小石原で85mmで撮影したsh2-310ですが、かねてから確認したいと思っていたα7Sの「星喰い現象」の検証の目的もありました。

補足すると、「星喰い現象」とは、α7Sの画像処理エンジンが微光星をボロボロにしてしまうという厄介な現象で、B(バルブ)モードなど特定のカメラ設定の下で発生します。

参考)
α7s・バルブ露出時の画質問題
α7s・バルブ露出時の画質問題その2

左:Mモード30秒ISO12800*1コマ
右:Bモード240秒ISO6400*1コマ
ダーク、フラットなし

まずは1コマ撮りの比較画像。
露出時間が3EV(8倍)違うので右の方が低ノイズなのは当然としても、星の写りは1枚撮りの方が鮮明。
○で囲んだところが星食い現象の荒れが顕著な部分です。
画像処理エンジンが画像のエッジ部分を削ってしまい、星が消えたり、ちぎれたようになっています。

 

左:Mモード30秒ISO12800*8コマ
右:Bモード240秒ISO6400*1コマ
ダーク、フラットなし

同じ露出時間になるように、30秒露出は8枚コンポジットしてみました。微光星のディテールの差はますます顕著に。
ノイズ感も左の方がいい感じ。
ちなみに、1pxの白い点々はダークパターンノイズです。α7Sの場合、EOSと違って小さい輝度の低いパターンノイズが多く出ます(EOSは輝度の高いパターンノイズがまばらに出る)

 

 

この星喰い現象を知って以来、私はα7SではBモードは封印し、30秒露出の高ISO(8000〜)でのみ撮影してきました。

ところが、SNSの投稿や天文雑誌の入選作を見ると、α7Sで10分とか15分で撮影された素晴らしい作例がぽつぽつあります。(小石原の主、M我U宙さんもそのお一人)

「淡い広がった対象では星喰い現象は大きな問題にならないのではないか」というのがその中での仮説です。

 


左:Mモード30秒ISO12800*135コマ 総露出67分
ダーク30、フラット20
右:Bモード240秒ISO6400*20コマ 総露出80分
ダーク16、フラット20

コンポジット画像の比較。
左がMモード30秒、右がBモード4分。総露出時間は30秒バージョンの方が15%ほど少ない状態。

星のディテール(というか極限等級)は、明らかにMモード30秒バージョンの方が良くみえますね。Bモード4分は、微光星がより淡くすこし広がって見えます。
ただ、「ランダムな星喰い」は平均化されて、「汚さ」はなくなりました。


左:Mモード30秒ISO12800*135コマ 総露出67分
ダーク30、フラット20
右:Bモード240秒ISO6400*20コマ 総露出80分
ダーク16、フラット20

上の画像をレベル調整とトーンカーブのみで、強めに淡い部分を持ち上げてみました。
強調すると、240秒Bモードの方の淡く広がった微光星はやや大きめになり最微光星は星喰いで消されてしまったように見えます。その一方、淡い部分がより「見えている」ような気がしないでもありません・・やや微妙ですが。
この2枚なら、「一長一短」と評価できるのではないでしょうか。

 

さらに拡大した画像。
強拡大すると、星喰いによる汚さが目立ってきます。
ただ、100枚くらい(総露出5時間!)重ねれば星喰いが平均化されて評価が逆転するかも??

ここまでの結論をまとめておきます。

  • 星喰い現象が画質を悪化させる問題仕様であることは事実。
  • 多数枚コンポジットにより星喰いのデメリットは軽減される。
  • 特に、淡い星雲の描出に限っては、多数枚コンポジットにより星喰いのデメリットはほぼ感じられなくなる。

これまでの経験的感覚では、光量が極端に少ない状態で30秒縛りにすると、ヒストグラムが左に貼り付いた超アンダー画像になってしまい、α独特の「細かいダークパターンノイズ」の悪影響をより強く受ける気がしています。

今回使用したレンズが85mmArtという星像径の小さな(最小2px角)レンズだったというのも影響しているのかもしれません。
星像が大きな光学系であれば、もっと差が縮まるかも。

F値の暗い光学系やナローバンドの場合は、30秒縛りにこだわらずBモードで露出時間を長くするのも選択肢としてありそうです。
両方を撮影して合成するのもありかも。
長焦点でのO3、S2画像で次回試してみたいと思います。

 

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