今城雅彦さんの作品。天リフギャラリーFB分室へのご投稿です。満月の1日前、10/13の晩の月の姿です。

古くから、天文ファン向けのガイドブックなどでは「満月前後の月は、月面に太陽の光が正面から射す関係で、地形の凹凸が良く見えない”のっぺらぼうの月”になってしまうため、あまり見て面白いものではない」と書かれることが一般的でした。

しかし、最近「満月前後の月は実は面白い」という意見が増えてきています。この作品をじっくりと眺めれば、その理由の半分がわかるはず。左上を中心にぐるりと月の周囲の半分をとりまく欠け際では、いくつものクレーターがシャープに見え、正面から照らされて「影がほとんどない」はずのコペルニクスやアペニン山脈でさえ、白く輝くクレーターの外周壁と、暗い「海」の対比が美しく見えています。

2019/10/13 20:38 INTES MICRO ALTER-7N(D=18cm fl=1080mm マクストフニュートン) エクステンダーPH (fl=1512mm F8.4) FujiFilm X-T20 ISO200 1/400s 227枚 FujiFilm RAF(RAW)ファイルをTIFFファイルに変換してAS!3にてスタック AutoStakkert!3 Frame percentage to stack 65% RegiStax6にてかなり弱めのWavelet処理後に macOS Previewにてレタッチ

この作品は、口径18cmのマクストフ・ニュートン鏡筒で、モザイクではなく1コマで月全体をとらえたもの。月の全体を1枚でシャープにとらえるには、ディープスカイの撮影と同様に、像面が平坦で周辺まで高い結像性能が必要ですが、ビクセンのエクステンダーPHとの相性も良いのでしょうか、月面全面にわたって素晴らしい鋭像。じっくり見ればみるほど、さまざまな地形が写し込まれていることが分かります。以下、この画像を部分的にトリミングしてみました。

 

トリミングで切り出し

そのコペルニクス(中央やや右)付近。周辺の無数のクレーターを含めて、その多くに、白く丸く輝くリムと中央丘の存在を認めることができます。

トリミングで切り出し

虹の入り江周辺。右のきれいな丸いクレーターがプラトー、左の白く輝くクレーターがアリスタルコス。なぜこんなに違う個性が生まれたのか、不思議なものですね。

 

トリミングで切り出し

無数の光条をまとう「ティコ(中央やや右)」。 左下の月の縁がでこぼこしているのは、月の地形の凹凸を真横から見ているから。月のこちら側が全部見えている満月、当然ですが、あますことなく月の名所巡りが可能なのです。

中川光学研究室ブログ「満月の夜が好きになる。期待以上。ムーンフィルター」
http://nakagawa-opticslab.blog.jp/archives/18908968.html

「満月が面白い」という情報は、最近特にサイトロンジャパンの「中川昇」師が積極的に発信されています。その代表作が上の記事。ぜひごらんいただきたいのですが、満月がこれまで避けられることが多かったのがその「まぶしさ」。眼視では明るすぎて目が眩み「面白い」どころではなかったのではないか、適切なフィルターを使って減光することで本来の面白さが楽しめる、というのが中川師のメッセージ。

日々姿を変える月面の地形・四日間での変化

もうひとつ。欠け際から中央まで、月面上での太陽の高度角は0°から90°まで変わるわけですが、月の地形はどの高度角であってもそれぞれ違った見え方をするのであって、特定の高度角だけを「見ごろ」とするのはちょっと違うのではないか、という意見も出てきています。

月は太古の昔からほぼ同じ姿を見せているはずなのに、見方ひとつで月に対する認識が変わってくるのが面白いところですね。筆者も、次の遠征では月をしっかり楽しめる準備もしていこうと思います^^

https://reflexions.jp/tenref/gallery/wp-content/uploads/sites/3/2019/10/34c3c89f98fc0e925db5fb37e2c98529-1015x1024.jpghttps://reflexions.jp/tenref/gallery/wp-content/uploads/sites/3/2019/10/34c3c89f98fc0e925db5fb37e2c98529-150x150.jpg編集部新着今城雅彦さんの作品。天リフギャラリーFB分室へのご投稿です。満月の1日前、10/13の晩の月の姿です。 古くから、天文ファン向けのガイドブックなどでは「満月前後の月は、月面に太陽の光が正面から射す関係で、地形の凹凸が良く見えない”のっぺらぼうの月”になってしまうため、あまり見て面白いものではない」と書かれることが一般的でした。 しかし、最近「満月前後の月は実は面白い」という意見が増えてきています。この作品をじっくりと眺めれば、その理由の半分がわかるはず。左上を中心にぐるりと月の周囲の半分をとりまく欠け際では、いくつものクレーターがシャープに見え、正面から照らされて「影がほとんどない」はずのコペルニクスやアペニン山脈でさえ、白く輝くクレーターの外周壁と、暗い「海」の対比が美しく見えています。 この作品は、口径18cmのマクストフ・ニュートン鏡筒で、モザイクではなく1コマで月全体をとらえたもの。月の全体を1枚でシャープにとらえるには、ディープスカイの撮影と同様に、像面が平坦で周辺まで高い結像性能が必要ですが、ビクセンのエクステンダーPHとの相性も良いのでしょうか、月面全面にわたって素晴らしい鋭像。じっくり見ればみるほど、さまざまな地形が写し込まれていることが分かります。以下、この画像を部分的にトリミングしてみました。   そのコペルニクス(中央やや右)付近。周辺の無数のクレーターを含めて、その多くに、白く丸く輝くリムと中央丘の存在を認めることができます。 虹の入り江周辺。右のきれいな丸いクレーターがプラトー、左の白く輝くクレーターがアリスタルコス。なぜこんなに違う個性が生まれたのか、不思議なものですね。   無数の光条をまとう「ティコ(中央やや右)」。 左下の月の縁がでこぼこしているのは、月の地形の凹凸を真横から見ているから。月のこちら側が全部見えている満月、当然ですが、あますことなく月の名所巡りが可能なのです。 中川光学研究室ブログ「満月の夜が好きになる。期待以上。ムーンフィルター」 http://nakagawa-opticslab.blog.jp/archives/18908968.html 「満月が面白い」という情報は、最近特にサイトロンジャパンの「中川昇」師が積極的に発信されています。その代表作が上の記事。ぜひごらんいただきたいのですが、満月がこれまで避けられることが多かったのがその「まぶしさ」。眼視では明るすぎて目が眩み「面白い」どころではなかったのではないか、適切なフィルターを使って減光することで本来の面白さが楽しめる、というのが中川師のメッセージ。 https://reflexions.jp/tenref/gallery/2018/08/08/5876/ もうひとつ。欠け際から中央まで、月面上での太陽の高度角は0°から90°まで変わるわけですが、月の地形はどの高度角であってもそれぞれ違った見え方をするのであって、特定の高度角だけを「見ごろ」とするのはちょっと違うのではないか、という意見も出てきています。 月は太古の昔からほぼ同じ姿を見せているはずなのに、見方ひとつで月に対する認識が変わってくるのが面白いところですね。筆者も、次の遠征では月をしっかり楽しめる準備もしていこうと思います^^読者の傑作画像をピックアップ