天体望遠鏡や双眼鏡などの光学製品を取扱う株式会社サイトロンジャパン(代表取締役:渡邉晃、本社:東京都新宿区)と天文ファン向けWebメディア「天文リフレクションズ」を運営するリフレクションズ・メディア(代表:山口千宗、福岡県福岡市)は、11月19日にオンラインイベント「11.19 “限りなく皆既に近い部分月食”ライブ中継」を開催します。
本ライブとコラボ予定の月食ライブ配信はこちらをご覧ください。そのほかの日本で予定されている主な皆既月食のライブ配信も一覧にしています。
イベント概要
11月19日の夕方・日本全国で「限りなく皆既に近い」部分月食が見られます。
半年前の今年の5月26日にも皆既月食がありましたが、全国的に不順な天候で、「欠けた月」や「赤銅色の月」見ることができた方は、ほんの一部だったようです。今回はそのリベンジです!(*)
(*)今回の月食は5月26日の皆既月食ととても似た条件(欠けたまま夕方の空に月が昇ってくる)です。本記事の見どころ解説も時刻・方角以外はほとんど同じです^^;
11月19日の月食は、天文学的には「部分月食」なのですが、最大食分は0.978(国立天文台発表値)。部分月食とはいえ「限りなく皆既に近い」部分月食となります。時間は短いものの、赤銅色の月のようすも普通に見られることでしょう。
(*)全部欠けた状態を1.00としたときの月の欠ける割合
食の最大の時刻は18時03分ごろ。少し早めではありますが、人々が活発に活動する時間帯、しかも花の金曜日。少し会社や学校を早めに引けて、東の空にご注目ください。秋の澄んだ空気の中を昇ってくる、欠けてゆく月の姿の一部始終を見ることができるでしょう。
この月食を、今回もYouTubeでライブ中継することとなりました。今回のコンセプトは「ゆっくりまったり、全国の月食をライブで楽しむ」です。サイトロンジャパン社のチャンネルでは、日本各地の有志のアマチュア天文愛好家から配信される映像を順次切り替え、さまざまな月の表情をお届けします。
ZOOM会議に月食映像を持ち寄ろう
さらに、今回はもう1本のライブ配信を同時に行います。天文リフレクションズ(天リフ)のチャンネルでは、月食映像のライブ配信で使用するZOOM会議室の「控室映像」をお送りします。
もう少し補足説明すると、サイトロンジャパン社のチャンネルの月食映像は、ZOOM会議室に接続している全国各地の天文愛好家による映像を配信するのですが、その際は「映像」のみを配信し音声は配信しません(BGMを流します)。一方で、天リフチャンネルのライブ配信映像は、ZOOM会議室の様子を音声込みで配信します。いってみれば配信の控室映像の配信なのです。
月食の映像のライブ配信には、比較的お手軽に参加いただくことができます。スマートフォンがあれば、天体望遠鏡に接続してカメラ映像をZOOM会議に画面共有で流すだけです。デジタル一眼カメラをWebカメラとして接続しても同様です。
この月食映像を配信してくださる方(最大10名程度を想定しています)を、広くアマチュア天文愛好家から募集します。詳細は次節をごらんください。
イベントに参加するには
ライブ中継を視聴する
ライブ中継はどなたでも無料で視聴することができます。月食の映像を静かに見たい場合はサイトロンジャパンチャンネルを、全国各地の天文愛好家と盛り上がりたい場合は天リフチャンネルをご視聴ください。
ZOOM会議に参加して月食映像を配信する
貴方のカメラで撮影した映像を、全国にライブ配信してみませんか?月食映像の配信者を広く募集します。今回はZOOM会議の「ブレークアウトルーム(*)」の機能を使用し、月食映像を提供する方1人につき一つのブレークアウトルームを割当てます。月食映像の提供者は画面共有でご自分の月食映像をルーム内に共有します。
(*)ZOOM会議室の中に小部屋を作る機能。詳細はこちらをご参照ください。
運営(天リフ)は、適宜ブレークアウトルームを移動し、共有されている月食映像をYouTubeに配信します。今回の映像配信者は最大10名程度を想定していますが、空き枠がまだ少しあります。「自分の月食映像を全国の人に見てもらいたい!」という方は、映像配信者としてご参加ください。ZOOM会議室に月食の映像を流す方法についてはこちらをご参照ください。
なお、映像配信者様は常に特定のブレークアウトルームに入っていただく形になります。このため、配信中はけっこう寂しい思いをするかもしれません^^;; 月食映像配信用と別にもう一つZOOM端末があれば、一つを映像配信用・もうひとつを会議室参加用にすることで、全国各地の映像配信者様のブレークアウトルームの訪問も可能です。
多くの方のご参加をお待ちしています。参加申込はこちらからどうぞ!
〆切は特に設けません。先着順で映像配信者が最大10名程度を想定していますが、より多くの方にご参加いただけそうなら枠を増やすかもしれません。個別にメールでWeb会議室の接続先や事前接続確認の段取りをご連絡させていただきます。
11.19「 限りなく皆既に近い部分月食」のハイライト
月食の「欠け始め・終わり」や「皆既月食の始まり・終わり」などの時刻は、基本的に地球のどこから見ても同じ時刻(*)です。
(*)厳密には「視差」と呼ばれる現象でわずかに違いがありますが、誤差の範囲です。また、月食をひきおこす「地球の影」は境目がぼやけているため、計算の際の基準の取り方によって数分程度の違いがあります。
今回の月食の場合、国立天文台の発表値では16時18分に欠け始め、18時3分に食の最大。19時47分に月はまん丸に戻ります(部分食の終わり)。今回の月食は、日本の多くの地域では月が昇ってきた時点で既に欠け始めている「月出帯食(*):げっしゅつたいしょく」というカテゴリになります。このため、月食の全経過を観察することができず、地平高度も低く、東北東の空が「かなり」開けた場所でないと見ることができません。この意味では「条件が良くない」ということになります。
しかし、広く多くの人々に月食を楽しんでいただけるという意味(*)では、実は最高に近い?条件であると考えています。そのハイライトをご紹介します。
多くの人が眼にする夕方の時間帯の月食
今回の月食は夕方16:18に欠け始め(部分食の始まり)、19:47に欠け終わり(部分食の終わり)ます。その間約3時間半。少し早めの夕方ではありますが、多くの人が空を見え上げることのできる時間帯です。
満月が空高く条件良く見られる月食では、この時間帯は深夜になってしまい、強い意志で夜更かししなくては見ることができません。ふと思いついて月を見ると、欠けている。そんな体験ができるのは、今回のような「夕方の月食」ならではなのです。
ランドマークとの競演が楽しめる
「月が低い」ということは、見慣れた地上のランドマークのすぐ上に月が浮かぶことになります。上の画像は焦点距離100mmの望遠レンズで撮影したものですが、今回の月食の皆既中はこのくらいの地平高度になることが予測されます。
貴方の街の「東北東の空のランドマーク」は何でしょうか?ぜひお近くの「絵になる風景」を探してみてください!
「ほとんど皆既月食」に近い、部分月食
今回の月食は「食分0.978」で完全に皆既にはならず、最も深く欠ける18:03ごろがこんな状態です。食分の「深い(皆既時間の長い)」月食では月全体が深い赤銅色になりますが、今回は部分月食ながらも赤銅色の月が楽しめるでしょう。
月食観察ガイド・「お月さまが低い」今回の皆既月食
今回の月食では、観察するために注意することが一つあります。それは月が低いこと。それをくわしく見ていきましょう。
月の高さはせいぜい握りこぶし2個分弱
今回の月食は「月の出」とほぼ同時に始まるため、月食中の月が低いのが大きな特徴です。上の画像は東京からの見え方ですが「食の最大」となる18時03分ごろの月の高さは「17度(*)」ほどしかありません。
(*)今回は南にいくほど条件が悪くなり、福岡では9度、那覇ではわずか5度です。
「17度」という角度は、腕をいっぱいに伸ばしたときの握りこぶしの2倍弱ほどの大きさです。多くのご家庭では、東北東の空低い今回の月食を見るのは難しいかもしれません。しかし、お月さまはとても明るいので、月の方角が開けてさえいれば、市街地の中であっても晴れていれば月食は観察できます!
自宅から月食は見えるの?その調べ方
では、あなたのお家から月食を見ることはできるのでしょうか?その調べ方をご紹介しましょう。ポイントは「東北東の方角」です。
間取り図で調べる
お住まいのお部屋の「間取り図」を探してみましょう。間取り図にはたぶん北の「方位(N)」を示すマークが入っているはずです。東北東の方向が見られる窓やベランダはあるでしょうか?水平から「握りこぶし2個弱分」上の空は見えるでしょうか?
もしそうなら、そこが観察ポイント候補です。
アプリで調べる
スマホの「星図アプリ」を使えば、月食のときに月がどの方角に見られるかを調べることができます。上の画像は筆者の自宅のベランダで撮ったものですが、「星図アプリ」の日付と時刻を月食の時刻(2021年11月19日18時3分ごろ)に設定し、アプリを空にかざして月の見えるであろう方角に向ければ、月が見える方角がわかります。
スマホの星図アプリは非常に沢山の種類が出ているのですが、無料で使用できるアプリならこちらがオススメです。
iPhone,iPad 星座表
https://apps.apple.com/jp/app/星座表/id345542655
Android 星座表
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.escapistgames.starchart&hl=ja&gl=US
こちらはiPhone/iPadのみで370円と有料ですが、星空が美しく高機能でオススメです。
スカイガイド
https://apps.apple.com/jp/app/スカイ-ガイド/id576588894
ただし注意点があります。スマホ内蔵の「方位磁石(磁気センサー)」は、建物の鉄骨などの影響を受けやすく、方角が大きく狂って表示される場合があります。正しい方角を間取り図や地図アプリなどで確認しておくとよいでしょう。
時刻が遅くなるほど月は高くなる
月の地平高度については、上の表をご参考に。大事なことなのでもう一度書きますが、今回の月食の間の月はとても低いです。月の高さからみると、今回一番条件がよいのは北海道地方です。
なんとなく見えそうな気もするけど、「お月さまが見えるか見えないか微妙」。そんな場合が一番悩ましいですね!今回の月食では、お月さまは「東北東」から昇ってきて、月食の終わりごろには「東」へと右上に向かって進んでいきます。
月食の最初のころは建物の陰に隠れて見えなかったとしても、時間が経てば見えるようになるかも知れません。お月さまが見えなくてもすぐあきらめず、粘ってみるのもよいかもしれません。欠けた月がこつぜんと姿を現す瞬間は、きっと感動するにちがいありません。
ちなみに、5月26日の皆既月食ではこんな条件でした。月の低さは全体にあまり変わりありませんが、今回の月食では北の地方ほど地平高度が高く、空も早く暗くなるため、条件が良くなります。
月の高さ・空の明るさは地方によってちがう
一方で、月の出の時刻や太陽が沈んでから空が暗くなるまでの時刻は、地方によって違います。例えば「欠け始め」の時刻では札幌や大阪より西の地方では、月はまだ昇っていませんし、皆既食が始まった時点では一部の地方ではまだ空は少し明るさが残っています。
今回の月食の特徴として、北に行くほど月が高く、空も暗くなります。上の表は月食の進行と空の明るさを地方別にまとめたものですが、東京以北では食の最大の頃には空が完全に暗くなっている(天文薄明が終了している)のに対して、西日本・九州では少し空の明るさが残り、沖縄地方ではかなり明るく空の明かりに月は埋もれてしまうかもしれません。
地方毎のこの見え方の違いに注目です。
ちなみに、上の画像は5月26日の月食の場合ですが、ずいぶんと様子が異なることがわかるでしょう。これは「夏至一ヵ月前」と「冬至一ヵ月前」という、太陽と月の位置関係によるものです。
月食の見かたと見どころ
(※本節は5月26日の皆既月食の解説と同じです)
肉眼で見る
編集長の思い出、小学2年生の夏の皆既月食。当時の絵日記から1971年8月7日早朝の月没帯食と思われるが、10歳にもならないガキがこんな時間に起きていたことが不思議^^;;#初めての天体の思い出 pic.twitter.com/07RCMmGNdp
— 天リフ編集部 (@tenmonReflexion) May 12, 2020
「月が欠けている」ようすを見るのには、肉眼でも十分です。 特に今回の月食は日没後まもない空のまだ明るい時間が長いため、地上の日常の風景の上に浮かぶ月食の姿は肉眼でもたっぷり楽しむことができるでしょう。
肉眼で皆既中の「10円玉のような色」がどのように見えるかは空の明るさ次第ですが、皆既が終わって欠け戻るまでの間はそこそこ高度もあり、一番見やすくなるはずです。最大の問題はお天気です^^;
双眼鏡で見る
小型の双眼鏡があれば、月の欠けたようすはずっと見やすくなります。どんな双眼鏡でもOK。特に高級なものである必要はなく、ネットで売っている数千円程度の製品でも十分です。双眼鏡は「ものすごく」いろんな製品があって選ぶのに困るのですが、今回の機会にお求めになるなら、軽くて使いやすい小型の製品か、本格的な星見にも使えるしっかりした製品をオススメします。
天体望遠鏡で見る
天体望遠鏡を使えば、みるみる欠けてゆく月の姿や、皆既中の「赤銅色」の不思議な色を大迫力で楽しめます。この月食の機会に本格的な天体望遠鏡を・・・と考えていらっしゃる方もあるかと思いますが、そんな方に逆にオススメなのが上の超小型の望遠鏡、MAKSY60(マクシー60)とNEWTONY(ニュートニー)。「オモチャ」のように見えるかもしれませんが、非常に性能が高くマニアも唸らせる見え味です。
お値段も非常にお手頃ですので、まずこれを1台購入して、ある程度使ってから次のステップを考えるのもよいでしょう。
いや、どうしても本格的なものが欲しい!という向きには、天体望遠鏡専門店でまず実物をじっくり見てみることをオススメします。
カメラで撮影する
カメラで撮る月は意外と小さく、標準で付いてくるレンズでは豆粒のようにしか写りませんが、それでも「欠けている」ことはハッキリ写すことができます。しかし、問題は露出の設定です。カメラ任せで撮影すると、暗い空に露出を合わせてしまうので、明るく輝いている月は白トビしてしまいます。
特に今回の月食の場合、欠け始めは日没直後。ここから月の明るさも背景の空の明るさも、激しく変化していきます。「この設定で撮れば大丈夫」とは専門家でもなかなか言えないところがあります。
そこで、身も蓋もない話ですが設定をいろいろ変えて撮ってみることをオススメします。空がまだ明るい時間帯は、空の明るさに合わせた露出設定を基本にして、±3段くらいの幅で撮ってみましょう。空が暗くなるにつれて、カメラの示す適正値では月はより明るく写ってしまうので露出を下げめにします。月が深く欠けてくると、再びカメラの示す適正値を中心に±3段くらいで。デジタルカメラは何枚撮影してもタダです。撮りまくりましょう^^
一つだけ。「満月」の適正露出は、昼間の風景とほぼ同じです(ISO100、F8、1/250秒)。一方で皆既の直前直後では2000分の1ほどにも暗くなります(ISO3200、F8、1/4秒)。これを目安に撮影してみてください(*)。
(*)地平高度が20度のときはこの値に1/2段ほどプラスする必要があります。
まとめ
(※本節も5月26日の皆既月食の記事と同じです。前回は悪天で残念でしたが、今回はそのリベンジです!)
いかがでしたか?
皆既月食は平均すれば数年に一度は見られる現象で、さほど珍しいわけではありません。しかし「条件の良い」皆既月食は深夜の遅い時間帯となることが普通(*)なので、その気にならないと見ることができない現象だといえます。
(*)月食は必ず満月の晩に起こります。満月が最も高く昇るのは深夜の0時前後になります。
それだけではありません。ネット環境へのアクセスや動画撮影・配信の敷居が大きく下がったのはこの5年くらいです。全国各地の映像をライブで同時に見られる、数多くの人と同じ月食の姿を同時に見るという体験が実現すれば、それは史上初ともいえるでしょう!
誰もが手軽にライブで情報を発信できる時代。星空の楽しみ方もそれによって大きく変容するに違いありません。今回のイベントが「同じ空の下」での、多くの人たちのコミュニケーションとエンジョイの場になることを願って、そして当日の晴天を願って!
ぜひ11月19日の夕方は、空を見上げてみましょう!空が・月が見えないときは、YouTubeのライブをごらんください!この宇宙の中の地球、地球の隣人である月。その存在を皆で実感してみませんか?!
ご参加、ご視聴をお待ちしております。
月食に関する各種情報
国立天文台・ほしぞら情報
日本の天文学の総本山「国立天文台」が公開している月食のページです。
アストロアーツ
天文シュミレーションソフト「ステラナビゲータ」を開発・販売しているアストロアーツ社の月食特集。
【特集】2021年11月19日 部分月食 – アストロアーツ
- Web会議参加に関わる費用等は参加者様の負担となります。
- 食の開始・終了時刻は注記のあるものを除き、国立天文台発表の情報によるものです。この時刻は計算基準によって数分程度の差があることがあります。月から見た地球の縁は大気の影響でぼやけているのですが、それをどう想定するかが主な違いの理由です。(星ナビ2021年5月号 P37参照)
- 記事中の画像は、特に注記したもの以外は天文リフレクションズ編集部で撮影または作成したものです。