常に鋭い点像です。
右上隅のアルニラムの等倍拡大。周辺減光の大きめの鏡筒では、四隅の星はほぼ「割れる」ものですが、SkyRover86MAの場合はほぼ割れがありません。これも素晴らしいですね!
なお、上記画像はいずれも「BXT(Blur exterminator」は使用していません。BXTで処理するとさらにシャープで均質な点像になります。
その2.しし座トリオ銀河
SkyRover 86MA鏡筒 0.8xレデューサー(焦点距離489mmF5.6) ToupTek ATR2600C 2分78枚、総露光156分 ToupTek GS-250 f/5+G3M2210Mでオートガイド GEMINIフラットパネル(φ240mm)でフラット撮像 ビクセンSXP赤道儀 熊本県産山村で撮影 PixInsightでWBPP 2xDrizzle、SPCC、BXT、NXT適用、MASデフォルトパラメーターでストレッチ後、Photoshopで処理。トリミング。
この夜2つめの対象はしし座のトリオ銀河。NGC3628の潮汐テイルを無理やりあぶり出したためだいぶノイジーですが(*1)、銀河の解像には素晴らしいものがありますね。この作例では、2xDrizzleで解像度をかさ上げした上で、BXT処理を行っています。SkyRover86MAのような高性能鏡筒の場合、ピクセルピッチ3.76μmでも若干アンダーサンプリング気味。Drizzle+BXTの組み合わせは解像感のアップに大きな効果があります(*2)。
(*1)当初予定では3時間以上露光するはずだったのですが、電源不足で約2時間半の露光にとどまってしまいました。
(*2)Drizzle処理を行う場合、フルサイズ6200万画素のIMX455採用カメラでは画像処理に時間がかかって大変です。その点、APS-C2600万画素のATR2600CならだいぶPCの負担が減ります。この点でもAPS-Cフォーマットは「使いやすい」といえるでしょう。
等倍トリミング切り出し。いかがですか、この解像感。口径86mm・焦点距離490mmの天体望遠鏡で撮ったとはにわかには信じられないほど。高性能なSkyRover86MAなら、露光時間を稼ぐことで、銀河のような小さな天体でも十分ガチに狙えるといってよいでしょう(*)。
(*)このような撮り方をする場合は、センサーサイズはもっと小さくても十分なケースが多いといえます。
周辺減光とフラット補正
2分露光1枚、フラット・ダーク補正なし、STFで強調。
SkyRover86MAとToupTek ATR2600Cを使用して感じたことは、周辺減光がほとんどないことです。上の画像はしし座トリオ銀河の補正なしのサブフレームの1枚ですが、この程度の強調では周辺減光は感じられません。
強調なしのマスターフラット
こちらはGemini フラットパネルで撮像したマスターフラット(強調なしのリニア画像)。ヒストグラムはきわめて鋭く、周辺減光がほぼ皆無であることがわかります。
強強調したマスターフラット。ほとんど新品のカメラのはずなのに、たくさんのゴミを入れてしまった・・・グラビティさんすみません、、、
マスターフラットをレベル補正で思い切り強調したもの。周辺減光よりも、センサーの感度ムラ(*)のほうが大きいくらいです。
(*)ガチガチの強調を行うディープスカイ界隈以外ではあまり認識されていないことかもしれませんが、「補正なしのPure raw」を吐き出す天体用CMOSカメラでは、一般にこのような「感度ムラ」が普通に存在します。「フラット補正」には光学系起因の周辺減光やセンサーのゴミを補正するだけではなく、上の画像のようなセンサー起因の大域的なムラや縞状のムラを補正する意味があります。
そして・・フラット補正を行っても、なかなか完璧には決まってくれないのが常。上の画像はスタック済みのマスターライトをSTFで強調したものですが、光量ムラも色ムラも若干残ってしまっています。これはフラットの微妙な不一致だけでなく、個別のライト画像に存在する光害かぶりや薄雲などの影響も含まれているのでしょう。これをあの手この手で補正するのが(しなくてはいけないのが)、「ガチガチディープスカイ天体写真」の定めなのです^^;;(*)
(*)残念ながらこの領域はPixInsightのMGC補正の対象範囲外でした。
今回使用した「尖ったパーツ群」
今回の撮影では、グラビティさんの取り扱われている「ガイドスコープ」「ガイドカメラ」「電動フォーカサー」「フラットパネル」「電源・USB管理ボックス」を使用しました。以下、各製品を簡単にご紹介しましょう。
ガイドスコープGS-250 f/5
まず、ToupTek GS-250。この鏡筒は今回ガイドカメラとして使用しましたが、実はEDレンズ使用の3枚玉のフラットフィールド天体望遠鏡。口径50mmのGS-250で29,800円とお手ごろな価格。鏡筒バンドをはじめ、各部の作りも高品位で、ラックピニオン式のフォーカサー付き。口径3cmのGS-150 f/5から口径58mmのGS-350 f/6まで、5つのバリエーションがあります。
ガイド鏡として使用する場合、2枚玉アクロマートの製品と比較して、気持ちの良いとてもシャープな星像でした(*)。
(*)2枚玉アクロマートの場合、残存球面収差によって星像が一番小さくなるようにすると星の周りにハロが取り囲んでしまいます。だからといってガイド精度が低下するわけではないのですが・・・
ASI294MC非冷却 ToupTek GS-250 STC AstroDuo、SVBONY UV-IRカット2枚重ね 5秒130枚、総露光650秒 ダーク・フラット補正あり(ダーク不整合あり)、WBPP、NXT、MGC、MAS(BXTなし)、SXP赤道儀、福岡県福岡市内で撮影
GS-250 f/5は、電視観望やお手軽ディープスカイ撮影にも十分使える性能でした。上の画像は自宅のベランダからナローバンドでM42を撮影したものですが、中心像はなかなかシャープで、4/3サイズのセンサーでも最周辺の星像はまずまずの実用レベルです(*)。
(*)公称のイメージサークルは1インチセンサーまでとなっていますが、周辺光量的には4/3でも十分に実用範囲でした。
ただ、今回使用した製品ではちょっと困ったことがありました。筒外焦点距離が短すぎて、カメラ接続によってはピントが出ないのです。いわゆる「スティックのり型」のCMOSカメラなら深く差し込めるので問題ないのですが、上の画像のASI294MC(非冷却)では1.25インチスリーブ接続では合焦せず、鏡筒端のM42に直接ねじ込んで、さらにフィルターを2枚重ねすることでようやくピントが合いました。
GSシリーズは共通のパーツが多く使われているのですが、M48・光路長70mmの延長筒をもう少し短いもの(50mmくらい?)にするべきでしょう(*)。
(*)グラビティさん経由で、販売元のToupTek社にフィードバックしています。近いうちに改良版が提供されることでしょう。
惑星撮影カメラToupTek G3M2210M
https://gravity-astro.com/products/g3m2210
ガイドカメラにはToupTek社のモノクロカメラ「G3M2210M(*)」を使用しました。このカメラは中国・思特威(SmartSens)社の裏面照射型イメージセンサーSC2210を使用しています。ピクセルピッチは4μm、1920*1080ピクセルの1/1.8型センサーです。
(*)カラータイプのG3M2210Cもあります。惑星撮影に使うのであればこちらのほうが便利かもしれません。
今回はガイドカメラとして使用しましたが、低リードノイズ・高感度なので、惑星や月面の撮影にも威力を発揮することでしょう。USB3.0で最大150fpsで撮影できます(8ビット時)。グラビティでの販売価格は¥38,800です。
「クラッチ」付き・Oasis Focuser Rose 電動フォーカサー
https://gravity-astro.com/products/oasis-focuser-rose
なるほど!と思わせる、これまでになかったタイプの電動フォーカサーです。最大の特徴は、電動フォーカスと手動フォーカスをワンタッチで切り替えることができる「クラッチ機構(*)」を搭載していることです。電動・手動の切り替えは本体をつまんで30度ほど回転するだけでとても簡単。グラビティでの販売価格は37,900円です。
(*)摩擦力を調整することで電動側との接続をフリーにする「摩擦クラッチ」ではなく、ギアのかみ合わせをワンタッチで開放できる「噛み合いクラッチ」です。
SkyRover86MA鏡筒へのフォーカサーの装着は、ラックピニオンの外側の円形の部分にスリ割り式のアダプタ(上の画像の赤い部分)経由で行います(*1)。脱着はねじ一本なので、ヘックスキーがあれば遠征先でも可能。市販の電動フォーカサーの課題として「電動フォーカサーを装着すると(でっぱりのため)純正ケースに入らなくなる問題」がありますが、Roseフォーカサーなら簡単に取り外しができるのでその心配がありません(*2)。これは地味に便利でした!
(*1)鏡筒の形状に応じた実にさまざまなアダプタが用意されていて、マニュアルには2ページにも及ぶ対応鏡筒の一覧が記載されています。解説するだけで本が一冊書けそうなくらい(マニュアルは66ページ!)。シュミカセやタカハシ製鏡筒など、数多くの鏡筒に対応するようです。
(*2)取り付け方式によっては取付治具が必要になる場合があるため、ケースに入らない場合もあるかもしれません。「簡単に取り外し」と書きましたが、雑に取り付けるとかみ合わせが悪くなる危険もあるかと思います。ヘックスキーを使用して慎重に。
膨大な数の鏡筒に対応したことや、超寒冷地での使用を想定し「ヒーター」まで内蔵されている(*)ことなど、「よくぞここまで徹底して作り込んだものだ」と感心するしかありません。
(*)中国内陸部のリモート天文台での運用から出てきたニーズだそうです。マイナス20度くらいまでに冷えると、モーターやギアボックスのグリスが硬化するのでしょうか。
RoseフォーカサーはASCOM対応のソフトウェアから制御可能。今回はAPTをを使用しました。なお、ASIAIRでは使用できない(*)ことにご注意ください。
(*)ASIAIRはZWO社製の電動フォーカサーしか使用することができません。逆に「Stella Vita」を使うモチベーションの一つになるかも?
Gemini 電源・USB管理ボックス mini
天体望遠鏡機材群の接続を統合する、12V電源とUSB3.1のハブ機能を備えた管理ボックスです。電源は12V10Aの入力が1口、12Vの出力が5口。USBは、PCと接続するUSB3.0のType-Bが1口、USB3.1 TypeAが2口、USB2.0 Type-Aが4口。これだけ口数があれば一通りの機材を接続する(*)ことができるでしょう。グラビティでの販売価格は8,800円です。
接続している機材:メインカメラ(12V、USB-B3.1)、ガイドカメラ(USB-B3.1)、電動フォーカサー(USB-A 2.0)、主鏡ヒーター(12V)、ガイド鏡ヒーター(USB-A)
構成例。Gemini 電源・USB管理ボックスを使用することで、望遠鏡から引き出されるケーブルを最小2本にとどめることができます(*)。
(*)画像には写っていませんが、この構成の場合は赤道儀とPCを接続するLANケーブルがさらに必要です。
とはいえ、接続する機材の数が少ない場合、Gemini 電源・USB管理ボックスは必ずしも必須ではありません。上の画像は12V電源を2分岐ケーブルで・USBをカメラ側のハブを使用した接続例。使用しているパーツは同じです。ガイドカメラのヒーターの電源供給以外は同じ2本のケーブル(12VとPC用のUSB)で済ませることができました。
逆に、この構成よりも多くの機材を接続する場合はGemini 電源・USB管理ボックスがより効果を発揮することでしょう。もうひとつ注目すべきメリットは、ケーブルをより不動点の近くに集められることでしょうか。カメラ側から12VとUSBの日本のケーブルを引き出すと、東西反転の際のケーブル移動距離が大きくなり、引っかかるリスクが増えてしまう可能性があります。
いずれにしても、比較的安価な製品ですので、12V電源ハブ兼USB6口ハブと考えると、導入しても損のない製品だと感じました。
Geminiフラットジェネレーター
https://gravity-astro.com/products/gemini-flat
フラットフレームを撮像するためのライトパネルです。USBバスパワー給電で、WiFi・付属の赤外線リモコン・ASCOMなど、さまざまな手段で制御できることが特徴。小径150mmタイプで15,900円と価格も手ごろ。最大400mm(受注生産)まで、6種のサイズがあります。今回は使用しませんでしたが、N.I.N.A.の「フラットウィザード」を使用すれば「自動露光(*)」が可能なようです。
(*)目標のヒストグラム値を指定することで、フラットの撮像輝度を自動調整して撮影します。
今回はスマホからのWiFi接続で使用しました。スマホをGeminiのWiFi(*)に接続し、ブラウザから管理画面を開き、輝度を調整することができます。一度輝度を設定しておけば、次回からはUSBケーブルをつなぐだけで「点灯」するので、面倒な操作なしにスタンドアロンで使えるのもメリット。
(*)もちろん技適対応です。
筆者はこれまで、経験的に「青空フラットが最も合いやすい」と考えて実践してきました(*)。それと比較して、ライトパネルによるフラットはどうなのでしょうか?!
(*)理論的には「すべての方向に均一に光を発する光源であれば、光源までの距離はフラットには関係ない」らしいです(Google AI検索談)。これはタブレットやPCの液晶画面のように角度によって輝度が変化するフラットパネルはあまり適切ではないということを意味します。
そこで検証してみたのが上の画像。同じ日に青空とGeminiの両方でフラットを撮像したものです。めちゃくちゃに強調してみると微妙な違いがありましたが、どちらが正しいのかは判断に苦しむレベル。
これもめちゃくちゃに強調しています。強調前は均質なグレーにしか見えません。一粒だけゴミが混入したのが痛恨。2つのフラット撮像中にカメラは取り外ししていないのですが。
この2つのフラットを、青空フラットをライト・Geminiフラットをフラットとして補正してみました。結果、まずまず滑らかな背景になりました。両者が理想的なフラットなら完全なニュートラルグレーになるはずですが、この程度の違いであれば、他の「実戦的なフラット阻害要因」と比べて十分小さいといえるのではないでしょうか。
Geminiフラットジェネレーターと手持ちのiPadProの液晶画面。左が強調なし、右はPhotoshopでコントラスト+100の3段強調。どちらも完璧に均一ではありませんが、geminiのパネルは白色の拡散材が使用されているので角度依存性は低いといえます。画像から見てわかるように、geminiの外周部は少し明るくなっているため、サイズに余裕を持たせることが推奨です。
青空は太陽との離角や大気の状態によってムラがありますし、フラットパネルにも微妙な明暗差が存在しますが、天候・時刻・太陽からの離角などの変動要素の大きい青空フラットと比較して、常に一定の条件で撮像できるフラットパネルの利便性は大きいと感じました。天リフ編集部でも一つ導入したいと思っています。
まとめ
今回使用した機材一式で馬頭星雲を撮影中。架台は天リフ所有のビクセン赤道儀ですが、その他は全部グラビティさんからの貸与機材^^
いかがでしたか?
最近はリモート撮影の比率が圧倒的に高い天リフ編集長ですが、久しぶりに?遠征撮影の醍醐味を満喫できました!やっぱり遠征は楽しいですね!
今回の撮影では、赤道儀とPCとバッテリ^^以外はすべて、グラビティさんからお借りしたもの。筆者にとって「初物(*)」ばかりの中でしたが、事前に綿密にチェックしたので忘れ物もなく、全機材が無事稼働してくれました。
(*)日本での販売実績がまだ少ないという意味でも「初物」です。
何よりも、今回使用した機材群は、SkyRover 86MAをはじめ、これまで使ったこともなかった・名前を知ってもいなかったブランドの製品も多かったのですが、どれも良くできた・工夫と配慮が行き届いた製品ばかりで、最近の新興ブランドの天文機材のレベルアップはめざましいと実感しました!
それでは皆様のご武運をお祈りしております。また次回お会いしましょう!
機材協力・記事協賛:天文ショップグラビティ
- 本記事は天文ショップグラビティより協賛および機材貸与を受け、天文リフレクションズ編集部が独自の判断で作成したものです。文責は全て天文リフレクションズ編集部にあります。
- 記事に関するご質問・お問い合わせなどは天文リフレクションズ編集部宛にお願いいたします。
- 製品の購入およびお問い合わせはメーカー様・販売店様にお願いいたします。
- 本記事によって読者様に発生した事象については、その一切について編集部では責任を取りかねますことをご了承ください。
- 特に注記のない画像は天リフ編集部で撮影したものです。
- 記事中の製品仕様および価格は注記のないものを除き執筆時(2026年2月)のものです。
- 記事中の社名、商品名等は各社の商標または登録商標です。
https://reflexions.jp/tenref/orig/2026/02/08/18500/https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2026/02/dc50ef89a16022a933cd7872f22b19eb-1024x576.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2026/02/dc50ef89a16022a933cd7872f22b19eb-150x150.jpg編集部望遠鏡望遠鏡アクセサリアクセサリ天体用カメラ天体用カメラみなさんこんにちは!久しぶりの(なんと4年ぶり^^;;)の「実践・天体写真撮影記」です。この4年で天体写真界隈も「スマート望遠鏡」に「リモート天文台」、そして高感度高性能のスマホを使った星空撮影など、「重厚」と「お手軽」の両極端で大きな進歩がありました。
しかし!トラッドな?「遠征撮影」は永遠に不滅です。いろいろな機材を組み合わせて撮影システムをセットアップし、お天気とにらめっこしながら「遠征」に出かける。そしてじっくり天体を撮影しリザルトを仕上げる。ディープスカイ天体写真の魅力が全て詰まったそんな「遠征撮影」に出かけてきました!
天文ショップ・グラビティ
最初にお断りしておきますが、今回の記事は、天文ショップ・グラビティさんの案件記事であります。とはいえ、他の天リフ案件記事同様、読者様のメリットを最重視する姿勢には変わりありません。
天文ショップ グラビティhttps://gravity-astro.com
実はグラビティは昨年の小海星フェスに出展されていて、店長である劉さんとはお会いしていました。フラットパネルやUSBボックス、反射望遠鏡用の接眼部やスパイダーなど、かなりマニアックな商品を取り扱われている印象でした。
その後、今回の案件のお話しをいただき、直接会話したのですが、自らディープスカイ天体写真にガチに取り組まれていることと、そんなユーザーに向けて「尖った」良い製品を提供していきたいと考えていると伺いました。
グラビティも劉さんも、まだまだ歴史の浅い「若い」存在ですが、今後きっと天文業界に大きな足跡を残されていくことでしょう。そのお手伝いができることは光栄の限りであります^^
グラビティの店長、劉さん。こちらの動画でもその若々しいお姿を拝見できます^^
今回の主砲・SkyRover86MA鏡筒
EDレンズ2枚使用の4枚玉フラットフィールド・フォトビジュアル
SkyRover 86MA 多用途天体望遠鏡https://gravity-astro.com/products/skyrover-86ma
今回使用した鏡筒「Sky Rover86MA」は、口径86mm焦点距離612mm、4枚玉屈折鏡筒です。レンズ構成図は公開されていませんが(*)、EDレンズを2枚使用したフラットフィールド。F値が7と大きめのため、眼視観望でも使いやすく良好な性能を発揮してくれることでしょう。グラビティでの販売価格は税込188,000円です。
(*)類似スペック・コンセプト(ED2枚のフラットフィールド・フォトビジュアル・F値7)の鏡筒にはAskar 80PHQ(口径80mmF7.5、ED2枚使用の4枚玉)があります。
レデューサー使用でF値は5.6に
SkyRover 86/106/126 MA 専用0.8倍レデューサーhttps://gravity-astro.com/products/skyrover-86-106-126-ma-reducer
今回の撮影では、専用のx0.8レデューサーを使用しました。この構成での焦点距離は490mm、F値は5.6となります。少し長めではありますが、アストログラフとして不満のない明るさといえるでしょう。鏡筒側の接続はM63と余裕の大きさ。グラビティでの販売価格は45,000円です。
「四隅まで点像」フラッグシップクオリティ
レデューサー構成の場合のスポット図。スポット図から読み取れる星像径は15μmくらいでしょうか。周辺の星像の崩れもフルサイズ四隅でもほぼゼロで、設計性能は昨今の高性能アストログラフの水準を満たしていると言えるでしょう。実写でどうだったかは記事の中で詳細をご紹介しています。
メインカメラ・ToupTek ATR2600C
ToupTek ATR2600Chttps://gravity-astro.com/products/atr2600c
メインカメラはカラータイプの冷却CMOSカメラ、ToupTek ATR2600Cです。センサーにはAPS-Cサイズのソニー製IMX571を採用。筆者の私見ですが、ディープスカイ天体写真界隈ではこのセンサーを使用したカメラが、ひとつの「到達点(*)」といえるのではないでしょうか。
(*)^^;; フルサイズのIMX455採用のカメラはかなりお値段が張ります(65万円前後)。価格の値ごろ感的には4/3のIMX294、1インチスクウェアのIMX533、1/1.2インチのIMX585も人気です。
スペック的には、16bitADコンバーター搭載・低読み出しノイズ・2段TEC冷却・USBハブ(2口)搭載など、「赤い」例のメーカーの製品と互角です。そしてお値段はグラビティ販売価格で219,800円。コスパは高いといえるでしょう。
特筆すべきこととして、保護ガラスを「クリアタイプ(ARコート)型」と、「UV/IRカット型」から選べることがあります。簡単にいうと、赤外線撮影(*1)を行わず、ブロードバンドRGBをメインに撮影するのなら「UV/IRカット型」がオススメ(*2)。今回使用したのは「UV/IRカット型」です。
(*1)近年、光害地で銀河を撮影する場合に「IRパスフィルター(近赤外線のみを透過するフィルター)」をL画像に使用する手法が注目されていますが、どちらかというとカラーカメラよりもモノクロカメラに適した手法です。
(*2)クリア型でブロードバンド撮影する場合は、UV/IRカットフィルターの使用が推奨です。保護ガラスがUV/IRカット型なら、余計なフィルターを1枚使わずにすむことになります。逆に、デュアルナローバンドフィルターを使用して星雲を撮影する場合は、クリア型の方がゴースト発生の問題が少なくなる可能性がありますが、筆者は検証したことがなく何ともいえません(困ったことはないのですが)。
事前セットアップ
当たり前の話ではありますが、「初物」の機材を使用する際には、本番撮影と同様に機材を組み上げて、事前のセットアップと動作チェックすることが必須(*)。現地でいきなりやってうまくいくほど天体写真は甘くありません^^;;;
(*)必要なドライバ類をPCにインストールすることはもちろん、すべてのケーブルを接続し、制御ソフトから各機材がちゃんと認識されて動作するか、ピントはちゃんと出るのか、ケーブルの長さは適切か、などなど。
特に、今回は「APT(AstroPhotograpyTool)」を使った初の野外撮影なので、みっちりとチェックしました。電源が一晩もつかどうかも本当はチェックしたかったのですが、さすがにそこまではできませんでした(*)。
(*)遠征地の気温を再現することはできないので・・結局電源は一晩持ちませんでした・・
APTはWindowsでのみ動作するソフトウェアです。Mac派の筆者にとっては辛いところですが、こればかりは仕方ありません(*)。仕方ないのでIntelチップのMacBookPro(2015 mid)を引っ張り出してきました。バッテリが死にかけで、AC電源につないでおかないと5分で電源が切れてしまうという年代物です。
(*)APTだけでなく、N.I.N.A・SharpCap・ステラショットなど有名どころの天体撮像ソフトウェアはWindowsでしか動作しないものがほとんどです。
というわけで、なんとか準備は終了。あとは遠征に出かけるのみ!
いざ、遠征!
撮影地はいつものくじゅう高原の某所です。天気予報では途中少し曇りそうだったのですが、ボウズになるリスクはきわめて低い条件だったので、迷わずGo。結果的に天気予報の通りになったのですが、無事撮影することができました!
遠征の概要については、こちらにVLOG風動画でまとめています。ぜひご視聴ください^^
動画の中にも出てきますが「Microsoft Remote Desktop」が大活躍。上の画像は、車の中から撮像用のWindowsPCにリモートデスクトップ経由で接続して操作しているところ。Mac派なら常識かもしれませんが、WiFiのアクセスポイント(*)さえあれば、使い慣れたMac環境からWindowsを遠隔操作できます。
(*)今回はStarLink miniをWifiルーターとして使用しましたが、USBバスパワー程度の電力で動作する小型のWiFiルーターはアマゾンで5000円前後で入手できます。
リザルトと検証
その1.馬頭星雲
一つ目のリザルト、馬頭星雲です。若干雲が流れましたが、PixInsightのWWBP任せでスタック。若干輝星がにじんでいるのはそのせいかもしれません。
等倍の四隅・中央切り出し。一辺の大きさは200μmです。ほぼスポット図通りの性能が出ているといってよいのではないでしょうか。APS-Cとはいえ、四隅と中央にほぼ差がなく、非常に鋭い点像です。
右上隅のアルニラムの等倍拡大。周辺減光の大きめの鏡筒では、四隅の星はほぼ「割れる」ものですが、SkyRover86MAの場合はほぼ割れがありません。これも素晴らしいですね!
なお、上記画像はいずれも「BXT(Blur exterminator」は使用していません。BXTで処理するとさらにシャープで均質な点像になります。
その2.しし座トリオ銀河
この夜2つめの対象はしし座のトリオ銀河。NGC3628の潮汐テイルを無理やりあぶり出したためだいぶノイジーですが(*1)、銀河の解像には素晴らしいものがありますね。この作例では、2xDrizzleで解像度をかさ上げした上で、BXT処理を行っています。SkyRover86MAのような高性能鏡筒の場合、ピクセルピッチ3.76μmでも若干アンダーサンプリング気味。Drizzle+BXTの組み合わせは解像感のアップに大きな効果があります(*2)。
(*1)当初予定では3時間以上露光するはずだったのですが、電源不足で約2時間半の露光にとどまってしまいました。
(*2)Drizzle処理を行う場合、フルサイズ6200万画素のIMX455採用カメラでは画像処理に時間がかかって大変です。その点、APS-C2600万画素のATR2600CならだいぶPCの負担が減ります。この点でもAPS-Cフォーマットは「使いやすい」といえるでしょう。
等倍トリミング切り出し。いかがですか、この解像感。口径86mm・焦点距離490mmの天体望遠鏡で撮ったとはにわかには信じられないほど。高性能なSkyRover86MAなら、露光時間を稼ぐことで、銀河のような小さな天体でも十分ガチに狙えるといってよいでしょう(*)。
(*)このような撮り方をする場合は、センサーサイズはもっと小さくても十分なケースが多いといえます。
周辺減光とフラット補正
SkyRover86MAとToupTek ATR2600Cを使用して感じたことは、周辺減光がほとんどないことです。上の画像はしし座トリオ銀河の補正なしのサブフレームの1枚ですが、この程度の強調では周辺減光は感じられません。
こちらはGemini フラットパネルで撮像したマスターフラット(強調なしのリニア画像)。ヒストグラムはきわめて鋭く、周辺減光がほぼ皆無であることがわかります。
マスターフラットをレベル補正で思い切り強調したもの。周辺減光よりも、センサーの感度ムラ(*)のほうが大きいくらいです。
(*)ガチガチの強調を行うディープスカイ界隈以外ではあまり認識されていないことかもしれませんが、「補正なしのPure raw」を吐き出す天体用CMOSカメラでは、一般にこのような「感度ムラ」が普通に存在します。「フラット補正」には光学系起因の周辺減光やセンサーのゴミを補正するだけではなく、上の画像のようなセンサー起因の大域的なムラや縞状のムラを補正する意味があります。
そして・・フラット補正を行っても、なかなか完璧には決まってくれないのが常。上の画像はスタック済みのマスターライトをSTFで強調したものですが、光量ムラも色ムラも若干残ってしまっています。これはフラットの微妙な不一致だけでなく、個別のライト画像に存在する光害かぶりや薄雲などの影響も含まれているのでしょう。これをあの手この手で補正するのが(しなくてはいけないのが)、「ガチガチディープスカイ天体写真」の定めなのです^^;;(*)
(*)残念ながらこの領域はPixInsightのMGC補正の対象範囲外でした。
今回使用した「尖ったパーツ群」
今回の撮影では、グラビティさんの取り扱われている「ガイドスコープ」「ガイドカメラ」「電動フォーカサー」「フラットパネル」「電源・USB管理ボックス」を使用しました。以下、各製品を簡単にご紹介しましょう。
ガイドスコープGS-250 f/5
ToupTek GSシリーズ天体望遠鏡https://gravity-astro.com/products/gsar?variant=41877941911655
まず、ToupTek GS-250。この鏡筒は今回ガイドカメラとして使用しましたが、実はEDレンズ使用の3枚玉のフラットフィールド天体望遠鏡。口径50mmのGS-250で29,800円とお手ごろな価格。鏡筒バンドをはじめ、各部の作りも高品位で、ラックピニオン式のフォーカサー付き。口径3cmのGS-150 f/5から口径58mmのGS-350 f/6まで、5つのバリエーションがあります。
ガイド鏡として使用する場合、2枚玉アクロマートの製品と比較して、気持ちの良いとてもシャープな星像でした(*)。
(*)2枚玉アクロマートの場合、残存球面収差によって星像が一番小さくなるようにすると星の周りにハロが取り囲んでしまいます。だからといってガイド精度が低下するわけではないのですが・・・
GS-250 f/5は、電視観望やお手軽ディープスカイ撮影にも十分使える性能でした。上の画像は自宅のベランダからナローバンドでM42を撮影したものですが、中心像はなかなかシャープで、4/3サイズのセンサーでも最周辺の星像はまずまずの実用レベルです(*)。
(*)公称のイメージサークルは1インチセンサーまでとなっていますが、周辺光量的には4/3でも十分に実用範囲でした。
ただ、今回使用した製品ではちょっと困ったことがありました。筒外焦点距離が短すぎて、カメラ接続によってはピントが出ないのです。いわゆる「スティックのり型」のCMOSカメラなら深く差し込めるので問題ないのですが、上の画像のASI294MC(非冷却)では1.25インチスリーブ接続では合焦せず、鏡筒端のM42に直接ねじ込んで、さらにフィルターを2枚重ねすることでようやくピントが合いました。
GSシリーズは共通のパーツが多く使われているのですが、M48・光路長70mmの延長筒をもう少し短いもの(50mmくらい?)にするべきでしょう(*)。
(*)グラビティさん経由で、販売元のToupTek社にフィードバックしています。近いうちに改良版が提供されることでしょう。
惑星撮影カメラToupTek G3M2210M
G3M2210M 惑星撮影カメラhttps://gravity-astro.com/products/g3m2210
ガイドカメラにはToupTek社のモノクロカメラ「G3M2210M(*)」を使用しました。このカメラは中国・思特威(SmartSens)社の裏面照射型イメージセンサーSC2210を使用しています。ピクセルピッチは4μm、1920*1080ピクセルの1/1.8型センサーです。
(*)カラータイプのG3M2210Cもあります。惑星撮影に使うのであればこちらのほうが便利かもしれません。
今回はガイドカメラとして使用しましたが、低リードノイズ・高感度なので、惑星や月面の撮影にも威力を発揮することでしょう。USB3.0で最大150fpsで撮影できます(8ビット時)。グラビティでの販売価格は¥38,800です。
「クラッチ」付き・Oasis Focuser Rose 電動フォーカサー
Oasis Focuser Rose 電動フォーカサーhttps://gravity-astro.com/products/oasis-focuser-rose
なるほど!と思わせる、これまでになかったタイプの電動フォーカサーです。最大の特徴は、電動フォーカスと手動フォーカスをワンタッチで切り替えることができる「クラッチ機構(*)」を搭載していることです。電動・手動の切り替えは本体をつまんで30度ほど回転するだけでとても簡単。グラビティでの販売価格は37,900円です。
(*)摩擦力を調整することで電動側との接続をフリーにする「摩擦クラッチ」ではなく、ギアのかみ合わせをワンタッチで開放できる「噛み合いクラッチ」です。
SkyRover86MA鏡筒へのフォーカサーの装着は、ラックピニオンの外側の円形の部分にスリ割り式のアダプタ(上の画像の赤い部分)経由で行います(*1)。脱着はねじ一本なので、ヘックスキーがあれば遠征先でも可能。市販の電動フォーカサーの課題として「電動フォーカサーを装着すると(でっぱりのため)純正ケースに入らなくなる問題」がありますが、Roseフォーカサーなら簡単に取り外しができるのでその心配がありません(*2)。これは地味に便利でした!
(*1)鏡筒の形状に応じた実にさまざまなアダプタが用意されていて、マニュアルには2ページにも及ぶ対応鏡筒の一覧が記載されています。解説するだけで本が一冊書けそうなくらい(マニュアルは66ページ!)。シュミカセやタカハシ製鏡筒など、数多くの鏡筒に対応するようです。
(*2)取り付け方式によっては取付治具が必要になる場合があるため、ケースに入らない場合もあるかもしれません。「簡単に取り外し」と書きましたが、雑に取り付けるとかみ合わせが悪くなる危険もあるかと思います。ヘックスキーを使用して慎重に。
膨大な数の鏡筒に対応したことや、超寒冷地での使用を想定し「ヒーター」まで内蔵されている(*)ことなど、「よくぞここまで徹底して作り込んだものだ」と感心するしかありません。
(*)中国内陸部のリモート天文台での運用から出てきたニーズだそうです。マイナス20度くらいまでに冷えると、モーターやギアボックスのグリスが硬化するのでしょうか。
RoseフォーカサーはASCOM対応のソフトウェアから制御可能。今回はAPTをを使用しました。なお、ASIAIRでは使用できない(*)ことにご注意ください。
(*)ASIAIRはZWO社製の電動フォーカサーしか使用することができません。逆に「Stella Vita」を使うモチベーションの一つになるかも?
Gemini 電源・USB管理ボックス mini
Gemini 電源・USB管理ボックス minihttps://gravity-astro.com/products/gemini-hubbox
天体望遠鏡機材群の接続を統合する、12V電源とUSB3.1のハブ機能を備えた管理ボックスです。電源は12V10Aの入力が1口、12Vの出力が5口。USBは、PCと接続するUSB3.0のType-Bが1口、USB3.1 TypeAが2口、USB2.0 Type-Aが4口。これだけ口数があれば一通りの機材を接続する(*)ことができるでしょう。グラビティでの販売価格は8,800円です。
構成例。Gemini 電源・USB管理ボックスを使用することで、望遠鏡から引き出されるケーブルを最小2本にとどめることができます(*)。
(*)画像には写っていませんが、この構成の場合は赤道儀とPCを接続するLANケーブルがさらに必要です。
とはいえ、接続する機材の数が少ない場合、Gemini 電源・USB管理ボックスは必ずしも必須ではありません。上の画像は12V電源を2分岐ケーブルで・USBをカメラ側のハブを使用した接続例。使用しているパーツは同じです。ガイドカメラのヒーターの電源供給以外は同じ2本のケーブル(12VとPC用のUSB)で済ませることができました。
逆に、この構成よりも多くの機材を接続する場合はGemini 電源・USB管理ボックスがより効果を発揮することでしょう。もうひとつ注目すべきメリットは、ケーブルをより不動点の近くに集められることでしょうか。カメラ側から12VとUSBの日本のケーブルを引き出すと、東西反転の際のケーブル移動距離が大きくなり、引っかかるリスクが増えてしまう可能性があります。
いずれにしても、比較的安価な製品ですので、12V電源ハブ兼USB6口ハブと考えると、導入しても損のない製品だと感じました。
Geminiフラットジェネレーター
Gemini フラットジェネレーターhttps://gravity-astro.com/products/gemini-flat
フラットフレームを撮像するためのライトパネルです。USBバスパワー給電で、WiFi・付属の赤外線リモコン・ASCOMなど、さまざまな手段で制御できることが特徴。小径150mmタイプで15,900円と価格も手ごろ。最大400mm(受注生産)まで、6種のサイズがあります。今回は使用しませんでしたが、N.I.N.A.の「フラットウィザード」を使用すれば「自動露光(*)」が可能なようです。
(*)目標のヒストグラム値を指定することで、フラットの撮像輝度を自動調整して撮影します。
今回はスマホからのWiFi接続で使用しました。スマホをGeminiのWiFi(*)に接続し、ブラウザから管理画面を開き、輝度を調整することができます。一度輝度を設定しておけば、次回からはUSBケーブルをつなぐだけで「点灯」するので、面倒な操作なしにスタンドアロンで使えるのもメリット。
(*)もちろん技適対応です。
筆者はこれまで、経験的に「青空フラットが最も合いやすい」と考えて実践してきました(*)。それと比較して、ライトパネルによるフラットはどうなのでしょうか?!
(*)理論的には「すべての方向に均一に光を発する光源であれば、光源までの距離はフラットには関係ない」らしいです(Google AI検索談)。これはタブレットやPCの液晶画面のように角度によって輝度が変化するフラットパネルはあまり適切ではないということを意味します。
そこで検証してみたのが上の画像。同じ日に青空とGeminiの両方でフラットを撮像したものです。めちゃくちゃに強調してみると微妙な違いがありましたが、どちらが正しいのかは判断に苦しむレベル。
この2つのフラットを、青空フラットをライト・Geminiフラットをフラットとして補正してみました。結果、まずまず滑らかな背景になりました。両者が理想的なフラットなら完全なニュートラルグレーになるはずですが、この程度の違いであれば、他の「実戦的なフラット阻害要因」と比べて十分小さいといえるのではないでしょうか。
青空は太陽との離角や大気の状態によってムラがありますし、フラットパネルにも微妙な明暗差が存在しますが、天候・時刻・太陽からの離角などの変動要素の大きい青空フラットと比較して、常に一定の条件で撮像できるフラットパネルの利便性は大きいと感じました。天リフ編集部でも一つ導入したいと思っています。
まとめ
いかがでしたか?
最近はリモート撮影の比率が圧倒的に高い天リフ編集長ですが、久しぶりに?遠征撮影の醍醐味を満喫できました!やっぱり遠征は楽しいですね!
今回の撮影では、赤道儀とPCとバッテリ^^以外はすべて、グラビティさんからお借りしたもの。筆者にとって「初物(*)」ばかりの中でしたが、事前に綿密にチェックしたので忘れ物もなく、全機材が無事稼働してくれました。
(*)日本での販売実績がまだ少ないという意味でも「初物」です。
何よりも、今回使用した機材群は、SkyRover 86MAをはじめ、これまで使ったこともなかった・名前を知ってもいなかったブランドの製品も多かったのですが、どれも良くできた・工夫と配慮が行き届いた製品ばかりで、最近の新興ブランドの天文機材のレベルアップはめざましいと実感しました!
それでは皆様のご武運をお祈りしております。また次回お会いしましょう!
機材協力・記事協賛:天文ショップグラビティ
本記事は天文ショップグラビティより協賛および機材貸与を受け、天文リフレクションズ編集部が独自の判断で作成したものです。文責は全て天文リフレクションズ編集部にあります。
記事に関するご質問・お問い合わせなどは天文リフレクションズ編集部宛にお願いいたします。
製品の購入およびお問い合わせはメーカー様・販売店様にお願いいたします。
本記事によって読者様に発生した事象については、その一切について編集部では責任を取りかねますことをご了承ください。
特に注記のない画像は天リフ編集部で撮影したものです。
記事中の製品仕様および価格は注記のないものを除き執筆時(2026年2月)のものです。
記事中の社名、商品名等は各社の商標または登録商標です。編集部山口
千宗kojiro7inukai@gmail.comAdministrator天文リフレクションズ編集長です。天リフOriginal
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