みなさんこんにちは!
「オトナ」が「余暇をより充実して過ごすことができる」、星空を見るという最高の遊び「天文趣味」。そのための最高のパートナーが、前編でご紹介した「SV503天体望遠鏡」でした!
この後編では、そのSV503天体望遠鏡を使って、さまざまな天体を実際に見たり、撮影したりしてみたレビューをお送りします!
オールラウンド天体望遠鏡「SV503」で何が見られるか!?
オールラウンド天体望遠鏡「SV503」で何が撮れるか!?
SVBONY SV503
https://www.svbony.jp/SVBONY-SV503-Lens-barrel-OTA/#F9359B
もくじ
SV503天体望遠鏡で楽しむ宇宙
ネオワイズ彗星!
今はすっかり暗くなってしまったネオワイズ彗星ですが、「大彗星」の風格があった7月17日に、SV503で見てみました。双眼鏡の8°の視野でもはみ出すほどの大きさだったのですが、天体望遠鏡で見ると双眼鏡とは違って、彗星のより細かな部分を観察することができます。
双眼鏡と比較して、口径80mmの集光力はなかなかのもの。暗い天体をはっきり見るには、より多くの光が集められる天体望遠鏡が有利です。キラキラと光る核、そのまわりをボォッととりまく青緑色のコマ、扇形に長く伸びたダストテイル。23年ぶりに北半球で見られた大彗星の姿を堪能できました。
今回のネオワイズ彗星のような大彗星はそうそうやっては来ないのですが、肉眼でなんとか見える6等級程度の彗星は数年に一度はやってきます。派手ではないものの、尾がしっかり見える彗星もありますし、何よりも他の天体では見られない「青緑色」の神秘的な姿が楽しめます。
月を見る
きまぐれにしかやってこない彗星とは違って、月ははるかに見られるチャンスが多くなります。だいたい1/2の確率で空のどこかに月があるわけですから。口径80mm、焦点距離560mmのSV503なら、焦点距離10mm前後の接眼レンズで60倍前後で見れば、月の全体が視野にほどよく収まっていい感じです。
上の画像は、スマホのカメラを接眼レンズの眼を置く場所にかざして撮影したもので、実際に眼で見た印象もこんな感じです。もう1本、焦点距離5mm前後の接眼レンズがあれば、欠け際のクレーターなどの地形をもっと大きく見ることができるでしょう。
誰でも感じることのできる月の楽しみは、日々満ち欠けが進んでいく変化をリアルに感じることに加えて、欠け際の地形の微妙な変化を観察すること。注意深く見ていると、1時間もすれば月の影の様子が変わっていくことがわかります。
月はどんな天体望遠鏡でもそれなりに楽しむことができますが、特に欠け際や縁は明暗差が激しく、対物レンズの「色収差(色によって焦点位置がずれてしまい、青や赤の光が滲んでしまうこと)」の多寡が目立ってしまう天体です。EDレンズを使用したSV503なら、低価格のアクロマートレンズの天体望遠鏡とは一線を画したすっきりした見え味が楽しめます。
惑星を見る
対物レンズの性能差が大きく出てくるのが惑星の観察。EDレンズを採用した高性能のSV503天体望遠鏡は、高倍率の惑星観察も得意分野です。ちいさな惑星をはっきり見るなら、対物レンズの口径(mm)の2倍から4倍(口径80mmのSV503なら160倍〜320倍)くらいの思い切った高倍率で見てみましょう。
SV503の焦点距離は560mmなので、この倍率を出すには、接眼レンズの焦点距離が「1.75mm〜3.5mm」というかなりの短焦点のものが必要になります。理想はビクセンのHRアイピースや、タカハシのTOEなどの「極短焦点」の製品ですが(*)、今回はSVBONYの4mmとテレビューのRadian3mmで見てみました。
(*)「バローレンズ」を使用するという手もあります。2倍〜5倍くらいに倍率を上げて見ることができます。
木星。スマホの1枚撮りなのであんまりよく見えていませんが^^;; 肉眼ではもっとすっきりと2本+αの縞模様が見えます(*)。
(*)ただしこの印象よりはずっと小さいです。
惑星を見る上で一番大事なことは、大気の揺らぎが少ない安定した条件で見ること。日本の場合、冬場の季節風が吹き荒れる頃が最悪で、夏の太平洋高気圧に広く覆われた時期(まさに今です!)が最高だといわれています。
大気のゆらぎは、短い時間で激しく揺らいだり、一瞬静かにピタッと止まることがあります。惑星を見るときは、少し落ち着いて数分間、できれば10分間くらいは見続けてみましょう。「すごく良く見える瞬間」が訪れると、それまで見えなかった細かな惑星面の様子が見られることがあります。
スマホ+SV503天体望遠鏡で木星。お月さま全体の撮影は倍率が低いので簡単ですが小さな惑星の場合はぐぐっと難度が上がります。7つくらいトラップがありました^_^;;; #天文なう pic.twitter.com/Q3Oim5GPgk
— 天リフ編集部 (@tenmonReflexion) July 29, 2020
その印象を動画で撮影してみました。惑星の縁がゆらゆら揺れているのが、大気による影響です。幸いなことに、木星・土星・火星の3大惑星は、ここ数年夏場が見ごろになります。特に今年の夏は10月に火星の「準大接近」を控えていて、土星と木星は夕方の南の空に並んで見えています。惑星を見るなら、今年の夏から秋が大チャンスです。
上の画像はSV503で撮影したものではありませんが、SV503であれば条件がよければこのくらいには見えます。ぜひ3大惑星の違いを自分の眼で確かめてみてください!
天の川のキラ星を見る〜星雲星団探訪
月や惑星は市街地や自宅でもじゅうぶん楽しめますが、天体望遠鏡を空の暗い郊外に持ち出して、天の川のキラ星たちにもぜひトライしてみましょう。最高の星空を求めだすときりがありませんが、大都市や市街地からできるだけ離れた、空の澄んだ広い場所に行ってみましょう。関東地方なら、伊豆・房総・奥多摩など、50〜100kmほどは移動する必要がありますが、逆に高速道がよく整備されているので比較的手軽に行くことができます。
天体望遠鏡を使った星空観望の一番のオススメは「散開星団」です。星は面積がほぼゼロの点光源なので(*)、星の輝きはほぼ口径の二乗に比例します。口径80mmのSV503の場合、口径40mmの双眼鏡の4倍星が輝いてみえる勘定です。無数の星々、そして明るい星の色の違いにため息が出ることでしょう。
(*)天の川の星々を見る場合、対物レンズの「色収差」などの光学性能には比較的寛容です。星団などを見る場合は光学性能はやや劣っていても口径が大きい方が迫力があります。しかし、惑星や月の場合は光学性能も大きな要素になります。その意味で、EDレンズを使用したSV503天体望遠鏡は「オールラウンド」な性能だといえます。
星がよく見える場所なら、特に対象の場所を知らなくても、天の川に沿って適当に望遠鏡を流すだけでも楽しむことができますが、やはり見て面白い天体はあらかじめチェックしておきたいものです。
星雲星団探訪のよいガイドブックは、絶版になってしまったものも含めて数多く刊行されています。古くても良い本は古書扱いで簡単にアマゾンで手に入ります。ぜひ一冊、薄めの本を入手されることをオススメします。
もうひとつ、夏の星雲星団のナンバーワン、いて座の「干潟星雲」も見てみました。天体写真では赤い星雲が上の画像の視野ほぼいっぱいに広がっているのですが、肉眼では中心部の青い色で光っている部分が観察できます(*)。明るい散開星団を含んでいて、小型の天体望遠鏡でもたっぷり楽しめる天体です。
(*)天体写真で派手に写る「赤い星雲」の光は、人間の眼にとっては感度がとても低いため、全く違った見え方になります。
最後に、有名な「アンドロメダ銀河(大星雲)」を見てみました。散開星団ほどの派手さはありませんが、口径が80mmあれば、はるか遠くにある「銀河」も見ることができます。これらの銀河は、ほんの数十〜数百光年先(それでもめっちゃ遠いのですけど)にある肉眼で見えるような恒星とは違って、数百万・数千万光年のはるか彼方にあります。「自分の眼で見た最も遠くの存在」の記録をぜひ更新してみてください!
太陽面を観察する
製造物責任が厳しく問われてしまう昨今、失明や機材の破損のリスクのある太陽の観察はすっかり「日陰者」扱いになってしまいました。個人的には残念なことです。さらに、今現在は太陽の黒点は歴史的に低レベルな状態にあり、「一つも黒点がない」日がごく普通のような状況です。
それでも、黒点を観察するのは面白いものです。折角なので試してみました。筆者のオススメは、上の画像のように「天頂プリズム(ミラー)」で光を90°折り曲げて、白い紙に太陽を投影する方法です。これなら、比較的手軽に危険も少なく(*)楽しむことができます。
(*)警告 太陽を観察する際は、絶対に直接太陽を見ないでください。網膜が焼け一発で失明します。たとえ安全な方法をとったとしても長時間の観察も禁物(*)です。投影式の観察の場合でも、接眼レンズが熱せられ、プラ製のレンズ・筐体の場合は溶けてしまったりレンズの貼り合わせ面が焼けてしまったり、最悪は発火の危険があります。
(*)筆者は長くても20秒ほどにどどめています。観察が終わったらすぐに望遠鏡の向きを大きくずらして、太陽の光が鏡筒内に入らないようにします。接眼レンズから太陽の光が出ていないように見えても、鏡筒の側面に焦点を結んでいる場合もあります。うっかり覗かないように、下に向けるくらいの配慮が必要です。
この日は久しぶりに小さな小さな黒点が一つだけありました!紙に付着したゴミと見まがうほど^^;;こんな小さな黒点でも、毎日観察すると形が微妙に変わってゆくのと、太陽の自転(約27日周期)によって太陽面を回転していくことが観察できます。あと数年?して、太陽活動が活発になってくれば、今よりもずっと楽しめるようになることでしょう。
天体写真の撮影
スマホでお手軽撮影
時代はスマートフォン!スマホのカメラのお手軽さは圧倒的ですが、近年は感度も大幅に向上し、やや暗めの天体であってもしっかり撮れるようになってきました。SV503で天体写真を始めるなら、スマホを使った月の撮影が入門コースです。
撮影方法は簡単。接眼レンズを眼で覗くのと同じように、接眼レンズにスマホをかざしてシャッターを切るだけです。細かくいうとピント合わせや露出調整などが必要になることもあるのですが、とにかくたくさん撮れば、その中の何枚かはいい感じに写るはずです。
しかし、やってみるとわかるのですが、簡単なようでなかなか難しい部分もあります。一番の問題は、スマホを正確に接眼レンズにかざすのが難しいこと。前後左右に少しズレただけで、視野が欠けたり狭く写ったりしてしまいます。
そこで、上のリンクのような「スマートフォンアダプタ」を使うとよいでしょう。これも位置合わせにはある程度慣れが必要なのですが、何もないよりははるかに楽です。
対象を中心に入れる、ピントを正確に合わせる、ぶれないようにシャッターを切る、どんどんずれていく天体を追尾する、などなどノウハウ・コツは満載ですが、それを書き始めると別の記事ができてしまいます^^;; 高価な機材を追加する必要はありませんから、とにかくチャレンジしてみましょう!
本格ディープスカイ撮影のために必要なアクセサリ
SV503天体望遠鏡を「赤道儀」などの「自動追尾可能な架台」に搭載して長時間の露出をかければ、本格的な天体写真を撮影することができます。架台だけでも最低5万円、その他パーツを揃えると最低でも+10万円程度が必要になりますが、次項以降の作例を見てもわかるように、SV503はそれに見合うポテンシャルを持った天体望遠鏡です。
↑いろいろな赤道儀などの架台についてのレビュー記事です
架台以外に、撮影に必要なものは「補正レンズ」と「カメラアダプタ」です。実は一般的な天体望遠鏡は「視野の中心で最高の性能を発揮する」作りになっていて、視野中心から離れるにつれてピント位置がずれる「像面湾曲」や「非点収差」という現象が補正されていない状態になっています。このため、単純に望遠鏡にカメラを装着しただけでは、中心以外はピンボケになってしまいます。これを補正するのが「補正レンズ(フラットナーまたはレデューサ)」です。
今回の撮影では、タカハシの「マルチフラットナーx1.04」を使用しました。この製品はアダプタリングを取り替えることで、さまざまな焦点距離の天体望遠鏡に対応が可能になっています。今回は「マルチCAリング76」を使用しました。
「そこそこの空」でも撮れる「輝線星雲」
ここ数年、市街地に近いような空の明るい場所でも天体撮影が楽しめる方法が確立してきています。その鍵になるのがフィルター。天体の中でも、宇宙空間に漂うガスが発光している「惑星状星雲」や「輝線星雲」と呼ばれる対象は、特定の色(波長)の光を強く出しています。
この星雲の光だけを選択的に通すフィルターを装着すれば、市街光の影響を最小限にしつつ、対象の星雲の光はそのまま透過するため、よりはっきり写すことができるという仕組みです。以下の作例ではサイトロンジャパン社のQBPフィルターを使用しています。
上の作例は、SV503を使用して撮影したこぎつね座の「亜鈴状星雲(M27)」です。このような「惑星状星雲」は思いのほか明るいため写しやすく、都市部にお住まいの方でもじゅうぶんチャレンジ可能な対象です。
惑星状星雲の魅力は、カラフルな色と個性あふれた形状にあります。惑星状星雲とは、太陽のような星が一生を終える晩年期に、星から放出されたガスがその星自身に刺激(励起)されて輝いているものですが、同じ形のものは2つとないほど、みな違う形と色をしています。この亜鈴状星雲は惑星状星雲の中では最も大きく明るい部類ですが、ちいさなものまで含めると数多くの惑星状星雲があり、その中のいくつかはSV503クラスの天体望遠鏡でも撮影が可能です。
こちらははくちょう座の超新星残骸、網状星雲。これも有名な天体で、図鑑やネット上の画像で見かけたことのある方も多いのではないでしょうか。これは太陽よりもはるかに重い(大きな)星が一生の最後に大爆発(超新星爆発)を起こした際に飛び散ったガスの残骸です。この網状星雲もQBPフィルターとの相性が良く、「色付きの墨流し」のような細かなフィラメント構造をとらえることができます。
「遠征」して暗い天体を狙う
フィルターを活用すれば市街地でも天体は撮影できるのですが、やっぱり空の暗い満天の星の下で撮影するのが一番です。空の暗い場所なら何よりも「写り」が違います。それだけでなく、星空の下で地球の自転を感じながら過ごす時間は何ものにもかえがたい充実感があります^^
いて座のM8干潟星雲(下)と、M20三裂星雲(上)。条件のよい空の下で、たっぷり総露出時間90分。このようなディープスカイの撮影では、露出時間を長くすればするほど、多くの光をセンサーに積み重ねることができます。1枚の露出時間を長くする代わりに、短い露出時間(この作例では30秒)でたくさん撮影して、その画像をソフトウェアで重ね合わせ(コンポジット)することで、ノイズの少ない画像を得ることができます。
このような天体写真の撮影は、決して簡単なものではありません。機材や画像の処理など、いろいろと勉強することは多いのですが、逆にその方法論はかなり確立されてきています。本気で取り組めば、誰でも美しい天体の姿を写真におさめることができるでしょう。SV503天体望遠鏡なら「こんな写真を撮ってみたい」というモチベーションに十分応えてくれるはずです(*)。
(*)上の作例で、明るい星の周りに青い光(赤い光)が取り囲んでいるのがわかると思います。これは主に「青ハロ(赤ハロ)」と呼ばれる現象で、色収差の補正が完全でない場合に現れます。SV503の場合、FPL-51ガラスを使用した2枚玉の構成なので、最高級品レベルと比較するとハロはやや多めです。
まとめ
いかがでしたか?
オールラウンドに楽しめる「オトナの天文趣味」のための天体望遠鏡、SV503。8月いっぱいなら5.8万円でファインダー付。これまでにない低価格で、口径80mmは眼視から写真撮影まで広く楽しめます。
今回SV503をいろいろな用途で使ってみて、つくづく思いました。いい時代になったものだ。こんなによく見えてコンパクトな天体望遠鏡が、6万円で手に入るなんて。生産技術の向上、EDガラスの低価格化、メーカーの企業努力などいろいろな要素があります。私たちユーザーがこれらの製品をうまく使って、お値段以上に楽しむことができれば、この幸せな時代は今後もきっと続くはずだと信じています!
- この記事はSVBONY社に機材貸与を受け、天文リフレクションズ編集部が独自の費用と判断で執筆したものです。文責は全て天文リフレクションズ編集部にあります。
- 本記事は極力客観的に実視をもとに作成していますが、本記事によって発生した読者様の事象についてはその一切について責任を負いかねますことをご了承下さい。
- 架台・接眼レンズなどの組み合わせについてのお問い合わせは、SVBONY社または機材をご購入ないしはご購入予定の販売店様にお願いいたします。
- 記事中の製品名・社名等は各社の商標または登録商標です。
- 機材の価格・仕様は執筆時(2020年8月)のものです。