この記事の概要反射望遠鏡は光軸合わせが命。シュミカセの場合、「アウトフォーカス像(焦点内外像)」で合わせるのが一般的ですが、ピント合わせで使用されている「バーティノフマスク」の原理を応用し、光軸合わせとピント合わせが同時に可能となる「トライバーティノフマスク」がC.Y.Tan氏により考案・提唱されています。
この記事では、そのしくみとメリット、作成方法についてご紹介します。

トライバーティノフマスクとはどんなもの?

こんな外観をしています。


画像提供:Satoru Takagi様

トライバーティノフマスクは、120°ずつ方向のずれた3つのバーティノフマスクを組み合わせた形状をしています。

中心はシュミカセの副鏡支持部の大きさに合わせた穴がくりぬかれ、副鏡の3つの調整ネジとマスクの光条がピッタリ合う位置にセットします。

光軸がずれた状態、合った状態

光軸が合った状態(理論値)


出典:https://github.com/cytan299/tribahtinov

マスクパターン(左)と、光軸が合った状態の回折像(右)。
通常のバーティノフマスクは光条は1方向3本ですが、トライバーティノフマスクは3方向、各3本。

一方向だけ光軸がずれた状態(実写)

出典:https://github.com/cytan299/tribahtinov

光軸がずれた状態での、アウトフォーカス像(左)とトライバーティノフマスク像(右)。
3つの光条のうち、矢印で示された光条がずれていることがわかります。この方向に対応する調整ネジを回すと・・

光軸が合った状態(実写)

出典:https://github.com/cytan299/tribahtinov

3つの光条が揃い、光軸合わせ終了。
実際には、光軸がずれている場合は3つの光条がそれぞれにずれているのですが、3つの光条と対応するネジをそれぞれ調整すればOK。

トライバーティノフマスクの3つのメリット

ずれ具合が客観的に評価できる

ピント合わせの際のバーティノフマスクのメリット同様に、「どのくらい追い込めたか」を客観的に見ることができます。

「ピントエイド」のような画像処理ツールを開発すれば、光軸のずれ具合を数値化して見ることも可能でしょう。

どのネジを回せばいいのかがわかりやすい

アウトフォーカス像で合わせる場合、同心円のずれ方向と調整すべきネジの対応を目分量で判断するしかありません。

一方、トライバーティノフマスクの場合は、ネジと光条が明確に対応しているため、それぞれの光条に対応したネジを、独立して調整すれば基本的にOK。より追い込みやすいといえましょう。

ピント合わせを同時に追い込める

仕組みはバーティノフマスクですから、同時にピント合わせが可能。これ1つあれば、ピント合わせ用のバーティノフマスクは不要になります。

トライバーティノフマスクの入手方法

現状は自作するしかありませんが、パターンは簡単に生成できます。

残念ながら、トライバーティノフマスクは現状どこからも販売されておらず、自作する必要があります

ただし、日本のSatoru Takagiさんの手によってC.Y.Tan氏の実装を移植された、Webブラウザで簡単にマスクパターンを生成する画面が公開されています。(下記リンク参照)

Takagiさんの場合は厚紙にパターンを印刷して貼付け、超音波カッターで切り出されたそうです。他には、アクリル板・アルミ板・MDF(中質繊維板)などでの工作例があるようです。

マスク図面生成画面ツールの出力例
画像キャプチャ:編集部

Satoru Takagiさんによる、マスクの図面がウェブブラウザで作れるページ。
http://svg2.mbsrv.net/astro/Tri-Bahtinov.html

今後製品として生産される可能性は?

パターンを用意し素材をカッティングするという意味ではバーティノフマスクと同じ。

実運用による評価と需要次第では、パーツメーカやショップで製品化される可能性は充分にありそうです。


本稿の作成にあたっては、Satoru Takagi様および「星見屋」様にご協力いただきました。厚く御礼申し上げます。

また、本稿に対するお問い合わせは、天文リフレクションズ編集部までお願いいたします。

問い合わせフォーム

 

追記6/21 12:58)
星見屋様のFacebookページでご紹介いただきました。


参考資料
発案者C.Y.Tan氏のリポジトリ(GitHub)
https://github.com/cytan299/tribahtinov

本記事の画像はこちらを参照しています。原理からマスクパターンの生成プログラムまでが公開されています。オープンソース(GPL3)、ライセンスフリーです。

cloudynightsのスレッド
https://www.cloudynights.com/topic/536410-a-tri-bahtinov-mask-for-sct-collimation-and-focusing/

発案者C.Y.Tan氏の立てた、トライバーティノフマスクに関するスレッド。様々な議論が行われています。

Google検索・ダンカンマスク

トライバーティノフマスクと同様のコンセプトですが、遮蔽面積が大きくより明るい星が必要なこと、ピント合わせには使用できないことなど、トライバーティノフマスクがより優位であるとの印象を持ちました。

GoldFocus Plus Collimation System
http://www.goldastro.com/goldfocus/collimation_techniques.php

トライバーティノフマスクよりも以前に製品化されている、同様の原理を用いた製品。マスクの遮光面積が大きいため、より明るい星で合わせる必要がありますが、光軸の合い具合を評価するソフトが付属しています。

 

 

http://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2017/06/01.jpghttp://reflexions.jp/tenref/orig/wp-content/uploads/sites/4/2017/06/01-150x150.jpg 天文機材  この記事の概要反射望遠鏡は光軸合わせが命。シュミカセの場合、「アウトフォーカス像(焦点内外像)」で合わせるのが一般的ですが、ピント合わせで使用されている「バーティノフマスク」の原理を応用し、光軸合わせとピント合わせが同時に可能となる「トライバーティノフマスク」がC.Y.Tan氏により考案・提唱されています。 この記事では、そのしくみとメリット、作成方法についてご紹介します。 トライバーティノフマスクとはどんなもの? こんな外観をしています。 画像提供:Satoru Takagi様 トライバーティノフマスクは、120°ずつ方向のずれた3つのバーティノフマスクを組み合わせた形状をしています。 中心はシュミカセの副鏡支持部の大きさに合わせた穴がくりぬかれ、副鏡の3つの調整ネジとマスクの光条がピッタリ合う位置にセットします。 光軸がずれた状態、合った状態 光軸が合った状態(理論値) 出典:https://github.com/cytan299/tribahtinov マスクパターン(左)と、光軸が合った状態の回折像(右)。 通常のバーティノフマスクは光条は1方向3本ですが、トライバーティノフマスクは3方向、各3本。 一方向だけ光軸がずれた状態(実写) 出典:https://github.com/cytan299/tribahtinov 光軸がずれた状態での、アウトフォーカス像(左)とトライバーティノフマスク像(右)。 3つの光条のうち、矢印で示された光条がずれていることがわかります。この方向に対応する調整ネジを回すと・・ 光軸が合った状態(実写) 出典:https://github.com/cytan299/tribahtinov 3つの光条が揃い、光軸合わせ終了。 実際には、光軸がずれている場合は3つの光条がそれぞれにずれているのですが、3つの光条と対応するネジをそれぞれ調整すればOK。 トライバーティノフマスクの3つのメリット ずれ具合が客観的に評価できる ピント合わせの際のバーティノフマスクのメリット同様に、「どのくらい追い込めたか」を客観的に見ることができます。 「ピントエイド」のような画像処理ツールを開発すれば、光軸のずれ具合を数値化して見ることも可能でしょう。 どのネジを回せばいいのかがわかりやすい アウトフォーカス像で合わせる場合、同心円のずれ方向と調整すべきネジの対応を目分量で判断するしかありません。 一方、トライバーティノフマスクの場合は、ネジと光条が明確に対応しているため、それぞれの光条に対応したネジを、独立して調整すれば基本的にOK。より追い込みやすいといえましょう。 ピント合わせを同時に追い込める 仕組みはバーティノフマスクですから、同時にピント合わせが可能。これ1つあれば、ピント合わせ用のバーティノフマスクは不要になります。 トライバーティノフマスクの入手方法 現状は自作するしかありませんが、パターンは簡単に生成できます。 残念ながら、トライバーティノフマスクは現状どこからも販売されておらず、自作する必要があります。 ただし、日本のSatoru Takagiさんの手によってC.Y.Tan氏の実装を移植された、Webブラウザで簡単にマスクパターンを生成する画面が公開されています。(下記リンク参照) Takagiさんの場合は厚紙にパターンを印刷して貼付け、超音波カッターで切り出されたそうです。他には、アクリル板・アルミ板・MDF(中質繊維板)などでの工作例があるようです。 マスク図面生成画面ツールの出力例 画像キャプチャ:編集部 Satoru Takagiさんによる、マスクの図面がウェブブラウザで作れるページ。 http://svg2.mbsrv.net/astro/Tri-Bahtinov.html 今後製品として生産される可能性は? パターンを用意し素材をカッティングするという意味ではバーティノフマスクと同じ。 実運用による評価と需要次第では、パーツメーカやショップで製品化される可能性は充分にありそうです。 本稿の作成にあたっては、Satoru Takagi様および「星見屋」様にご協力いただきました。厚く御礼申し上げます。 また、本稿に対するお問い合わせは、天文リフレクションズ編集部までお願いいたします。 問い合わせフォーム   追記6/21 12:58) 星見屋様のFacebookページでご紹介いただきました。 参考資料 発案者C.Y.Tan氏のリポジトリ(GitHub) https://github.com/cytan299/tribahtinov 本記事の画像はこちらを参照しています。原理からマスクパターンの生成プログラムまでが公開されています。オープンソース(GPL3)、ライセンスフリーです。 cloudynightsのスレッド https://www.cloudynights.com/topic/536410-a-tri-bahtinov-mask-for-sct-collimation-and-focusing/ 発案者C.Y.Tan氏の立てた、トライバーティノフマスクに関するスレッド。様々な議論が行われています。 Google検索・ダンカンマスク トライバーティノフマスクと同様のコンセプトですが、遮蔽面積が大きくより明るい星が必要なこと、ピント合わせには使用できないことなど、トライバーティノフマスクがより優位であるとの印象を持ちました。 GoldFocus Plus Collimation System http://www.goldastro.com/goldfocus/collimation_techniques.php トライバーティノフマスクよりも以前に製品化されている、同様の原理を用いた製品。マスクの遮光面積が大きいため、より明るい星で合わせる必要がありますが、光軸の合い具合を評価するソフトが付属しています。    編集部発信のオリジナルコンテンツ