みなさんこんにちは!またまた「新連載」、「星旅リフレクションズ」を始めます!この連載では、不肖・天リフ編集長が、日本・海外のさまざまな場所で星空を見上げた体験レポートをお届けします。コンセプトは「ジェットストリーム」です!
遠い地平線が消えて、
深々とした薄明の闇に心を休める時、
遠くの優しい街灯りの上を、音もなく流れる天の川は、
たゆみない銀河の営みを告げています。
満天の星をいただく果てしない夜空の下で、
ほほをなでる風に心を開けば、
きらめく星座の物語も聞こえてくる、夜の静寂の、
なんと饒舌なことでしょうか。
光と影の境に消えていった細いお月さまも
瞼に浮かんでまいります。
これからのひと時。
天文リフレクションズが、あなたにお送りする
星空の旅の定期便。「星旅リフレクションズ」。
皆様の、星空紀行のお供を致しますナビゲーターは、
わたくし、天リフ編集長です。
hommage:ジェットストリーム
こんな雰囲気で「星空のある旅」「旅の中の星空」を、みなさんにお伝えできるようにがんばります!第1回は今年の4月に行ってきた「西オーストラリア星空紀行」。南半球の非日常と14人の仲間たちとの星旅の記録です!
もくじ
プロローグ・星旅のすすめ
旅行は楽しい。これを否定する人はほとんどいないでしょう^^
「これから日常を離れるぞ」的なワクワク感(*)。離れた見知らぬ土地を旅する輝いた日々。「ああ、一日が終わった。残りn-1日だ」的な日々の流れ。そして「明日の今頃は帰り着いているんだなあ」的な、日曜の晩のサザエさん的な寂寥のひととき。旅は終わり日常に戻る時の訪れ。
そんな旅を繰り返して旅慣れてくるほど、輝いているはずの日々が何だか忙しい観光地巡りになり、毎晩の美味い食事とお酒が楽しみという「別の日常」になってしまうことはありませんか?
それはそれで、日常の3倍くらいはステキな日々なのですが、本来「旅に出る」という体験は、日常の10倍くらいステキな日々だったはず(*)。
(*)筆者の個人的感覚です。
もう一度、日常より10倍楽しい旅を経験してみませんか?
その具体的な方法を御提案します。あなたの旅の要素に「宇宙」と「星空」を加えてみるのはどうでしょうか。旅の先々で夜空に輝く星たちを見上げてみませんか。
日本の、そして世界のどこに行ったとしても、その頭上には星空が輝いています。夜空の星々は、あなたの旅だけでなく、ふだんの日常をも取り囲んで輝いているのです。
なんでこんなに星が輝いているの?降るような星空の下に身をおけば、そんな疑問が自然と湧いてきます。その体験こそが、あなたの新しい旅の始まりです。
夜明けのピナクルズ・「最高の一日」のはじまり
西オーストラリアのパース空港に着いたのは深夜の24時。乱気流に入ったというアナウンスが機内の食事タイムをチャラにしてしまい、クラッカーとチーズだけで腹を満たすしかなかった一行は、それでもこの先の星空に胸をときめかせ、宿泊のベースとなるパースの北へ約200kmのWaddi Farmsという牧場の中のバンガローにむかって、200キロのドライブを始めたのでした。
今回のツアーは総勢14名。九州の星旅好きが企画したプライベートなツアーです。ガイドも添乗員ももちろんなく、レンタカー3台に分乗して、西オーストラリアを巡る8日間の旅です。半分は「ガチ」の星マニア、残り半分は「元ガチ」「半ガチ」「一般人」の混成チーム。筆者のような「初オーストラリア組」もいれば、数十年来通い込んでいる大ベテランまで。
深夜で空港の売店には食料がなく、マクドナルドで遅い夕食を仕入れ車を北に飛ばします。いきなり深夜のドライブは緊張しましたが、車の少ない直線道路の多いオーストラリアでは、日本と同じ左側通行でもあり運転そのものは楽。
しかし、周期的に襲ってくる睡魔との闘いは車の中にときおり緊張感をもたらします。一番冷静で一番状況判断力のある人が、一番恐い思いをされたようです^^;;
パースから離れると急に周囲が暗くなり、車窓からも星の煌めきが見えるようになってきました。フリーウェイ沿いのパーキングに車を停め外に出ると、そこには満天の星が。周囲に街がほとんどないオーストラリアの漆黒の空に浮かび上がる南十字星や、濃い天の川の輝きに一同歓声を上げました。「凄い」「来てよかった・・」「あれがコールサック(*)だ!」
(*)南十字星の近くにある、ひときわ暗い暗黒星雲で「石炭袋(コールサック)」の名前があります。
アドレナリンが眠気を半減させた後、さらに南の「ピナクルズ」と呼ばれる、奇岩塔が立ち並ぶナショナルパークへ立ち寄る頃、夜が明けてきました。地平線が紅く染まった暁の空に金星と水星が輝きます。もうみな、言葉もなくその風景を眺めていました。
南緯30度の4月のオーストラリアでは、急ぎ足で夜が明けてきます。岩峰に囲まれた公園をめいめいに散歩しながら記念写真。
参加したある女性が、その後しみじみと語っていました。「あの時、こう思ったんです。『ああ、こんな素晴らしい日はもう生涯で最後かもしれないなあ』って。でも、次の日も、その次の日も、そんな風に感じる日が続いたんです。」
そう、この後も、最高の一日・そして「生涯最高の夜」が、毎日続いたのです。
大平原の中の牧場
日が昇ってすっかり朝になったころに目的地の「Waddi Farms」に到着。とはいっても、この看板が見えてからさらに10分以上車で走ります。もう広いのなんの。さすがオーストラリアです。
ここはメンバーの一部が定宿にしている場所で、牧場のなかにいくつかのコテージ棟と広いレストラン棟があり、比較的安い価格で宿泊ができます。ただし食事は自炊。管理人もいたりいなかったり。日本でいえば「野外活動センター」みたいな環境です。抜けるような青い空の下、西オーストラリアの日々が始まりました。
からりとした空気と青空の下で飲む赤ワインは、なぜこんなに美味しいのでしょうか。早速ミニ酒盛り。写真に写っている方はオーストラリア歴数十年の超ベテランのKさん。美味しいワインを飲むためにオーストラリアに来ているといっても過言ではないほどのワイン好きです。
夕食のバーベキュー。ラムもビーフも、ぶ厚くて柔らかくて美味しい!オーストラリアは物価は高いのですが、肉類は日本と比較するとずいぶん安く、ボリューム満点。ああ、なんという幸せ^^
全方位的、星空体験。問答無用の美しさ
世の中には、何の前提知識がなくてもただ目にするだけで圧倒される風景があります。人工の光がほとんどない、自然のままのオーストラリアの大地の上に輝く星空は、間違いなくその一つです。
何も考えなくても、何の準備もしなくても、空を見上げればそこに星があります。宇宙の中に自分が一人。
天の川は、ほんとうにこの写真の通りの形に流れています。一晩空を眺め続けていると、天の川と星々はゆっくりと回転しその向きを変えてゆきますが、星々のならびはそのまま。
それは、太古の時代の人々が、星は空の上のスクリーンのようなものに張り付いていてそれが一日一回回っているのだ、と考えたこと(天動説)を、そのまま受け入れられてしまうような風景です。
でも、そんなことはまずはどうでもいいのです。目の前に星があって、それが自分の眼に映っている。確かに空からやってくる光を感じている。そのなんと美しいことか。もうそれだけで十分です。
逆立ちのオリオン・南半球という非日常(1)
「どんな美人でも3日で飽きる」ということわざがあります(*)が、敢えて申し上げましょう。どんな超絶な星空でも1時間見れば飽きてきます。
(*)筆者には、超絶美人とそんなふうに過ごしたことがないのでこの真偽は不明ですし、この言説にはいくつかの角度で味わい深い議論があるようなのですが、それについては割愛します^^
もちろん、個人差はあります。人によっては3分で飽きるかもしれませんし、一晩飽きない「変態さん」もいるでしょう。でも、もう一度。どんな超絶な体験でも何度も繰り返すといずれ飽きます。これ、厳然たる事実です。
しかし、人間とは良くできたもので、飽きっぽいくせに飽きないための工夫にかけては天才的です。美人をただ眺めるだけでは3日で飽きるでしょう。でも、ただ美人を座視するだけで終わらないのが人間の性。ちょっと角度を変えて見てみる。時にはひっくり返したり、逆立ちしてみたり。話しかけてみる。あなたのことをもっと良く知りたいんですけど。
笑わせてみる。からかってみる。軽くジャブ。肘鉄を浴びる。でもだんだん行動パターンが見えてきたぞ。もしかして惚れてしまった?口説いてみるか。。。
ちょっと回りくどい脱線でしたね^^ どんな美しい星空でもただ眺めているだけではすぐに飽きる、でも星空のことを少し知るだけで簡単には飽きなくなる、惚れてしまったらもう一生飽きない。それが言いたかったんです。
南半球で星を見るなら、その前にまず日本の星を一度じっくり眺めてみましょう。そう、冬ならオリオン座、夏ならさそり座がおすすめです。
その「星座」の姿が南半球では全く違った姿に見えます。「オリオンが逆立ちしてる!」「さそり座が頭の真上に見える!」
な ん で だ ?!
そう、南半球だからです。地球は丸い。あなたはその丸い地球を1/5周ほどしてきたのです。思えば遠くに来たものだ。そして地球は宇宙の中に浮かんでいる。その丸い大地に立つ自分。宇宙とあなたの関係は一歩進んだのです。
反対向きの月・南半球という非日常(2)
Wade Firmから、夕焼けの中に浮かぶ細い月。あ、これ夕方です。なんか違うのがわかりますか?この違いがわかるようになると、あなたは地球のどこを旅しても、自分が地「球」の上にいることを実感できるようになります。
北半球でも南半球でも、夕方の月は西の空にあります。でも、月が沈む方向(≒太陽のある方向)は北半球と南半球では逆。南半球では、月の明るい部分が向かって左を向いているのです。この月を見て「南半球にキターー!」と感じられるようになれば、あなたはもう星旅上級者です。
銀河系(天の川銀河)を見る
私たちがいる「天の川銀河」。日本からはその全貌を条件よく見渡すことができないため、天の川銀河が「渦巻き銀河」であることをなかなか実感することができません。
しかし、西オーストラリアからは、上の画像のように天の川銀河の中心部がちょうど頭の真上を通ります。私たちが「天の川銀河」の一員であることを実感できるのです。
広い広い宇宙の中には、「天の川銀河」のような「銀河」が無数にあります。天の川銀河はその1個にすぎません。上の画像は「円盤が渦を巻いているような形」をした銀河を真横からみたもの。なんとなく、天の川銀河の全天写真と雰囲気が似ていますよね。
私たちの太陽系は天の川銀河の「中」にいるので、天の川は私たちを360°とりまいています。上の図の「太陽系」から「銀河系中心」を見た状態が、まさに上の全天写真なのです。
このイメージを頭の中にもちながら、Waddi Firmsの草原に寝転がって天の川を眺めていました。上空の低層雲まで約500m、ケンタウルス座α星まで4.3光年、天の川銀河の中心まで2.6万光年、大マゼラン雲まで16万光年。そんな知識を下敷きにすると、また違った感動が湧いてきます。
太陽系を見る
では、私たちの太陽系と天の川銀河はどんな関係にあるのでしょうか。上の画像を見てください。天の川銀河が天球を横断していますが、下側の地平線から天の川銀河中心に向かって舌状の光芒が伸びていますね。
この光芒は「黄道光」とよばれるもので、太陽系の軌道面に分布した無数の塵が太陽の光を反射して光っていると考えられています。地球を含む太陽系の惑星は皆、この光芒に沿った形で回転しているのです。上の画像では、光芒の中心に金星、そのすぐ下に水星が見えています。
不思議なのは、この太陽系の軌道面と、天の川銀河の回転平面が約60°ほど、大きく傾いていること。これがなぜなのかはいろいろな説があるらしく、はっきりしたことはわかっていないようですが、銀河同士の衝突の際の名残ではないかとの説もあるようです。
それはともかくとして、薄明の始まった空に浮かぶ天の川銀河と黄道光の雄大なクロスを眺めていると、地球・太陽系・天の川銀河という、まったくスケールの違う3つの存在が、知覚として強烈に認識できます。ああ、宇宙の中に自分がいる。そんな実感ができるのです。
46億歳の地球・シャーク湾で
オーストラリアは、太古の地球の面影が強く残った大陸です。44億年前という地球誕生間もない頃の地殻が発見されたのも西オーストラリア。
そして上の画像がストロマトライト。ストロマトライトは、数十億年もの昔の先カンブリア紀の太古の地球で、大繁殖することで地球を酸素の星に変えた、シアノバクテリアによって形成された光合成を行う岩石(のようなもの)。地球上で現存しているのは、この西オーストラリアのシャーク湾などのほんの一部に過ぎません。
シャーク湾には「シェルビーチ」と呼ばれる、無数の白い貝殻が堆積した海岸があります。上の画像はその貝殻を固めて作った建材。この付近の多くの建物で見られました。
シェルビーチで「若さを解き放つ」遠征メンバー^^ 白い浜は全部「シェル(小さな2枚外の貝殻)」が堆積したものです。
シャーク湾はWaddi Firmsからさらに500km近く北上する必要がありますが、ぜひ行ってみたいエリアです。もちろん星空も極上です。
南の大陸とカートレイン
雄大な西オーストラリアですが、あまりに雄大すぎて、風景は基本的にどこに行ってもほとんど同じです。こんな感じの赤土にブッシュが茂る平原が延々と、ほんとうに延々と続きます。
真っ直ぐな道が延々と続くハイウェイでは、上の画像のような「カートレイン」が主役。文字通り、道路を走る貨物列車。
オーストラリアのハイウェイはほとんどが片側一車線なので、長いカートレインを追い抜くときはけっこう緊張します。ほとんど直線の道路とはいえ、起伏はそれなりにあるので見晴らしが通らない場所も多く、安全運転を心がけるのが吉(*)。
(*)今回のツアーでも「終わった・・」と思う瞬間があったとか、なかったとか^^;;
ハイウェイの制限速度は最大時速110kmの設定が多いようです。市街地に近づくと順次制限速度が下がっていき、街中やスクールゾーンでは40km程度まで下がります。速度超過の取り締まりは厳しく、10kmオーバーでも切符を切られるそうですので、こちらも安全運転が吉。
隔絶された大陸の動物たち
オーストラリアは海に囲まれた大陸。他の大陸は氷河期時代は皆つながっていたのですが、オーストラリアだけは隔絶された環境にありました。そのため「オーストラリアだけ」の生物がたくさんいます。
エミュはニワトリやダチョウと同じく「飛べない鳥」です。いろんな場所でのそのそ歩いています。
ワラビーはもう至るところにいます。ハイウェイを走っていても突然飛び出してくる恐い奴です。小型のワラビーなら衝突しても大事には至りませんが。道路脇にはところどころにワラビーがお亡くなりになった形で横たわっています。
ペリカン。人間を怖がらず、すぐ近くまで寄っていけます。
イルカ。野生ですが、キレイに並んで編隊遊泳中。モンキーマイアの海岸では、毎朝解説員付きのイルカウォッチングをやっています。
異国の文化
ジェラルトンの聖フランシス・ザビエル大聖堂。抜けるような青空、からっと晴れた日の西オーストラリアは、カリフォルニアのような気候でした。
オーストラリアではタバコは日本以上にプレッシャーがかけられています。箱はみなこんな感じの警告文と画像で埋まっています。値段も日本の4倍ほどもします。スーパーで買うことができるのですが、スチールのロッカー内に隔離されていて、レジで申告しないと買うことができません。
オーストラリアの物価は日本と比較して高いですが、肉類は比較的安価です。ハム・ソーセージ類は種類も豊富。
出前一丁も売っていました。でもかなりお高いブランド品です。5オーストラリアドル。国産品?は2ドルから3ドルほど。
そのほか
飛行機はシンガポール航空でした。この画像はシート前の液晶モニタに表示されたwelcome画面です。驚いたことに、アテンダントのおねえさんは皆、この画像のとおりの美人&巨○揃いです。
リゾートの喫茶店で朝食。10ドル〜20ドルで、ハンバーガー・オープンサンドなど多種多様なメニューがありました。日本のドトールなどと比べると高いのですが、ボリュームを考慮するといい勝負かも。味も筆者の好みにストライクで大満足。エピローグ・すばらしき星旅
いかがでしたか?
濃く熱い、感動の8日間でした。どんなに遠くに旅をしても、結局はお釈迦様の手のひらの中にいる自分を感じることはありませんか?でも、その「大きなお釈迦様の手のひら」こそが、私たちを取り巻く宇宙なのです。
旅の中で星空を感じることで、あなたにとっての「お釈迦様の手のひらと、その中の自分」を再発見できることでしょう。そんな体験は、あなたにとってかけがえのないものとなるでしょう。
星空紀行で体験した、
リアルな星空のまたたきは、
時間が経つにつれ、
あなたの心の中にまたたきます。
お送りしておりますこの星空が、
美しくあなたの夢に
溶け込んでいきますように。
hommage:ジェットストリーム
「星旅リフレクションズ」
星空紀行の
お供をいたしましたナビゲーターは
わたくし、天リフ編集長でした。
ジェット ストリーム!!