【特別企画】編集長、天リフの将来を語る【ロングインタビュー(6)】
天リフははたして成功できるのか、天リフはどこに行こうとしているのか。将来を熱く語ります。
目次
天リフの現在のアクセス規模
ーインタビューも今回が最終回です。今後の天リフをどのようにしていきたいと考えていらっしゃるかを聞きたいと思います。まず、天リフの現在の立ち位置を分析していただけませんか。
山口:はい。では具体的なデータからお話しさせて下さい。現在天リフの中には3つのサブサイトがあります。一つ目は「本サイト」と便宜上呼んでいますが、タブ形式のこのサイトです。
ーはい、日々最新のニュースが流れてくるページですね。
山口:以下11月度の実績値ですが、月間2453ユニークユーザー(uu)、71503ページビュー(pv)でした。それぞれの違いはご存じですか?
ーえーと、ユニークユーザー数(uu)は、その期間に1度でもアクセスしたユーザの総数でしたね。
山口:はい。逆にいえば、天リフのメッセージが一度でも届いている人の総数になりますね。いわゆる「リーチ」と呼ばれる指標です。この2453という数は、雑誌でいえばまあ乱暴にいえば実売部数、SNSなら登録者数みたいなものです。
天文雑誌と同じくらいのリーチを目指す
ー2500ユニークユーザというこの数字はどう評価されていますか?
山口:Facebookグループの登録者数と比較すると、「デジタル天体写真」が3000弱、「星空写真館」が5000弱ですから、まあそれに近い規模になりました。天文雑誌のリーチにはまだ及ばないと思うのですが、そこそこの存在感は出てきたのだと考えています。
ーページビュー(pv)数は7万以上ありますが、これはどういう意味と考えればいいですか?
山口:pvは天リフでいえば「一つのタブを表示した」ときに1カウントです。一回の訪問で平均5pvほど見られていますが、uuが約2500ですから、多くのユーザー様は天リフを何度も繰り返して見ていただけていることになります。つまり、リーチはさほど広くないが、その多くはかなり熱心なファンである、ということが言えます。とてもありがたいことです。
ー天リフから外部のサイトへの「集客」はどのくらいあるのですか?
山口:こちらも2017年11月度の実績ですが、配信記事の「枠」が月間で735,921回表示され、22,269回クリックされています。つまり、外部のサイトに2万回ユーザーアクセスを送り出した(送客)したことになります。クリック率3%弱。これはpvより少ないわけですが、逆にいえば「読者が明確な関心を持ってクリックした価値の高いアクション」であると言えるでしょう。
ー2018年度はこの数字はどのくらいまでにしたいとお考えですか?
山口:目標は月間1万uuですね。紙メディアの実売部数は明らかになっていませんし仮に明らかになったとしても横並びでの比較は難しいのですが、天文雑誌と同じくらいのリーチがあると胸を張っていえるようになるのが目標です。
「天文ファンのサークルの外」にメッセージを届ける
ーもう一つのサブサイトが「編集部ブログ」ですね。
山口:はい。こちらは11月度で8278ユニークユーザー(uu)、23751ページビュー(pv)です。こちらはuuが本体よりずっと多いのですが、pvは逆にずっと少なくなっています。
ー固定ファンよりも検索エンジンやSNSから流入する人が多いからですね。
山口:その通りです。編集部ブログの場合リピーターの比率は50%ですが、本サイトの場合は90%近くもあります。ユーザーの傾向が全く異なっています。編集部ブログの月間8000のユニークユーザーのうち、半数以上は検索エンジン経由で流入し、「天リフ」というブランドを特に認知することなく帰っていく人たちです。
ーこの数字はどう評価されていますか?
山口:圧倒的に少ないと思っています。いわゆる「ブログ」的評価ではアマチュアレベルです。この程度のアクセスでは広いインターネット上ではほとんど存在感はありません。
ー天文ファンには認知が進んだが一般にはまだまだ、とうことですね。
山口:おっしゃるとおりです。固定ファンを増やすことも重要なのですが、新規ユーザーを広げていかなければ天文ファンの総数は人口減と同じスピードで減る一方です。
「天文屋のサークルの外」にもっとメッセージが届くようにしていかなくてはなりません。
天文分野の総合ポータルを目指す
ー天文ファンに対しては天文雑誌並みのリーチを獲得し、さらにその外までメッセージを届かせることが課題ということですね。具体的にはどんな施策を考えているのですか?
山口:2018年の最大の課題は「総合ポータル化」です。第二回でベンチマークとして「ヤマケイオンライン」を比較に挙げましたが、天文分野であのくらいの情報カバレッジをもつポータルとしていきます。
ーポータル化といいますと具体的にはどのようなことでしょうか?
山口:今の天リフ「本サイト」は、直近の情報をざっくり整理しただけで何日かするとどんどん情報が「落ちて」いきますよね。このような「フロー」の情報だけでは不十分です。
ーなるほど。現在の「本サイト」は「天リフニュース」のようなものですね。
山口:まさしく。ニュースという切り口は乱暴にいえば時間順に並べるだけなので簡単に実現できましたが、もう少し整理しストックしていこうというわけです。
ーとすると、そのうちに「真・天リフ」のようなものができて、そこから「天リフニュース」や「天リフ星景写真」とか「天リフナローバンド」のようなサブサイトに飛ぶような形ですか?
山口:それもひとつの方法ですね。サイトの情報デザインをどうしていくのかは慎重に考えています。あまり一気に変わってしまっても読者が戸惑ってしまいますから。
有料コンテンツよりも優良コンテンツ
ー総合ポータル化にはシステム面でもパワーが必要そうですね。
山口:はい。そこが悩みどころです。私自身エンジニアですので自分でやれば外注費はかからないのですが、一人でやれることには限りがあります。3ヶ月コンテンツ更新を止めて専念すればできるのですがそういうわけにもいきません。できるだけ少ない開発量で実現する方法を考えているところです。
ー会員登録制は導入するのですか?
山口:悩ましいところです。個人情報をきちんと扱うにはもっとシステムを堅固にしなければなりませんし、登録以上のメリットをユーザにもたらすものでなければなりません。来年度中に導入することはたぶんないでしょう。
ー有料コンテンツを導入するにも会員登録が必要です。
山口:先にも言った話ですが、インターネットの黎明期にメディアがコンテンツを検索エンジンに無料で渡してしまったのは最大の戦略ミスです。その結果、本来あるべきではない世界ができてしまいました。
でも一度できあがってしまった世界を変えていくのには長い時間が必要です。天リフの規模ではそんな大それたチャレンジに参加することは無理です。当面、ひょっとしたら私の生きている間くらいは、コンテンツを有料化することはないでしょう。それよりも「優良コンテンツ」を生産することの方がずっと大事です。
事業として軌道に乗せないと始まらない
ーコンテンツの有料化を考えないということは、現状の広告モデルで事業を維持することになりますね。
山口:はい。2018年度中になんとか生活の収支を改善しなければなりません^^; とりあえず食える目処をつけること。実はこれが一番優先度が高いです。
ー目処はありますか?
山口:現在の天リフの5社のお客様のうち、天文雑誌にも出広されているのは1社のみです。その意味で、天リフは新しいマーケットに「少しは切り込めた」といえると思っています。まず、この実績を元に「天文雑誌に出広していない、小規模でもしっかりした実績を持つスポンサー」を増やしていきたいと考えています。
ー課題は「大手」ですね。
山口:はい。望遠鏡メーカー・天文ショップ・カメラメーカーの3つの分野にどこまで切り込めるかですね。誰の目から見ても「こういうサイトなら広告を出すべきだ」という段階(=総合ポータル化)にいかにして早く到達するかだと思っています。
「一人メディア」でどこまで進めるのか
ー天リフさんは「編集部」とか「編集長」とか名乗られていますが、実はお一人ですべてをやられています。今後もそれでやりきれるのでしょうか?
山口:痛いところを突きますね。私は編集者であり、ライターであり、エンジニアであり、営業でもあり、そして一人の天文ファンでもあります。正直もう業務量はかなり限界に近くなってきています。
ーこのインタビュー記事もかなりのパワーをかけられましたね・・
山口:はい。丸一週間かかっています。天リフにとっては実に大きな投資です^^;;他にもいろいろ仕掛かっている連載や仕事があり、早くこの待ち行列を片付けなくてはなりません。
2017年はとにかく全ての機会にチャレンジしました。2018年はもう少し絞り込んでゆく必要があると思っています。また、オリジナル記事も生産性・効率性をより重視しなくてはなりません。
ー根本的な解決方法はないのでしょうか?
山口:「一人でやらない」ことですね。当初の「第三者が発信した情報のまとめ役により徹する」というキュレーションの方向によりシフトするということです。
また、商品のレビューやプロモーションにおいては、天リフをハブにして発信力のある読者とスポンサー様の間に立つような形を考えていて、これはすでに始まっています。
ー外部ライターに記事を書いてもらうような方向性も?
山口:今はライター様に対価をお支払いできる段階ではありませんが、事業基盤が安定してくればそれは当然やるべきオプションです。2019年度には実現していきたいところです。
天文界のために再投資するサイクルの実現
ー総合ポータルとしての形ができ、ユーザーが目標の規模になり、めでたく生活の目処がついたら、その後どうしてゆくのですか?
山口:当初はアドネットワークからの収益だけで細々と一人静かに星を眺めて暮らすことを夢見ていました。いわゆる「あがり」状態です。でもどうやら天文マーケットは小さすぎてその方向性での成功は難しそうです。
今は、もし天リフが成功するとしたら、その時点で天リフは天文ファンと天文業界からある「付託」を受けることを意味すると思っています。「食わしてやる代わりに天文界のためにがんばれ」というわけです。
ーそれはメディアと読者、メディアと業界の本来あるべき関係なのかもしれませんね。
山口:そうかもしれません。両者のバランスはいろいろなケースがあると思いますが、メディアとして食っていくと決めた以上はそれを忘れてはならないと思っています。
ー生活の目処以上に儲かったらどうされますか?
山口:再投資です。天文界にお返しをすること。天リフ自身が広告を投下してユーザーを広げたり、天文イベントに自らがスポンサーとなることや、機材を自社で購入し読者に貸し出してレビューしてもらったり、お金さえあれば使い方はいくらでもあります。
「今日の一枚」も「読者の天体写真」のように何らか著作権者様に対価をお支払いする形に将来していきたいと思っていますし。でも全ては収益化できてからの話です。
天リフをいつまで続けられるのか
ー大手の企業様とビジネスされるのであれば、事業の信用と継続性をより問われると思いますが、そこについてはいかがですか?
山口:少なくとも事業が軌道に乗る前にその課題は解決せざるを得ないでしょう。いまの状態では私が病気で入院したら全てが止まり、死んだら終わりです。よほどの必然性とメリットが企業様にあれば話は別ですが、信用と継続性はなんらか担保しなければならないと思っています。
ーそれは法人化して従業員を雇うということなのでしょうか?
山口:うーん。今の時点では法人化のメリットも、従業員を雇用する体力もどちらもありません。天文のようなマーケットの小さい分野では「一人事業者」の問題はメディアに限った話ではありません。独創性のある技術と製品をもつ事業者の多くは専業ではなかったり、個人事業に近い形であるのが現状です。
一般のコンシューマープロダクト、メディアとは全く違った発想が必要なのかもしれません。
ーそれは例えばどんな発想でしょうか?
ひとつは「フルタイムの事業」としての存続をそもそも前提としないことです。週に16時間で運営できることを副業としてやる。一人ではなく同じ志を持つ者が協力し合って運営する。ITで場所の壁はもうほとんどありませんし、効率の面でも大幅な向上が可能なはずです。天文趣味がいわゆる「限界集落」のような趣味セグメントであるならば、否応なくそうするしかないでしょう。もしそうなれば私はこの年で職探しをしなければなりませんがw
ー天文趣味が「限界集落」なのかどうかは大きな分かれ目ですね。
個人的にはそうではないと信じていますが、「副業ネットワーク」の力を生かすことは、天文に限らず多くのマイナー分野で今後重要になると考えています。
そういう将来の姿を見据えた上で「1億円出してもいいよ」というようなエンジェルが見つかって、既存のメディアとがっぷり組むような形ができればいいんですけどね・・・
ーカドカワの川上社長にビデオメッセージ送りますかw
山口:ははは・・・
http://reflexions.jp/blog/ed_tenmon/archives/2945
まとめ
ー全六回、妄想全開で語っていただきましたが、最後に読者にメッセージをどうぞ。
山口:この1年、いろいろ考えてきたことを半分くらいは整理して吐き出すことができたと思っています。期せずして?半生を振り返ることにもなり、まあ自分にとってはいい振り返りにもなりました。
すこし盛ったり脚色もありますが、ほとんどは正直な語りです。このテクストを読んで何かに共感していただければ、そしてそれが天リフと天文界の発展に繋がれば、これほど嬉しいことはありません^^
最後まで読んで下さった方がどのくらいなのか恐ろしいですが、本当にありがとうございます。天リフの2018年にぜひ変わらぬご声援をお願い申し上げます。
皆様の2018年が素晴らしい年になりますように!
https://reflexions.jp/tenref/orig/2018/01/03/3070/https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/01/IMG_4947_m2-1024x545.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/01/IMG_4947_m2-150x150.jpg編集長ロングインタビュー編集長、天リフの将来を語る年末年始スペシャル企画、天リフ編集部が編集長山口千宗氏に迫るロングインタビュー最終回。 天リフははたして成功できるのか、天リフはどこに行こうとしているのか。将来を熱く語ります。 天リフの現在のアクセス規模 ーインタビューも今回が最終回です。今後の天リフをどのようにしていきたいと考えていらっしゃるかを聞きたいと思います。まず、天リフの現在の立ち位置を分析していただけませんか。 山口:はい。では具体的なデータからお話しさせて下さい。現在天リフの中には3つのサブサイトがあります。一つ目は「本サイト」と便宜上呼んでいますが、タブ形式のこのサイトです。 ーはい、日々最新のニュースが流れてくるページですね。 山口:以下11月度の実績値ですが、月間2453ユニークユーザー(uu)、71503ページビュー(pv)でした。それぞれの違いはご存じですか? ーえーと、ユニークユーザー数(uu)は、その期間に1度でもアクセスしたユーザの総数でしたね。 山口:はい。逆にいえば、天リフのメッセージが一度でも届いている人の総数になりますね。いわゆる「リーチ」と呼ばれる指標です。この2453という数は、雑誌でいえばまあ乱暴にいえば実売部数、SNSなら登録者数みたいなものです。 天文雑誌と同じくらいのリーチを目指す ー2500ユニークユーザというこの数字はどう評価されていますか? 山口:Facebookグループの登録者数と比較すると、「デジタル天体写真」が3000弱、「星空写真館」が5000弱ですから、まあそれに近い規模になりました。天文雑誌のリーチにはまだ及ばないと思うのですが、そこそこの存在感は出てきたのだと考えています。 ーページビュー(pv)数は7万以上ありますが、これはどういう意味と考えればいいですか? 山口:pvは天リフでいえば「一つのタブを表示した」ときに1カウントです。一回の訪問で平均5pvほど見られていますが、uuが約2500ですから、多くのユーザー様は天リフを何度も繰り返して見ていただけていることになります。つまり、リーチはさほど広くないが、その多くはかなり熱心なファンである、ということが言えます。とてもありがたいことです。 ー天リフから外部のサイトへの「集客」はどのくらいあるのですか? 山口:こちらも2017年11月度の実績ですが、配信記事の「枠」が月間で735,921回表示され、22,269回クリックされています。つまり、外部のサイトに2万回ユーザーアクセスを送り出した(送客)したことになります。クリック率3%弱。これはpvより少ないわけですが、逆にいえば「読者が明確な関心を持ってクリックした価値の高いアクション」であると言えるでしょう。 ー2018年度はこの数字はどのくらいまでにしたいとお考えですか? 山口:目標は月間1万uuですね。紙メディアの実売部数は明らかになっていませんし仮に明らかになったとしても横並びでの比較は難しいのですが、天文雑誌と同じくらいのリーチがあると胸を張っていえるようになるのが目標です。 「天文ファンのサークルの外」にメッセージを届ける ーもう一つのサブサイトが「編集部ブログ」ですね。 山口:はい。こちらは11月度で8278ユニークユーザー(uu)、23751ページビュー(pv)です。こちらはuuが本体よりずっと多いのですが、pvは逆にずっと少なくなっています。 ー固定ファンよりも検索エンジンやSNSから流入する人が多いからですね。 山口:その通りです。編集部ブログの場合リピーターの比率は50%ですが、本サイトの場合は90%近くもあります。ユーザーの傾向が全く異なっています。編集部ブログの月間8000のユニークユーザーのうち、半数以上は検索エンジン経由で流入し、「天リフ」というブランドを特に認知することなく帰っていく人たちです。 ーこの数字はどう評価されていますか? 山口:圧倒的に少ないと思っています。いわゆる「ブログ」的評価ではアマチュアレベルです。この程度のアクセスでは広いインターネット上ではほとんど存在感はありません。 ー天文ファンには認知が進んだが一般にはまだまだ、とうことですね。 山口:おっしゃるとおりです。固定ファンを増やすことも重要なのですが、新規ユーザーを広げていかなければ天文ファンの総数は人口減と同じスピードで減る一方です。 「天文屋のサークルの外」にもっとメッセージが届くようにしていかなくてはなりません。 天文分野の総合ポータルを目指す ー天文ファンに対しては天文雑誌並みのリーチを獲得し、さらにその外までメッセージを届かせることが課題ということですね。具体的にはどんな施策を考えているのですか? 山口:2018年の最大の課題は「総合ポータル化」です。第二回でベンチマークとして「ヤマケイオンライン」を比較に挙げましたが、天文分野であのくらいの情報カバレッジをもつポータルとしていきます。 ーポータル化といいますと具体的にはどのようなことでしょうか? 山口:今の天リフ「本サイト」は、直近の情報をざっくり整理しただけで何日かするとどんどん情報が「落ちて」いきますよね。このような「フロー」の情報だけでは不十分です。 ーなるほど。現在の「本サイト」は「天リフニュース」のようなものですね。 山口:まさしく。ニュースという切り口は乱暴にいえば時間順に並べるだけなので簡単に実現できましたが、もう少し整理しストックしていこうというわけです。 ーとすると、そのうちに「真・天リフ」のようなものができて、そこから「天リフニュース」や「天リフ星景写真」とか「天リフナローバンド」のようなサブサイトに飛ぶような形ですか? 山口:それもひとつの方法ですね。サイトの情報デザインをどうしていくのかは慎重に考えています。あまり一気に変わってしまっても読者が戸惑ってしまいますから。 有料コンテンツよりも優良コンテンツ ー総合ポータル化にはシステム面でもパワーが必要そうですね。 山口:はい。そこが悩みどころです。私自身エンジニアですので自分でやれば外注費はかからないのですが、一人でやれることには限りがあります。3ヶ月コンテンツ更新を止めて専念すればできるのですがそういうわけにもいきません。できるだけ少ない開発量で実現する方法を考えているところです。 ー会員登録制は導入するのですか? 山口:悩ましいところです。個人情報をきちんと扱うにはもっとシステムを堅固にしなければなりませんし、登録以上のメリットをユーザにもたらすものでなければなりません。来年度中に導入することはたぶんないでしょう。 ー有料コンテンツを導入するにも会員登録が必要です。 山口:先にも言った話ですが、インターネットの黎明期にメディアがコンテンツを検索エンジンに無料で渡してしまったのは最大の戦略ミスです。その結果、本来あるべきではない世界ができてしまいました。 でも一度できあがってしまった世界を変えていくのには長い時間が必要です。天リフの規模ではそんな大それたチャレンジに参加することは無理です。当面、ひょっとしたら私の生きている間くらいは、コンテンツを有料化することはないでしょう。それよりも「優良コンテンツ」を生産することの方がずっと大事です。 事業として軌道に乗せないと始まらない ーコンテンツの有料化を考えないということは、現状の広告モデルで事業を維持することになりますね。 山口:はい。2018年度中になんとか生活の収支を改善しなければなりません^^; とりあえず食える目処をつけること。実はこれが一番優先度が高いです。 ー目処はありますか? 山口:現在の天リフの5社のお客様のうち、天文雑誌にも出広されているのは1社のみです。その意味で、天リフは新しいマーケットに「少しは切り込めた」といえると思っています。まず、この実績を元に「天文雑誌に出広していない、小規模でもしっかりした実績を持つスポンサー」を増やしていきたいと考えています。 ー課題は「大手」ですね。 山口:はい。望遠鏡メーカー・天文ショップ・カメラメーカーの3つの分野にどこまで切り込めるかですね。誰の目から見ても「こういうサイトなら広告を出すべきだ」という段階(=総合ポータル化)にいかにして早く到達するかだと思っています。 「一人メディア」でどこまで進めるのか ー天リフさんは「編集部」とか「編集長」とか名乗られていますが、実はお一人ですべてをやられています。今後もそれでやりきれるのでしょうか? 山口:痛いところを突きますね。私は編集者であり、ライターであり、エンジニアであり、営業でもあり、そして一人の天文ファンでもあります。正直もう業務量はかなり限界に近くなってきています。 ーこのインタビュー記事もかなりのパワーをかけられましたね・・ 山口:はい。丸一週間かかっています。天リフにとっては実に大きな投資です^^;;他にもいろいろ仕掛かっている連載や仕事があり、早くこの待ち行列を片付けなくてはなりません。 2017年はとにかく全ての機会にチャレンジしました。2018年はもう少し絞り込んでゆく必要があると思っています。また、オリジナル記事も生産性・効率性をより重視しなくてはなりません。 ー根本的な解決方法はないのでしょうか? 山口:「一人でやらない」ことですね。当初の「第三者が発信した情報のまとめ役により徹する」というキュレーションの方向によりシフトするということです。 また、商品のレビューやプロモーションにおいては、天リフをハブにして発信力のある読者とスポンサー様の間に立つような形を考えていて、これはすでに始まっています。 ー外部ライターに記事を書いてもらうような方向性も? 山口:今はライター様に対価をお支払いできる段階ではありませんが、事業基盤が安定してくればそれは当然やるべきオプションです。2019年度には実現していきたいところです。 天文界のために再投資するサイクルの実現 ー総合ポータルとしての形ができ、ユーザーが目標の規模になり、めでたく生活の目処がついたら、その後どうしてゆくのですか? 山口:当初はアドネットワークからの収益だけで細々と一人静かに星を眺めて暮らすことを夢見ていました。いわゆる「あがり」状態です。でもどうやら天文マーケットは小さすぎてその方向性での成功は難しそうです。 今は、もし天リフが成功するとしたら、その時点で天リフは天文ファンと天文業界からある「付託」を受けることを意味すると思っています。「食わしてやる代わりに天文界のためにがんばれ」というわけです。 ーそれはメディアと読者、メディアと業界の本来あるべき関係なのかもしれませんね。 山口:そうかもしれません。両者のバランスはいろいろなケースがあると思いますが、メディアとして食っていくと決めた以上はそれを忘れてはならないと思っています。 ー生活の目処以上に儲かったらどうされますか? 山口:再投資です。天文界にお返しをすること。天リフ自身が広告を投下してユーザーを広げたり、天文イベントに自らがスポンサーとなることや、機材を自社で購入し読者に貸し出してレビューしてもらったり、お金さえあれば使い方はいくらでもあります。 「今日の一枚」も「読者の天体写真」のように何らか著作権者様に対価をお支払いする形に将来していきたいと思っていますし。でも全ては収益化できてからの話です。 天リフをいつまで続けられるのか ー大手の企業様とビジネスされるのであれば、事業の信用と継続性をより問われると思いますが、そこについてはいかがですか? 山口:少なくとも事業が軌道に乗る前にその課題は解決せざるを得ないでしょう。いまの状態では私が病気で入院したら全てが止まり、死んだら終わりです。よほどの必然性とメリットが企業様にあれば話は別ですが、信用と継続性はなんらか担保しなければならないと思っています。 ーそれは法人化して従業員を雇うということなのでしょうか? 山口:うーん。今の時点では法人化のメリットも、従業員を雇用する体力もどちらもありません。天文のようなマーケットの小さい分野では「一人事業者」の問題はメディアに限った話ではありません。独創性のある技術と製品をもつ事業者の多くは専業ではなかったり、個人事業に近い形であるのが現状です。 一般のコンシューマープロダクト、メディアとは全く違った発想が必要なのかもしれません。 ーそれは例えばどんな発想でしょうか? ひとつは「フルタイムの事業」としての存続をそもそも前提としないことです。週に16時間で運営できることを副業としてやる。一人ではなく同じ志を持つ者が協力し合って運営する。ITで場所の壁はもうほとんどありませんし、効率の面でも大幅な向上が可能なはずです。天文趣味がいわゆる「限界集落」のような趣味セグメントであるならば、否応なくそうするしかないでしょう。もしそうなれば私はこの年で職探しをしなければなりませんがw ー天文趣味が「限界集落」なのかどうかは大きな分かれ目ですね。 個人的にはそうではないと信じていますが、「副業ネットワーク」の力を生かすことは、天文に限らず多くのマイナー分野で今後重要になると考えています。 そういう将来の姿を見据えた上で「1億円出してもいいよ」というようなエンジェルが見つかって、既存のメディアとがっぷり組むような形ができればいいんですけどね・・・ ーカドカワの川上社長にビデオメッセージ送りますかw 山口:ははは・・・ http://reflexions.jp/blog/ed_tenmon/archives/2945 まとめ ー全六回、妄想全開で語っていただきましたが、最後に読者にメッセージをどうぞ。 山口:この1年、いろいろ考えてきたことを半分くらいは整理して吐き出すことができたと思っています。期せずして?半生を振り返ることにもなり、まあ自分にとってはいい振り返りにもなりました。 すこし盛ったり脚色もありますが、ほとんどは正直な語りです。このテクストを読んで何かに共感していただければ、そしてそれが天リフと天文界の発展に繋がれば、これほど嬉しいことはありません^^ 最後まで読んで下さった方がどのくらいなのか恐ろしいですが、本当にありがとうございます。天リフの2018年にぜひ変わらぬご声援をお願い申し上げます。 皆様の2018年が素晴らしい年になりますように! 編集部山口 千宗kojiro7inukai@gmail.comAdministrator天文リフレクションズ編集長です。天リフOriginal
こんにちは
ロングインタビュー、興味深く読ませていただきました
僕は山口さんと同年代の、いち天文ファンです
ichiとしておきます
実はスターリフレクションズからのファンです
一つだけ意見を言わせて下さい
コアな天文ファンは、山口さんやよっちんさんのオーラで、勝手に集まって来ると思います
そこでサークル的ななあなあに、なってしまうと、外側の人は余程のベクトルを持っていないと入ってこれなくなると思います
これから裾野を広げていくには、まず一般大衆に「星空は綺麗だな」って思ってもらう事が一番大切なのだと思います
多分、大多数の人が、星空の美しさを実感できると思うし、その感動を欲していると思います
星空プラスアウトドア、星空プラス登山、星空プラスキャンプ、星空プラス外ご飯
そんな間口の広いサイトを構築していってほしいと思います
もっともっと、隙間に入ったスモールビジネスを実践して、ファンを獲得しているアウトフィッターがたくさんいます
是非頑張って下さい
言いたい事がまとまらず、支離滅裂で申し訳ありません
でも、とても応援したいと思い、コメントさせてもらいました
ichiさん
貴重なご意見、そして応援ありがとうございます。星空と何か。間口の広いサイト。もっと気軽に多くの人が楽しめて、さまざまな楽しみ方のパスを案内できる、そんなサイトを目指したいと思います。
初めまして。
まとめて6回分興味深く拝見いたしました。
名前は、niとします。天文ファンです。増々の雄飛を強くお祈りいたします。
1週間ほど前、公園で改造工作の検証のため望遠鏡を組み立てていると、小さいお子さんと犬(おばあさん犬だそうです)とお父さんが寄ってきました。定番の木星と土星を取り急ぎ見ていただきました。興味を持ってご覧になっていたと思います。おかあんさんが待ってる、ごはん、と帰っていきました。興味を持つ人は多いのです。ヨドバシカメラでも、おじいさんが孫のために望遠鏡コーナーで店員さんと話し込んでいたのを見ました。
キーは、まず子供、そして子供を思い家庭の中心でもある母親だと思います。
子供の将来のためになると思えば、天文の立ち位置、家庭内での扱いは大きく変わると思います。そのためには、
(ここから、小生の妄想が始まります)
天文・宇宙人が、もっとかっこよくなる。
かっこよいの目指す具体的意味は、例えば、
1、ライフスタイルがかっこよい
2、人類の未来を拓く姿が知的で献身的でかっこよい
3、天文や宇宙をやると、経済的に普通に平均以上の生活が期待できる。
4、誠実な性格が期待できて、ある程度ボケもはいっていて、幸せな家庭が見えて、娘の夫(息子の妻)としてGOOD
5、可能であれば、星男女は各人それなりに、もっと可愛く、あるいは、もっとおしゃれになる
具体策としては、(ますます妄想が入る)
ある意味、俗になっておたく度が低くなる領域も発生するとは思うが、
1.文科省への教育指導要領変更ロビーイング
2.経済特区に宇宙教育を紛れ込ませる
3.天文・宇宙関係者がもっとマスコミに出る。
4.宇宙関係、天文関係のステイタスが自然に上がるように産業構造をもっと未来志向に変えていく。生物および道具の進化を物凄い長い目で見れば、宇宙に出ていくと感じるんですよ。僕は。
それに対処するためには、例えば、スターリンク等は大目に見て、それを駆動エネルギーとして、とにかく安価な高速通信による知的経済のパイ拡大と各国の人の行き来の速度を増やし、雇用拡大と各国知識の攪拌、結果として、宗教や思想の緊張緩和が進むようにする。スターリンクの拡大の条件に、宇宙観測のための宇宙プラットホームを設けるのを義務付ける、当初は共用の宇宙観測衛星。のちには宇宙エレベータで上に登り、観測デッキから天候に左右されずにディープスカイを撮れるようにする。例えば、なんとか同好会の観測所とかも可とする。月面基地もいいなあ。
5.天リフは、宇宙や天文に関する、情報や人材(宇宙法律事務所、宇宙特許事務所、宇宙税務会計事務所等)のポータルサイトとなる。
あらゆることには、作用があれば、反作用がある。それも受け止めつつ、我々を含む未来の何かに光あれ。
乱筆長文失礼いたしました。
お気に障る点ありましたら、どうぞ即削除お願いいたします。