JILVA-170は、極軸合わせのための高度・方位微動装置を含めて一つのシステムになっています。
高橋のEMシリーズやビクセンのSXなど、中型・大型の赤道儀では普通ですが、
ポタ赤ではオプションになっていたり省略されているものが多いですね。

どちらが良いとは言えませんが、JILVA-170の高度・方位微動装置は、非常に良くできていると感じました。
ほぼ汎用品のアルミ材だけの組み合わせで、加工が容易で、しかも頑丈な構造。

以下思わぬ長文になってしまいましたが、インプレッションです。

高度・方位微動装置の外観。
上の2つの黒いつまみが高度微動。
下の2つのつまみが水平微動です。



高度微動は他にあまり見ない、押しネジと引きネジが親子になった独特の構造になっています。
大きいつまみが押しネジ。小さいつまみが引きネジ。この2つで本体をしっかり固定することができます。



高度微動のつまみを取り外したところ。
押しネジが中空になっていて、引きネジが中を通るようになっています。




高度微動のネジを外した状態の本体。
下側の2つの六角形のアルミブロックは本体にしっかりと固定されています。
このブロックが左右のアームにネジ止めされ、これを軸に本体が5度くらいの角度で上下に回転します。



本体・同架機材の重量は、六角形のブロックを介して一つの軸で支えられる形になります。
これを押しネジ・引きネジの一点で微調節します。
重量の大半は頑丈な軸で支え、微動部には無理な重力がかからない合理的な設計ですね。
実際、この部分のがたつきや遊びは全くといっていいほどありません。
弱点があるとすれば、可動範囲が少ないことでしょうか。
三脚や、後述する台座部部分で、ある程度角度を合わせておく必要があります。
こちらは水平微動部。
左右の大きなつまみで、小さなアルミのコマを押して回転させます。
つまみのネジ部が長いのは、三脚との干渉を避けるためだそうです。
使用する三脚によっては、短いネジに換装するのも簡単です。
(ネジはホームセンターで「ノブスター」という商品名で売られているそうです)




水平微動の左右のネジ(通称「押し押しネジ」)とコマを拡大したところ。
コマはキャップスクリューで取り付けられています。




本体を取り外して、水平微動部だけを取りだしたところ。
水平微動部は、下の三角形のつまみが付いたネジを軸に回転します。





水平微動部を支える、円形の厚い台座を取り外したところ。
この台座はジッツォ三脚と互換になっていて、ジッツォ三脚にはそのまま装着できます。

台座の上には、押し押しネジが挟み込む小さなコマがキャップスクリューで取り付けられています。
自分の実機は、このコマが緩く止められていて、押し押しネジが挟み込むと2ミリほど浮く状態でした。
そのままの状態でも強い荷重がかかるわけではないのでかまわないということでしょうか。
自分はコマと台座の間にワッシャを追加して、キャップスクリューは少し弱めに締めました。

もう少しコマを大きくすれば、押し押しネジのはまるザグリは不要になる気もするのですが、このあたりの設計意図は不明です。
あまり押し押しネジを強く締めこみすぎると、そのうちザグリ穴がひろがって、しまいには割れてしまわないかとちょっと心配です。




水平微動部のコマを拡大したところ。
上のザグリ穴に片側の押しネジがはまりこむ形になります。
下に空いている小さな穴は、試作段階の穴でしょうか。
イモネジでコマを固定する構想だったのかも知れません。




水平微動部を下側から見たところ。
穴がいっぱい空いていますが、実際に使うのは一番下の1個だけです(^^;)
この部分が、丸い三脚台座にぴったりと乗っかって、三角形のつまみのネジを軸に水平回転します。
機材の重量は軸ではなく面で受けて、小さな軸を中心に微動するという考え方です。
高橋やビクセンの赤道儀の場合は、重量を太い軸で受けその軸を中心に微動するため、どうしても軸が太くなり大型化します。
この設計だと、軸はM6のネジ一本ですから、ずっと小型化できます。これも合理的な設計ですね。
円形台座には、カメラ三脚への装着を想定した太ネジ(上、3/8インチ)と細ネジ(下、1/4インチ)の穴が一つづつ空いています。
太ネジにねじ込んでもいいのですが、重量機材を一点止めでカメラ三脚にねじ込むのはあまり使い勝手の良いものではありません。

なので,小型のアルカスイスプレートを介して三脚に取り付けることにしました。
これなら装着は簡単。
欲を言えば、一点止めではなく二点止めできるようなネジ穴が欲しいところです




水平微動部と本体を支える二本のアームは二本のキャップスクリューでネジ止めしますが、
このようにやや細長いバカ穴になっています。
これによって水平角度を10度程度調整できるようになっています。
この状態は九州仕様。
沖縄や八重山に行く場合は、三脚で調整する形になるでしょう。



こちらは北海道仕様(^^)
アラスカくらいなら、三脚の調整でなんとかなるかな。

この二本のアームはt5のアルミ板ステンレス板を切り出して穴を開けたシンプルなものです。
高緯度・低緯度対応のスペシャルアームを製造するのはさほど難しくはないでしょう。
ただあまり低緯度になると、重心が六角ブロックを越えてしまい、安定度に若干の心配がありそうです。

次回は「ベンチアーム」の予定です。




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