予算1万円で天体望遠鏡。今回は番外編としてスマホを使用した天体撮影についてごく簡単にご紹介したいと思います。1万円の天体望遠鏡でも、安価なパーツを買い足すだけで(その気になれば買い足さなくても!)スマホを使用した撮影が可能なんです!
眼で見えるものは写真で撮れる
(コリメート法の図)
スマホで天体撮影できるしくみは簡単。人間の眼でのぞく代わりに眼の位置にスマホを置いてシャッターを切るだけ。
この方法を専門用語では「コリメート方式」と呼んでいます。
一筋縄ではいかない位置合わせ
しかし。原理は簡単なのですが、実際にやってみるとなかなか難しいものです。その理由は微妙すぎる位置合わせ。手持ちでスマホをかざしても、スマホのカメラレンズと天体望遠鏡の接眼レンズをぴったり正確に合わせなくてはなりません。
どのくらい難しいかというと・・・10回くらい撮って1回位置が合うかどうか(*)。お手軽に撮影したいなら、専用のパーツを購入するのが吉です。
(*)眼の位置のずれに寛容な「ハイアイポイント」の接眼レンズを使用すればだいぶ楽になるのですが、1万円の天体望遠鏡に付属する接眼レンズではかなり難しいものになります。
スマホ用アダプターを使用する
ネットを調べると、スマホと天体望遠鏡を接続するアダプターがいろいろと販売されています。今回は上のリンクにある1000円のアダプタを使用してみました(*)。
(*)このアダプタはスコープテックラプトル50では接眼レンズが小さすぎるため使用できません。
2024.1.6追記)
スマホアダプタは、スマホのカメラと接眼レンズの光軸を合わせるのがなかなか難しく、上記スマホアダプタを使いこなすのは難しいと感じていました。
APEXEL社より上記のサンプル品を頂戴し試してみたところ、たいへん使いやすい製品でした。今ならこちらが一択です!
2024.1.24追記)
APEXEL 2代目ユニバーサルアクセサリーが登場 アップグレードした望遠鏡用カメラアダプター
改良された2代目が発売されています。少し値段が上がりましたが、こちらのほうがオススメです!
スマホを接続したところ。カメラのシャッターは、ぶれないようにイヤホンケーブルのスイッチで切るのがよいでしょう。
それでも、スマホと接眼レンズの位置合わせはけっこう面倒です。あっちを締めたり緩めたり、いろいろグリグリやって合わせます。この位置合わせは望遠鏡に接続しない状態でやるのが正解。
横から見たところ。スマホと接眼レンズの距離をうまく調整するのも重要。
上の写真のように、接眼レンズから覗いた視野の円が、一番大きくなり中心に近づくように調整します。
調整が無事終わったら、接眼レンズを望遠鏡に差し込んで撮影です。
意外とスマホは重い
今回レビューした「1万円で買える天体望遠鏡」にとっては、スマホとアダプターだけでもけっこうな重量物です。ものによっては、重みで鏡筒が「おじぎ」してしまいます。
スマホは上の写真のようにできるだけ架台に近くなるように、180°逆にして取り付けるのがよいでしょう。それでも、ビクセンスペースアイ600以外ではけっこう苦しいです。クランプの付いている製品の場合は強めに締め混む必要があります。
スコープテックのアダプタ
スコープテックラプトル50は、今回使用した他の3機種と異なり、接眼レンズが一回り細い「24.5mm規格(ツァイスサイズ)」のため、購入したスマホアダプタが使用できません。
その代わり、純正のアダプタが販売されています。
スマホでカンタン月面撮影 『クリップ☆アダプタ』
http://scopetown.jp/prod_ca1.html
※クリップアダプタは、接眼レンズとスマホを接続・固定するものではありません。レンズ同士をピッタリ合わせるためのものです。撮影中はスマホから手を離さないでください。
HPの商品説明に明記されているのですが、このアダプタは接眼レンズとスマホを接続・固定するものではありません。
あくまでスマホは手持ちで支持し、位置合わせを簡単にするためのものです。
当初このことを知らずに購入しました。接眼レンズとアダプタの接続がユルユルでどうしたものかと途方に暮れていたのですが、HPの説明を読んでようやく納得。
実際に使用してみると、確かにこの方法は理にかなっています。お月様を撮るのであれば、手持ちでもあまりぶれの心配はいりませんし、接眼レンズにスポッと嵌めるだけの操作は単純明快。
ただし、サイズの関係で低倍率用の接眼レンズでしか撮れません。購入されるときは、そのことをしっかり認識しておく必要があります。
接眼レンズのスリーブにスコッチテープを二周ほど巻けばぴったりはめ込むことは可能なのですが、逆にこれだと「遊び」が全くなくなり、手持ちだとぶれがダイレクトに望遠鏡に伝わってしまいうまくいきません。また、手を離すとスマホの重量をクリップが支えることができません。
このアダプタは「手持ち」で使うほうがずっとうまく撮影できます。
実写作例
スコープテックラプトル50で撮影。夜明け前で背景が明るくなっている状態です。ラプトル50の場合、倍率30倍の視野の広さはこのくらい。
ビクセンスペースアイ600で撮影。若干トリミングしています。
レイメイ藤井RXA103で撮影。倍率48倍なので、月の全体を入れるにはけっこうぎりぎりです。視野の中心がすこしでもずれると、このように明るさが均一でなくなってしまう(上側が暗くなっています)のが難しいところ。
ビクセンスペースアイ600で撮影した土星。10秒間の動画を専門のソフトウェアを使用して合成したもの。
技を駆使すればもっとキレイに写せるでしょう。このへんはいろいろ試して見てください。
もっと本格的なアダプタも
こちらはビクセンから販売されているスマホアダプター。お値段は張りますが、スマホを精密に安定して固定することができます。ただし重量がある(240g)ので、1万円の天体望遠鏡に使うのは過剰仕様です。
本格的な天体望遠鏡に使用するにはこちらのほうが良いと思いますが、架台の貧弱な天体望遠鏡には逆にオススメできません!
まとめ
最近ますます高性能になったスマホのカメラを生かさない手はありません!眼で見えるものは写真に撮れる時代。「1万円の天体望遠鏡」でも天体写真を楽しむことはじゅうぶんに可能。
ぜひ写真撮影も試してみてくださいね!