星の旅

【連載・星旅リフレクションズ(2)】モンゴル・ゲルキャンプ星空ツアー

こんな内容の記事です!

モンゴル。その言葉からあなたはどんな印象を受けますか?遊牧民、騎馬民族、チンギス・ハン、相撲、そして星空。成田から5時間、近くて遠い国、そんなモンゴルに行ってきました。そこには変わりゆく首都ウランバートルと、太古から変わらない人間と五畜(羊、山羊、馬、牛、ラクダ)の生活、そして降るような星空がありました。その旅行記をお届けします。

天文リフレクションズが、あなたにお送りする
星空の旅の定期便。「星旅リフレクションズ」。
皆様の、星空紀行のお供を致しますナビゲーターは、
わたくし、天リフ編集長です。

hommage:ジェットストリーム

全文載せると長すぎるので短くしました^^

(C) 藤井旭 1976年河出書房新社刊
天リフ編集長
天リフ編集長
筆者の予備知識は藤井旭さんの「星の旅」のみ。実は藤井先生が行かれたのはもっと西の「南ゴビ」だったようで、本の内容とは少し違いました。

ゲルキャンプの星空・暗闇だからこそ見える世界

ローソクの光と星の光

ゲルと星空。ゲルは移動可能な組み立て式。今でも現役で普通に使われています。α7S 24mmF2.0 ISO8000 30秒

モンゴルではモンゴル遊牧民の伝統的住居である「ゲル」を使った宿泊施設が各地に存在し、外国人観光客を中心に多くの観光客を受け入れています。今回のツアーではこのゲルに4泊しました。メインの目的はもちろん星空。

モンゴルの平原には、草地と岩と動物以外には何もありません。夜はほぼ完全な暗闇。星の光とまれに通る遠くの車のヘッドライト、そしてゲルキャンプのローソクの光のみ。

いて座の天の川は日本で見るよりも低く、土星(左上)と木星(中央右)が這うように光っていました。α7S 24mmF2.0 ISO8000 30秒

ゲルの扉を開けると、暖かくゲルの中を照らすローソクの光は、漏れ出て草原と隣のゲルを照らします。1本のローソクの光と天の川の光が溶け合う世界。モンゴルの人たちは、ゲルとともに遊牧を始めたころから、こんな風景を毎日見てきたのでしょう。

雲間に見える星々

α7S 35mmF2.0 ISO8000 30秒

雲間から見えること座とベガ(織姫星)。人工光がほとんどないゲルキャンプでは、雲は星明かりを覆い隠して黒く見えます。写真では空の星明かりがはっきり見えますが、肉眼ではほとんど違いがわかりません。星が見えない場所にはたぶん雲がある、そんな感じです。

残念ながら肉眼ではこの光と色はわかりません。高感度のカメラの眼を通してはじめて見ることのできる光景です。EOS6D 105mmF2.0 ISO3200 60秒

青白く雲を照らすこと座のベガ。明るい星は雲を照らして星と同じ色に輝きます。日本ではこんなふうに見えたことはありませんでした。モンゴルの暗闇の空ならではの風景。

ゲルキャンプの夜明け

夜明け前。地平線上の光は「隣村」のゲルの灯り。まれに遠くを走る車のヘッドライトが光ります。「ああ、あそこにも人がいるんだな」と少し安心する瞬間。α7S 15mmF4 ISO12800 30秒

モンゴルの暗闇の空でひときわ美しいのが夜明け前の空。夜明け前に日本で見るよりもはるかに濃く流れている天の川。

α7S 15mmF4 ISO3200 30秒

夜明けが近づくにつれて空の青みが増してきます。この画像は肉眼ではほんの「わずか明るくなってきたかな?」と感じる時間帯。

円周魚眼レンズで。右上から左下に流れるのが天の川。右下の少し赤みを帯びたところから上に伸びる舌状の光芒が「黄道光」。太陽系を惑星と同じように回る、微少な塵の円盤が太陽の光を反射した光です。α7S 8mmF4 ISO12800 30秒

東の空が少しづつ赤みを増してきました。9月の上旬とはいえ、緯度の高いモンゴルの夜明けはゆっくりと進んでゆきます。

モンゴルの澄んだ空気と漆黒の闇の中では、混じりけなしの夜明け前の光と色の変化を感じることができます。モンゴルでは、星だけでなく、全ての光が美しいのです。

天体望遠鏡で

双眼鏡をかざしているのが同行したツアー参加者のお一人、Kさん(父)。父娘お二人でのご参加。筆者を含め参加者3名のコンパクトなツアー。α7S 15mmF4 ISO25600 15秒

今回参加したツアーでは、協賛社提供の天体望遠鏡(ビクセン・ポルタA80Mf)が使用できるのですが、ツアー後半に滞在した「ウルサ・マイヨール(Ursa Major)」のゲルキャンプには大型の天体望遠鏡が備えられていました。「こと座のリング星雲(M57)」の輝くリングの神秘的な姿などを見ることができました。

電源系に故障があったため、すべて手動で操作する必要がありました^^;;

天体望遠鏡の専用ゲルに収容されている、ミード社の口径30cmシュミットカセグレン天体望遠鏡。現オーナーの亡くなられた夫君が星好きで、個人用として使用されていたそうです。

タイムラプス動画

お手軽撮影でのタイムラプスです。カメラを三脚に固定して、ひたすら30秒露出で連続撮影。雲と星のながれていくさまをごらんください。背景の空が緑や赤く見えているのは「大気光」。高層の大気が自らごく弱く発行しているもの。日本でも人工光の少ない場所ではしばしば見られます。

ただ、そこに広がる大地

広がる草原

オルホン川流域で。馬がのんびり草を食べている横で記念写真。

筆者を含め、「モンゴル=(ゴビ)砂漠」というイメージがあるかも知れませんが、これはかなり事実とは違いました。サハラ砂漠のような砂地ではなく、ほとんどが短い草の平原です。ひたすら広いのですが、ところどころには丘陵があって、川が流れている場所もあります。

動力を持たず、舵のコントロールだけで操縦する模型飛行機だそうです。

同行したKさんはガチの天文ファンですが模型飛行機もそれに劣らぬガチ級。機体を何機も持ち込んで飛ばしてらっしゃいました。青空に浮かぶ飛行機は眺めているだけで爽やかな気分。

ひたすら広い平原では、夕陽でできた影もひたすら長くなります。東から太陽が昇り朝になり、西に傾き夕陽が沈む。そんな自然の1日のサイクルを心地良く感じながら、夜の星空を待つ時間。

すべてが「牧場」

ちょっとわかりにくいですが、よく見てください^^ アリのように連なる小さなモコモコは全部羊。これが羊の群れかぁ。岩山の斜面を行儀良く歩いてゆきます。

幹線道路を離れてゲルキャンプに向かう道で。道というより草地にできた轍の集合体。「道なんて関係ないよ」といわんばかりに羊と山羊の群れがめいめい勝手に草を食んだり、寝転んだり。

日本の牧場で、オーストラリアの牧場でも見かける「柵」が、この地ではまったくありませんでした。広い大地全部が牧場

流れる川

右の人物がモンゴル側のコーディネーター兼ガイドのトブシエさん。

雨の少ない乾燥したモンゴルでは「川」はあまり見かけないのですが、流れているところには流れています。北部の山岳地帯に降った雨を集めているのでしょうか、広い川が蛇行していました。小さな小さな点々は馬です。広いなあ。この馬たち、明日はどこで何してるのかなあ。この風景を見られただけでもモンゴルに来た甲斐がありました。

高緯度地方ならではの星空

這うように低い、秋の月

今回のツアーでは「月齢2.7〜5.7」という最高の月回りでした。いて座の天の川とは少しかぶりますが、モンゴルの「秋の夕月」は最高です。EOS6D 105mmF4 ISO1600 2秒

北緯約48度のモンゴル(*)。東京と緯度で13度ほどの違いなのですが、この違いがさまざまな風景にはっきり感じる違いをもたらします。たとえば、秋の夕方・西の空の細い月。

(*)モンゴルは大きな国なので、北緯42°〜52°くらいまでまたがっています。今回滞在したゲルキャンプの緯度は47°〜48°程度でした。

日本で見るとこの月はもう少し「(時計回りに13度ほど)寝て」います。この季節(9月上旬)の月は南に低く、細い月が南西の空を這うように沈んでゆきます(*)。

(*)赤道直下では、月が西の空を真っ直ぐ落ちていくことになります。緯度の違いを月で体感するのも「星旅」の醍醐味。

EOS6D 15mmF4 ISO6400 25秒

月没直後。雲に吸い込まれた月の光が空を照らします。日没のときのこんな風景もステキなのですが、月没の場合はさらに「星」が加わり、ますます印象的。急速に空が暗くなってゆき、星の光がどんどん増してゆくのです。ずばりモンゴルでは「月齢4〜5前後」がオススメ

天の川の角度

9月4日、22時58分ごろ。α7S 8mmF4 30秒 ISO12800

天の川が直立し、全天を真っ二つに横断する時間帯。緯度の高いモンゴルでは、このときのいて座の銀河中心部(ゲルの左上、赤茶けた雲のような部分)は地平線の上すれすれ。日本で見る同じ状態での印象とはずいぶん異なります。「北の国に来たんだ」と実感する瞬間。

9月5日、深夜23時38分ごろ。モンゴルに来たからには、この時間の「天の川の天球横断」はぜひごらんになってください!α7S 8mmF4 30秒 ISO12800

その少し後。赤緯45度のデネブのさらに北、赤緯57度のケフェウス座IC1396の少し南あたりが天頂を通過します。モンゴルで一番美しく見られるのはの秋の銀河

北斗七星

同行のKさんにモデルになっていただきました。お父様はガチ天マニアですが、娘さんは自称「騎馬民族オタク」。「父に連れられていろいろ星は見てるんですが・・」Kさんはイラストレーター・漫画家。「ラブライブの赤目先生」といえばご存じの方はご存じのはず。EOS6D 24mmF2.0 30秒 ソフトフィルター使用

北斗七星も余裕で「下方通過(*)」します。北緯43度の北海道で見たときと、たった5度の差なのに「余裕度」が違います^^ この星並びが「ひしゃく」に例えられたことに激しく納得する光景。この光景も見逃せません。

(*)北極星を中心に回る天体は、北極星に近い場合地平線下に沈むことがなくなります。こんな天体が最も低くなり北極星の真下を通過することを「下方通過」と呼びます。

高い北極星

α7S 35mmF2.8 ISO6400 20秒 2枚パノラマ合成

北斗七星も高ければ、とうぜん北極星も高い。今回持ち込んだ赤道儀は北緯35度仕様のSWAT-310(V-spec)。三脚直付けだったので13度も三脚を傾ける必要がありました。バランスが悪くてちょっと失敗。ゲルの消火器を重りにして安定を図りました^^;;;

オリオン座

フジX-T100 XF23mmF2 F2.8 20秒

ちょっとマニアックに。昇ってくるオリオン座ですが、違いを感じませんか?天の赤道上にあるオリオン座は、だいたい緯度分だけ傾いて昇ってきます。この地の緯度は約48°。日本で見るよりも「立って」昇ってくるのです。

夜明け前の天の川X。黄道光と天の川がクロスします。淡いと思われがちな冬の天の川と黄道光ですが、モンゴルでは薄明が始まってもはっきり見えています。α7S 15mm対角魚眼 F4 30秒 ISO12800

こいぬ座のプロキオンとおおいぬ座のシリウスが昇ってくる順序も日本と微妙に違います。筆者の住む九州ではこの2つの星はほぼ同時に昇ってくるのですが(*)、モンゴルではより北にあるプロキオンがだいぶ先。シリウスはかなり遅れて昇ってきます。

(*)大阪付近から北では、プロキオンが少し先になります。

モンゴルのディープスカイ

M45プレアデス星団。日本名「すばる」。ソニーのAPS-Cエントリミラーレスα6000で。小型軽量で高感度にも強く、今回の遠征での昼間の撮影はほとんどα6000を使用しました。α6000 SIGMA105mmF1.4 F2.8 ISo6400 30秒×20枚  V-spec赤道儀

今回の遠征では、残念ながら安定した晴れが続く時間が少なく、時折通過する薄雲・ガスの合間をぬっての撮影となりました。それでも空の暗さは圧倒的で、ガスの晴れ間では素晴らしい星空でした。

ケフェウス座の天の川。電離水素の赤い光で輝く星雲がそこかしこに点在しています。わずか20分の露出ですが「心眼」では「ダイオウイカ」の姿も。EOS6D(天体改造) SIGMA105mmF1.4 F2.0 ISo3200 120秒×10枚 SWAT-310 V-spec赤道儀

個人的な撮影テーマとしては、天の川の全周モザイクを完成させたかったのですが叶わず。それでもモンゴルの空の凄さを体感することになりました。

「天体改造」しなくても、ノーマルのままでも赤色の星雲が良く写るのがフジのカメラのいいところ。フジX-T100 XF23mmF2 F2.8 30秒×20枚 SWAT-310 V-spec赤道儀

夏の大三角、総露出10分。モンゴルの空では、あまり長時間の露出をかけなくても濃い天の川を写し撮ることができます。小型のミラーレスカメラのお手軽撮影でもこのとおり。ツアーではポータブル赤道儀の貸し出しもあり、経験豊富な「ナビゲーター」のサポート付き^^ カメラひとつあればこんな写真を撮ることもできます(*)。

(*)ちなみに今回のツアー参加者は「ガチ^2」の方だったので筆者の出る幕はほとんどなし^^

カシオペヤ座。EOS6D(天体改造) SIGMA105mmF1.4 F2.0 ISo3200 120秒×16枚 SWAT-310 V-spec赤道儀

今回の遠征で最も露出をかけることのできた作例。32分露出。途中薄雲が通過したせいで、星がほどよい大きさになり、カシオペヤのW(M)字がよくわかる結果になりました。

ちなみに、モンゴルは5月から9月にかけてが雨期。「毎日が快晴」というわけではないのは仕方ありません。でも、雨期とはいっても9月の月間降水量は30mm以下(*)。東京で最も雨が少ない12月の月間降水量が52mmですから、それよりもまだ少ないくらいです。

(*)7月、8月でも月間降水量は75mm前後で、冬の東京より少し多いくらいです。

10月を過ぎると、月間降水量は10mm以下になり、ひたすら晴れの日が続きますが、今度は気温が急速に低く(*)なってしまいます。天候と気温、そして夜の長さを考慮すると、モンゴル星見ツアーの最適期は9月〜10月といえるでしょう。

(*)9月、10月、11月の月間平均気温はそれぞれ9.5、0.9、-10.6°Cです。

えっ何、この空、暗すぎ。SQM23.62なんてこれまで見たことのない凄い数値です。計測エラーかと思って何度か計り直してみてもこのくらいの数値でした。

同行のKさんが持参された「SQMメーター」で空の暗さを測ってみました。「SQM」とは空の暗さを示す指標で、「22.0」が理想的な無光害の空(大きいほど暗い空)といわれています。この数値、にわかには信じられないのですが・・・別の個体でも測定してみたいですね^^

モンゴルの「タワン・ホショー・マル(五畜)」

羊と山羊

山羊の群れ。ゲルキャンプの近くで。白一色の羊の群れと違って、黒・茶色・白といろんな色の個体が雑然と混じり合っているのが面白いところ。

モンゴルでは、羊・山羊・ラクダ・馬・牛の5つを「五畜」と呼ぶそうです。ラクダ以外の五畜は、もうどこにでもいます(*)。こんなふうに好き勝手に草を食べています。

(*)ラクダ以外は全部星座になっていますね。太古から人間の生活に密着してきた動物たちです。

ケルンのように詰まれた石の上に羊(山羊?)の頭骨。

 

生きた山羊・羊がふつうに群れをなしているのと同じように、白い骨もところどころに落ちています。ここで生まれ、仔を生み、そして死んでゆく。残されるのは白い骨。モンゴルの平原では、現代社会では隠れてしまう生と死のサイクルが日常生活の中にあります。

羊ほど多くはみかけませんでしたが、馬も普通に放牧され、野を走り回っています。のろのろと歩く他の4畜とは違って、馬が疾走する姿は実にカッコイイ(写真がないのが残念^^;;)。とはいえ、競走馬ではないので、小さな馬もしおれた馬もいます^^

仲良く並んだKさん父娘。

乗馬を体験。10頭ぐらいの馬を遊牧民のおじいちゃんが引率してきたのですが、私たちのレベルを見抜いて?大人しそうな小さな馬を選択^^;;

こちらの馬はその中で一番大きくて元気のいい馬。トブシエさんはさすがに遊牧民出身だけあって、初見で華麗に乗りこなします。「この馬は少し暴れます。みなさんはやめておいたほうがいいですね。」

ラクダ

ラクダはさすがにウロついてはいません。モンゴルの遊牧民にとってラクダは貴重な財産。ラクダを所有することは資産運用の側面もあるくらいだそうです。

ラクダにも乗りました^^ この座った状態のラクダが立ち上がるときと、足を折り曲げて座り込むときはなかなかの迫力。

ラクダのコブの座り心地は最高。前のコブが手すりに、後のコブが背もたれになります。人間が乗るためにできているとしか思えないほど。でも、ラクダにうかつに近づくと、クサイクサイ「つば」をはきかけられることがあるそうなので要注意^^

牛は、羊・山羊よりは少ないものの、やっぱり普通にそこかしらを闊歩しています。ゲルキャンプの近くに、群れから取り残された二頭の牛がいました。

朝になってもゲルのまわりをうろうろ。ゲルで飼われている猫がちょっかいを出しに行きます。

たたかわずして敗北。牛の方が猫より強いようです^^

番外・猫

この猫、まだ子猫なのか、よく遊んでくれます。なかなかかわいいやつです。戸を開けているとゲルの中まで入ってきて、ベッドまで上がってきます。

椅子の上で遊んだり。

ゲルキャンプのネズミは日本のクマネズミやドブネズミとは違う「穴ネズミ」です。画像右のような穴を掘ってその中に住んでいます。

ネズミを捕まえたり。この猫、ネズミ対策にとオーナーが連れてきたそうですが、その役目をしっかり果たしていました。ちなみに今回宿泊したゲルは冬期は寒すぎるので営業されていません。その期間はこの猫はウランバートル暮らしになるそうです。

なんと夜は撮影のお供までしてくれました。足にまとわりついてくるので踏んでしまいそう^^; 撮影中にカメラの三脚にスリスリしてくるのにも閉口(*^^*)

モンゴル「星空」ゲル・キャンプツアーについて

ワイルドナビゲーション・モンゴル「星空」ゲル・キャンプツアー7日間
http://www.wild-navi.co.jp/tour/mongolia_darksky7/

今回参加したツアーは、ワイルドナビゲーション社のスターウォッチングツアー。成田発着7日間、ウランバートルのホテルで2泊、2カ所のゲルキャンプに2泊づつするツアーです。

食事

ゲルキャンプでは、食事は広々とした「食堂ゲル」でいただきます。夜はローソクが灯され、ゆったりとした時間が流れます。基本的に朝昼夜の三食がゲルで提供されます。

左は朝食のバイキング。ハム、チーズ、ベーコン、卵、シリアル、パン、果物、野菜。一般的なホテルのバイキングと何ら変わらない味とボリュームです。もちろんコーヒー・紅茶・ミルクなどの飲み物も。

右は夕食のデザート。夕食は本格的なコース料理。HPの紹介でも「草原の中のゲルにいるとは思えないほど」とありましたが、その言葉に偽りなしでした。

メニューの数々。メインディッシュ・スープ共にバリエーション豊富。ひかえめにいってかなり美味。個人的には特にスープが素晴らしい。「外国人の舌にも合うように、あまり”モンゴルらしく”しないようにしています」とのこと。

夕立の後、空に虹が。右が一番大きな食堂ゲル、左がスタッフの住居ゲル、中が宿泊客用サイズの小さなゲル。太陽電池パネルはもはやゲルの必需品。

ゲルでの生活

昼間は天井の明かり取りのカバーが開かれて光が射し込みます。

筆者が泊まったゲル。中はかなり広くて、ベッドもゆったり。9月上旬とはいえ夜は寒く、ストーブ(写真中央)を入れることもありました。ゲルには電気はもちろん通っていません。夜の灯りはローソクのみですが、これが以外と明るく、またなんともいえぬ温もりを感じる光なのです。

ちなみに、カメラの電池などの充電は、夕食の時間帯に発電機を備えた食堂ゲルで可能でした。充電時間が限られるので、ケーブルやアダプタを電池の数だけ持参して短時間で充電できるように準備しておくのが吉です。

見苦しいものをお見せしてすみません(–;;;;

 

ゲルキャンプにお風呂はありません。毎日夕食後に熱い蒸しタオルが各ゲルに配られ、それで体を拭きます。この蒸しタオル、ホントにホカホカで迫力十分。届いた直後はやけどしそうなほど熱いので要注意^^ かなり気合の入る気持ちよさです。

夜のトイレ。ごく弱い光で照らされているので、暗闇の中でも見失わずにすみます。トイレットペーパーは分解されにくいため、別の「紙くず入れ」に捨てます。日本の山小屋などのトイレと同じです。

ゲルのトイレ。予想に反して?ビックリするほど清潔でした。用を足した後、バケツから「おがくず」をひしゃくですくってドサッとかけるのですが、おがくずの木の香りが消臭剤として働いているようです。

主観ではありますが、ゲルでの生活環境は日本の「ホテルのような山小屋」並み、もしくはそれ以上といえるでしょう。どちらかといえばアウトドアが苦手な人でも、たぶん余裕でクリアできるレベルです。

広がる青空。草原の上に並ぶゲル。スイートゴビのゲルキャンプで。

基本的に皆同じ外観のゲル。ゲルキャンプの弱点は「迷いやすい」こと。「えーっと、自分のゲルはどこだったっけ・・・」入り口には番号を振ってあるのですが、夜はちょっと彷徨ってしまうことも^^;;昼間のうちに配置を頭によく入れておきましょう。

モンゴル観光

1585年に建設されたエルデニ・ゾー寺院。

モンゴルとくれば、世界遺産のオルホン渓谷ハラホリン(カラコルム)を外すわけにはいきません。前半に宿泊したゲルキャンプ「スイートゴビ」から車で1時間半ほど。

これまた写真がないのですが、この寺院にある「曼荼羅画」は一見の価値ありです。今回は行きませんでしたが「亀石」も有名な観光スポットです。星メインで考えていたのであまり観光まで気が回らなかったのですが、次回はもう少し下調べをしてから臨みたいと思います^^

往き、帰りとウランバートルのホテルで各一泊しましたが、基本は寝るだけでした。街並みは車の中から見るだけでしたが、看板にはキリル文字(ロシア語はキリル文字です)と英語が入り交じっていました。ちなみにモンゴルの公用語はモンゴル語。旧ソ連時代にキリル文字による表記が一般化したそうです。

モンゴルツアーそのほか

移動に使用した大型ワゴン車。

今回のツアーは「星空重視」で、ウランバートルからはるか数百キロ離れた場所まで車で移動します(*)。今回は3列シートの大型ワゴン車です。モンゴルでは首都ウランバートル付近では渋滞が多くけっこう大変ですが、少し離れれば交通量は激減します。ひたすら続く平原と丘陵地帯の中のドライブです。

(*)モンゴルは首都ウランバートルに人口の半分が集中しているため、その近郊ではけっこう市街光の影響を受けてしまいます。今回のツアーは人口密度の非常に低い、モンゴルの中西部まで移動するのが大きなウリのひとつです。

ウランバートル郊外のスーパー。たいていのものは揃います。ゲルキャンプ周辺には基本的に「何もない」ので、必要な物資はここで買い出し。とはいえ、三食付きなので実際に買う物はお菓子・酒・タバコなどの嗜好品だけ。

成田空港、MIATモンゴル航空のカウンターで。

今回のツアーではモンゴル航空を利用しました。旅好きには常識ではありますが、航空機に持ち込める荷物には重量制限があります。モンゴル航空の場合は、預け荷物23kgまで1個、機内持込の手荷物が5kg1個とやや少なめ。これを越える場合は超過料金が発生するので注意が必要です(*)。

(*)機体によって異なる可能性があります。出発前に航空会社のHPなどで確認をお願いします。

ちなみにモンゴルと日本の時差は1時間。西オーストラリアと同じです。時差がほとんどないため、往復の移動は所用時間以上に楽です。

強力な「ナビゲーター」陣

天文雑誌「星ナビ」協賛のこのツアー、催行人数にもよりますが、各ツアーには「星空ツアーアドバイザー」が付きます。

実は筆者も、末席ですがその「ナビゲータ」の一人。星ナビ編集人・編集長の川口雅也さんを筆頭に、8名の専門家が名を連ねています。今年のツアーが好評だったとのことで、たぶん2020年度も催行されるはずです。ご指名が多ければ筆者も参加できるかもしれません!よろしくお願いいたします^^

トブシエさんとは帰国後、早速Facebook友だちとなりました。でも難点はモンゴル語をFacebookが翻訳してくれないこと。トブシエさんとモンゴルの人たちの会話は全くフォローできません^^;;;

モンゴル側のコーディネーター、ダークスカイ・モンゴルリア代表のトブシエ(Enkhtuvshin_Batsaikhan)さん。遊牧民出身、観光ガイド歴10年。日本への留学経験もあり日本語堪能。そしてイケメン^^ 世界に誇るモンゴルの星空の美しさを多くの人に体験してもらい、観光資源として最大化するための活動に取り組んでらっしゃいます。ツアー中は大変お世話になりました!

ワイルド・ナビゲーション社について

株式会社ワイルド・ナビゲーション
http://www.wild-navi.co.jp
http://www.wild-navi.co.jp

今回のツアーの催行はワイルド・ナビゲーション社。社名からもわかるように、アラスカやカナダ、ニュージーランドなどをはじめ、世界各地のネイチャー・アドベンチャー系のツアーを多く催行されている会社です。

天文関係のツアーでは、今回のモンゴル「星空」ゲルキャンプツアーや、オーロラ、日食ツアーなどを多数催行。社長の宮田義明さんは1990年以来日食ツアー同行23回の経験を持つ大ベテランです。直近では2019年12月26日のオマーン・マシーラ島金環日食ツアーなどがあります。

遊牧民という生き方

ツアーの予定にはなかったのですが、トブシエさんが「数日前に知り合った」という遊牧民の方のゲルにおじゃまする機会がありました。ゲルに着いたとき、なんと山羊をさばく真っ最中。

小綺麗に整理された住居の中。「遊牧」というと日々ゲルを持って移動するのかと思っていましたが、実際には季節(冬季と夏季)によって場所を変える「移牧」のような形が多いそうです。

遊牧民にもIT化が進んでいます。BSアンテナが設置され、スマホもほとんどの人が所有していて、Facebookで繫がっているそうです。「ウチの羊が迷子になったんだど、近くで見なかった?」のような情報もFacebookでやりとりされるとか。

遮るものがない平原のせいか、スマホの電波は意外にも届きます。ただし、国際ローミングで繋いでしまうとけっこう費用がかかるので、ヘビーユーザーはモバイルルーター等を空港でレンタルしておくのが吉。

馬から搾乳中。牛と同様、毎日しぼってあげなくてはなりません。

絞った乳はさまざまに加工されます。左は「馬乳酒」を蒸留した透明なお酒。ちょっと酸味があってクセが強いのですが、これを毎日飲んでいたら2週間ですっかり慣れて病みつきになると見ました^^ 右はチーズのようなもの。これぞモンゴル、的な野性味あふれる味です。

馬乳酒を発酵させる桶。半透明の馬乳酒はさらにクセが強く、こちらもこれぞモンゴル。食文化の多様性を感じる味です。

このバイクで家畜の群れを追います。ひらりと乗り込んで斜面を疾走する姿がめっちゃカッコイイのですが、こちらも画像がなくて残念(*)。

(*)想像を超える風景に出会うとつい写真を撮るのを忘れてしまいます。まだまだ修業不足^^;;

真似して、トブシエさんに後に載せてもらって疾走。「借り物バイクで走り出す♪」感にワクワク。

帰りに訪れた時は、解体中だった山羊は毛皮になっていました。動物のすべてを無駄にしない暮らし。

まとめ

ゲルの扉から見える星空。ゲルの扉は南向きなのですが、9月ごろではこの方角にあまりぱっとした星空が望めなかったのが残念。α7S 8mm円周魚眼 F4 30秒

いかがでしたか?

モンゴルの星空。モンゴルのゲル。モンゴルの大地。モンゴルの五畜。モンゴルの遊牧民。そのどれもが印象的で、強く記憶に残るものばかりでした。「星旅」の醍醐味、ここにあり。日本とはまったく違う時間と風、そして天の川が流れるモンゴル。2020年、あなたもモンゴルを体験してみませんか?

天リフ編集長
天リフ編集長
天文リフレクションズがお送りした星空の定期便、
「星旅リフレクションズ」
星空紀行の
お供をいたしましたナビゲーターは
わたくし、天リフ編集長でした。

ジェット ストリーム!!

お遊びで上の画像を加工してみました。画像はハメコミ合成です^^;;実際にはこの角度・方角には天の川は見えませんが、7月・8月なら、ゲルの中から夏の天の川が望めるかもしれません。

  • 特に注記のない画像は編集部で撮影したものです。
  • 文中の社名・製品名は各社の登録商標ないしは商標です。