短時間露出を多数枚コンポジットする場合、斜め方向に縞状のノイズが出ることがある。

この現象はネット上ではずいぶん報告されていて、諸説あったが、原因はほぼ明らかになっている。
DSQ106ED +1.6EX α7s バーダーHα7nm
ISO16000 light:2分×80、dark:20、flat:40
SXP+GT40+watec910EXビデオガイド 自宅ベランダにて
縞ノイズが顕著に表れた例。
2分露出の80枚なので、2時間40分間かけて撮影したことになる。
オートガイドしているとはいえ、このくらいの長時間の中では機材のたわみや極軸のずれによる回転などによって、写野が微妙にずれていくことになる。

80枚の画像から10枚ほど抜き取って比較明合成してみた。

2時間40分の間にこれだけずれたのである。
最終画像と見比べてみると、縞ノイズの方向とガイドのズレがほぼ一致していることがわかる。画面右上のさらに右上を中心に回転しているように見える。
今回の場合、極軸を目分量で合わせているために回転ズレが出たのだろう。
このガイドのずれは、コマ単位でDeepSkyStackerが自動で位置合わせをしてしまうので、最終画像には出てこない。
一方で、ダークノイズのようなセンサー固有のノイズ成分はコマ毎にずれているわけではないので、逆にコンポジット時の位置合わせによってずれてしまうことなる。

縞ノイズ発生の原理
まとめると、縞ノイズ現象は以下の2つの原因の組み合わせによって発生する。
1)センサーの画素に固有のノイズ
2)撮影対象の規則的なズレ
つまり、完璧なガイドができていれば発生しないし、完璧なノイズ処理ができていれば発生しないことになる。
本作例の場合は、1)にも問題があった。ダークの温度が合っていなかったのである。

使用したダークファイル。
実はこの日は寝落ちしてしまったので、撮影の終了(02時ごろ)から2時間ほど経ってからダーク撮像を開始した。そのときには撮影時の気温より低くなっていたのだろう。

さらに、ダーク撮像開始時点で冷え切っていたカメラが、徐々に暖まっていったものと考えられる。ファイルサイズを見ると、ダーク撮影開始から徐々にファイルサイズが増えている。暖まることによってダークノイズが増えていったのだろう。ファイルサイズだけ見ると、安定するまでに30分以上かかっている。

原因はわかった。では解決方法は?

ガイドのずれがノイズを引きずって縞になるのだから、ずれをひきずらないように、ランダムに散らせばよい。この手法をDitheringというらしい。
最近自分が実践しているのは、10コマくらい毎にガイド星を上下左右にランダムにほんのすこしずらしている。これによって引きずった縞が平均化されて目立たなくなる。

もうひとつは、センサー固有のノイズを減らすこと。
縞ノイズが出るということは、ダーク、フラット、画像処理などの撮像ワークフローのどこかでノイズ対策がうまくできていない可能性が高い。
自分の場合ダークの不一致だったが、それはフラットにあるのかも知れないし、画像処理のどこかの過程で意図せずノイズが残ったり、意図せずノイズ低減処理がされているのかもしれない。(ノイズ低減した画像からさらにノイズ成分を減算すれば、当然過補正になってしまう)

また、カメラ側の画像処理に原因がある可能性も考えられる。
ダーク減算によるノイズ低減手法では、「ダークもフラットも、同じ成分のノイズが乗っている」ことを前提としているが、カメラ側が独自のノイズ低減をしているのであればこの前提が変わってしまうことになる。

このあたりは千差万別、個別にいろいろ調べてみるしかない。

というわけで、縞ノイズ問題は一区切り。

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