ブログ「痛い目みてなんぼ」に今年の大接近の火星を広角カメラレンズで追い続けた画像がアップされています。

痛い目みてなんぼ・火星大接近2018
http://www.itaime.com/itaime/2018/10/2018-4a43.html
http://www.itaime.com/itaime/2018/10/2018-4a43.html

撮影データ以外にテキストのない記事ですが、データと撮影システムの画像をじっくり見ると、実は凄いことが行われていたことがわかってきます。ぜひ元記事を開いてじっくり味わってください^^

CGでは描けないチャレンジ

この画像は、デジカメEOS60Dに24mmレンズを装着し、GP2赤道儀に搭載してひたすら火星を撮り続け、それらを比較明合成したもの。4月10日から10月27日までの21コマが使用されています(*)。天候の関係で完全な等間隔にはできなかったものと推測しますが、ほぼ10日毎の動きがとらえられています。



(*)今年の1月から撮影されていて、現在も継続中だそうです。

ソフトフィルターを使用しているため、大接近で逆行を始めた火星の光度がみるみる上昇し、そして順行に戻ってから急速に暗くなっていく有様が一目瞭然。誰にでも「やれば撮れる」手法ではありますが、「やらなきゃ撮れない」「やれるものならやってみなさい」的なリザルトです。

火星の動きも光度変化も、プラネタリウムアプリを使えば簡単に描くことができますが、そうではなくこのような形で実写画像で実現されたことに、控えめにいって驚愕しました。

Marugame All Weather Observatoryとは

この作品がどのようにして撮られたのか。元記事中に撮影システムの画像が3点掲載されています。「Marugame All Wether Observatory」、丸亀全天候観測所。うどん県の畑の片隅に無造作に杭に留められた三脚、防水プラケースを改造したカメラハウジング、防水シートをかぶせた赤道儀、電源・コントローラと乾燥空気送出システムが収納された白いプラケース。

頭ではわかります。ここで何が起きていたのか。雨の日も風の日もカメラは稼働しGP2は恒星時追尾を続けていたのだろう。そして数々の疑問が湧いてきます。「あの問題はどう解決したのだろう?」「こうしたらああなるはずだけど、それ大丈夫だったの?」それらが全部解決したからこそこの作品があるのでしょう。



個人的興味ですが、湧いた疑問を列挙しておきます。

  • ブログ主様は東京在住。つまりほぼ完全な遠隔状態で運用し続けたことになる。その間メンテは不要だったのだろうか?
  • 60Dは64GBのカードで約2400枚撮像可能。晴れ間を縫うためにはなるべく多くのコマを撮りたいが撮りすぎるとカード交換が必要。1日何コマ撮ったのだろう?晴天率はどのくらいなのだろう?
  • 赤道儀を連続運転するとケーブルがよじれるはず。開始・終了・元の位置に戻すの制御はどうやったのだろう。
  • このシステムは遠隔操作可能なのだろうか?
  • 雨ざらし前提のシステムに見えるが、フードに水が溜まったらどうするのだろう?
  • 台風で飛ばされはしなかったのか?
  • 乾燥空気はどこに送り込むのだろう。写真ではレンズ付近に噴射口は見えない。
  • シリカゲルの交換頻度は?

ちなみに、同ブログには前々回(2014年)の火星接近の際にも、連続撮影の記事が投稿されています。

痛い目みてなんぼ・火星の衝
http://www.itaime.com/itaime/2014/07/post-36f2.html

2014年3月下旬から7月下旬まで、ベランダの軒下にカメラを据え付け、タイマーレリーズで恒星時(23時間56分4秒)ごとに撮影した。晴れた夜の画像の背景の明るさなどを調整して比較明合成。

この際は、カメラを赤道儀に載せるのではなく(たぶん三脚に)固定し、恒星時一日分のインターバルで毎日撮影されたようです。火星の動きが等間隔になっていないのは、1日1回しか撮影できないため晴れた日が少なかったせいでしょう。このリベンジとして今回の赤道儀使用の全天候システムがあるのではないかと推測しました。

東山正宣さんについて

ご紹介した記事を書かれた東山正宣さんは、古くからの天文ファンであり比較明ソフト「キクチマジック」の作者関係者(*)でもあります。現在は某大手新聞社の科学医療部に所属されています。

(*)訂正:「関係者ではあるが作者ではない」とのご指摘をいただきました。Ken Kikuchi さんのブログには「まさのぶさんが開発」との記述がありますが、「東山正宣さんはキクチマジックの作者」という表現は正しくないものと考えられます。訂正しお詫びいたします。

以下にTwitterのアカウントを貼っておきました。天文ファンならフォロー必須のアカウントです。

  https://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/10/cd69edc942db55aadb2da6a884c4d868.jpghttps://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2018/10/cd69edc942db55aadb2da6a884c4d868-150x150.jpg編集部天体写真ブログ「痛い目みてなんぼ」に今年の大接近の火星を広角カメラレンズで追い続けた画像がアップされています。 痛い目みてなんぼ・火星大接近2018 http://www.itaime.com/itaime/2018/10/2018-4a43.html 撮影データ以外にテキストのない記事ですが、データと撮影システムの画像をじっくり見ると、実は凄いことが行われていたことがわかってきます。ぜひ元記事を開いてじっくり味わってください^^ CGでは描けないチャレンジ この画像は、デジカメEOS60Dに24mmレンズを装着し、GP2赤道儀に搭載してひたすら火星を撮り続け、それらを比較明合成したもの。4月10日から10月27日までの21コマが使用されています(*)。天候の関係で完全な等間隔にはできなかったものと推測しますが、ほぼ10日毎の動きがとらえられています。 (*)今年の1月から撮影されていて、現在も継続中だそうです。 ソフトフィルターを使用しているため、大接近で逆行を始めた火星の光度がみるみる上昇し、そして順行に戻ってから急速に暗くなっていく有様が一目瞭然。誰にでも「やれば撮れる」手法ではありますが、「やらなきゃ撮れない」「やれるものならやってみなさい」的なリザルトです。 火星の動きも光度変化も、プラネタリウムアプリを使えば簡単に描くことができますが、そうではなくこのような形で実写画像で実現されたことに、控えめにいって驚愕しました。 Marugame All Weather Observatoryとは この作品がどのようにして撮られたのか。元記事中に撮影システムの画像が3点掲載されています。「Marugame All Wether Observatory」、丸亀全天候観測所。うどん県の畑の片隅に無造作に杭に留められた三脚、防水プラケースを改造したカメラハウジング、防水シートをかぶせた赤道儀、電源・コントローラと乾燥空気送出システムが収納された白いプラケース。 頭ではわかります。ここで何が起きていたのか。雨の日も風の日もカメラは稼働しGP2は恒星時追尾を続けていたのだろう。そして数々の疑問が湧いてきます。「あの問題はどう解決したのだろう?」「こうしたらああなるはずだけど、それ大丈夫だったの?」それらが全部解決したからこそこの作品があるのでしょう。 個人的興味ですが、湧いた疑問を列挙しておきます。 ブログ主様は東京在住。つまりほぼ完全な遠隔状態で運用し続けたことになる。その間メンテは不要だったのだろうか? 60Dは64GBのカードで約2400枚撮像可能。晴れ間を縫うためにはなるべく多くのコマを撮りたいが撮りすぎるとカード交換が必要。1日何コマ撮ったのだろう?晴天率はどのくらいなのだろう? 赤道儀を連続運転するとケーブルがよじれるはず。開始・終了・元の位置に戻すの制御はどうやったのだろう。 このシステムは遠隔操作可能なのだろうか? 雨ざらし前提のシステムに見えるが、フードに水が溜まったらどうするのだろう? 台風で飛ばされはしなかったのか? 乾燥空気はどこに送り込むのだろう。写真ではレンズ付近に噴射口は見えない。 シリカゲルの交換頻度は? ちなみに、同ブログには前々回(2014年)の火星接近の際にも、連続撮影の記事が投稿されています。 痛い目みてなんぼ・火星の衝 http://www.itaime.com/itaime/2014/07/post-36f2.html 2014年3月下旬から7月下旬まで、ベランダの軒下にカメラを据え付け、タイマーレリーズで恒星時(23時間56分4秒)ごとに撮影した。晴れた夜の画像の背景の明るさなどを調整して比較明合成。 この際は、カメラを赤道儀に載せるのではなく(たぶん三脚に)固定し、恒星時一日分のインターバルで毎日撮影されたようです。火星の動きが等間隔になっていないのは、1日1回しか撮影できないため晴れた日が少なかったせいでしょう。このリベンジとして今回の赤道儀使用の全天候システムがあるのではないかと推測しました。 東山正宣さんについて ご紹介した記事を書かれた東山正宣さんは、古くからの天文ファンであり比較明ソフト「キクチマジック」の作者関係者(*)でもあります。現在は某大手新聞社の科学医療部に所属されています。 (*)訂正:「関係者ではあるが作者ではない」とのご指摘をいただきました。Ken Kikuchi さんのブログには「まさのぶさんが開発」との記述がありますが、「東山正宣さんはキクチマジックの作者」という表現は正しくないものと考えられます。訂正しお詫びいたします。 以下にTwitterのアカウントを貼っておきました。天文ファンならフォロー必須のアカウントです。 https://twitter.com/itaimecom  編集部発信のオリジナルコンテンツ